神経障害性疼痛疼痛を科学する20~帯状疱疹後神経痛(PHN)とは?診断・治療・在宅でのケアについて
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帯状疱疹後神経痛(PHN)とは?診断・治療・在宅でのケアについて

帯状疱疹後神経痛は、末梢性神経障害性疼痛の代表的なモデルです。一般的な非ステロイド性鎮痛薬(NSAIDs)では痛みの軽減が得られにくい一方、抗うつ薬・抗てんかん薬・麻薬などの薬剤が疼痛を軽減する効果があることが明らかにされています。
担当医師は患者さんの全身状態を評価しながら、これらの薬剤の効果・副作用・使用上の留意点を考慮して適切に使用することで、疼痛を安全かつ早期に緩和することが可能です。
定義・疫学
定義
帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹罹患後に遷延する疼痛です。国際疼痛学会(IASP)は、帯状疱疹後の皮膚分節の変化を伴った疼痛と定義しています。発症からの時期については明確な規定はありませんが、1ヵ月・3ヵ月・6ヵ月以上などとする定義が研究者の間で用いられています。
発症率
帯状疱疹後神経痛の発生率
帯状疱疹罹患後の経過に伴い:
・ 3ヵ月後:7〜25%
・ 6ヵ月後:5〜13%
帯状疱疹からPHNへの移行リスク因子
50歳以上の患者
帯状疱疹初期の強い痛み
重症な皮疹
痛みの特徴的な性質
PHNの痛みは非常に多彩で、個々の患者さんで混在し、経時的に変化することが特徴です。

90%以上の患者さんに、触れた刺激を痛みとして感じてしまう「アロディニア」が認められます。
診断チェック項目
項目 | 分類 | 確認 |
帯状疱疹の既往 | 必須 | あり / なし |
痛みの残存 | 必須 | あり / なし |
知覚障害 | 必須 | あり / なし |
アロディニア | 準必須 | あり / なし |
NSAIDsの効果なし | 準必須 | あり / なし |
特徴的な痛みの性質 | 準必須 | あり / なし |
罹患後3ヵ月以上 | 準必須 | あり / なし |
必須項目を認めた場合は、PHNの疼痛治療を積極的に開始する必要があります。
治療
治療効果の評価項目


PHNの治療の中心となるのは、以下の3種類の経口薬です:①三環系抗うつ薬、②抗てんかん薬(Caチャネルα₂-δリガンド)、③麻薬。
① 抗うつ薬

最も多く用いられてきた三環系抗うつ薬。PHNに対するNNT(治療必要数)は2.8と報告されており、有効性が高い薬剤です。
ノルトリプチリン
アミトリプチリンに比べて鎮静作用・抗コリン作用・降圧作用が弱く、高齢者に対して好んで用いられます。
② 抗てんかん薬(Caチャネルα₂-δリガンド)
ガバペンチン
PHNに対する臨床試験のNNTは4.6と報告されています。主な副作用は眠気・めまい・末梢浮腫で、高齢者では平衡障害・認知障害に注意が必要です。
プレガバリン(Pregabalin)
ガバペンチンの類似体。帯状疱疹後神経痛や末梢性神経障害性神経痛に対して三つの二重盲検比較試験で有効性が確認されており、NNTは4.9です。薬物相互作用を起こしにくく、多くの薬を服用している高齢者に有用性が高いとされています。
③ 麻薬
神経障害性疼痛への有効性は示されていますが、副作用は約80%の患者さんに生じ(便秘・嘔気・傾眠)、依存・乱用のリスクにも注意が必要です。第二選択薬として位置づけられています。
④ 麻酔薬(Lidocaine Patch)
局所アロディニアに有効。内服薬に比べて副作用が少なく(皮膚の発赤のみ)、第一選択薬の一つとなりえます。疼痛部位に最長12時間貼付し、効果発現まで通常2週間以内。
⑤ その他の薬
ノイロトロピン:日本で帯状疱疹後神経痛に対する保険適応となっている唯一の薬物。鎮痛効果は弱いが、臨床上問題となる副作用がないという特徴を有します。
主な薬物の処方実際
薬剤 | 開始量 | 1日最大量 | 評価期間 | 特記事項 |
アミトリプチリン | 10mg 就寝前 | 150mg | 6〜8週 | 高NNT効果、心疾患禁忌 |
ノルトリプチリン | 10〜25mg 就寝前 | 150mg | 6〜8週 | 高齢者向き |
ガバペンチン | 100〜300mg 就寝前 | 3,600mg | 3〜8週 | 腎機能低下注意 |
プレガバリン | 50mg×3回/日 | 600mg | 4週 | 薬物相互作用少 |
Lidocaine patch | 1日3枚 | 1日3枚 | 3週 | 全身副作用なし |
モルヒネ | 5〜15mg×6回/日 | 120mg/日まで自己管理 | 4〜6週 | 依存リスク注意 |
治療のアルゴリズム
現時点では三環系抗うつ薬またはガバペンチン・プレガバリンが第一選択薬となります(グレードA)。局所アロディニアにはLidocaine patchも第一選択薬の一つとなります。

PHNの疼痛機序は単一ではなく、複数の機序の関与が考えられています。モルヒネとガバペンチンの併用は、それぞれ単独の処方時よりも少ない副作用でより疼痛の改善が得られることが明らかにされています。
神経ブロック療法
帯状疱疹の痛みに対する硬膜外ブロック(局所麻酔薬とステロイド)の有効性は明らかにされています。また、帯状疱疹発症後2ヵ月以内の硬膜外ブロックが1年後のPHN発症率を少なくすることも報告されています。薬物療法に抵抗を示す患者さんで、神経ブロックによる疼痛の軽減により日常生活が改善する可能性がある場合は積極的に施行する意義があります(グレードA)。
帯状疱疹から帯状疱疹後神経痛への移行予防
ワクチン
✅ 予防に最も有効:ワクチン接種
帯状疱疹における急性期のワクチンの使用は、帯状疱疹後神経痛への移行を少なくすることが明らかにされています。
急性期の適切な鎮痛管理
帯状疱疹の急性期に適切な鎮痛を行うことが、PHNへの移行予防に重要です。アミトリプチリン25mg投与群では、対照群に比べて6ヵ月後の疼痛有病率が有意に低かったという報告もあります。
硬膜外ブロック
帯状疱疹の急性期における硬膜外腔への局所麻酔薬とステロイドの投与が、PHNの発生頻度を減らすことができるか否かについては現時点で明らかにされていませんが、予防可能であることを示唆した報告もあります。
在宅医療でのPHN管理について
帯状疱疹後神経痛の疼痛軽減を少ない副作用で行うためには、アルゴリズムに基づいた薬物療法を実践することが推奨されます。これらに抵抗を示す場合は、ペインクリニック専門医への紹介が必要です。






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