神経障害性疼痛疼痛を科学する13~薬物療法その他(漢方薬など)
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漢方薬
Traditional Kampo Medicine — 患者の「証」に基づく複合的治療
はじめに・考え方
神経障害性疼痛は難治性であることが多く、有痛期間が長期化・慢性化することで冷えや不安など種々の症状を合併し、痛みの増悪という悪循環を起こしている。随伴症状に効果のある薬剤を投与することは、痛みの悪循環を断ち、症状全体を改善しうる。
漢方療法は疾患と1対1対応をしているわけではなく、あくまで患者の証(=体質や症状)に基づいて対応して処方されるものである。
漢方薬選択の2ポイント:虚実と寒熱
項目 | 実(充実した体力) | 虚(減退した体力) |
体力 | 充実 | 減退 |
皮膚の色 | つやがあり、張りがある | つやがない |
腹力 | 強い | 弱い |
声 | 張りがある | 張りがない |
その他 | 皮疹の発赤、疼痛、浮腫、疼痛部の筋肉が硬い | 倦怠意感、気力がない、寝汗をかく |
項目 | 寒(冷えで悪化) | 熱(温めると悪化) |
顔色 | 蒼白 | 紅潮 |
四肢 | 冷感、レイノー現象 | 充血、熱感 |
筋肉 | 攣縮 | 拍動性、灼熱感 |
消化管 | 下痢 | しぶり腹 |
脈 | 徐脈 | 頻脈 |
その他 | 温かい湯茶を好む | 冷たいものを好む |
気血水(漢方の概念)

いずれもエキス製剤の場合、1日7.5gを2〜3回に分け、食間または食前服用とする。





①消化器症状:地黄・麻黄・大黄を含むものは胃もたれや下痢に注意(特に地黄→胃弱患者に注意)。②偽性アルドステロン症:甘草は漢方製剤の約7割に含まれる。体重増加や体液の貯留の有無をチェックし、定期的に血圧測定・血液検査を行うことが望ましい。③実証と虚証の製剤は併用しない。同じような作用をもつ製剤は併用しない。
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神経障害性疼痛は冷えが痛みを増悪させていることが多く、温める漢方薬は重要な治療手段の一つとなりうる。漢方薬は難しい・取っ付き難いと敬遠することなく、まずは処方してみること。その後の患者の症状変化に応じ、処方を変更していくとよい。
ステロイド
Glucocorticoid — 強力な抗炎症・浮腫改善効果(グレードB)
作用機序・薬理作用
グルコルチコイドは副腎皮質より分泌される生体内ステロイドであり、糖質・脂質・蛋白質の代謝および抗炎症作用・免疫抑制作用をもつ。
作用機序:①ホスホリパーゼA₂の活性阻害蛋白を誘導しアラキドン酸の遊離を抑制、②COX-2の生成を抑制し分解を促進、③インターロイキンやTNFなどの炎症性サイトカインの生成を抑制、④AP-1・NF-κBおよびそれらの関連蛋白の活性を抑制。
各種ステロイド内服薬の力価と半減期
薬剤名 | 含有量(mg) | 抗炎症力価 | ミネラルコルチコイド作用 | 血中半減期(h) | 生物活性半減期(h) | 分類 |
ヒドロコルチゾン | 10 | 1 | ++ | 1.5 | 8〜12 | 短時間型 |
コルチゾン | 25 | 0.8 | ++ | 1.5 | 8〜12 | 短時間型 |
プレドニゾロン | 5 | 4 | + | 3〜4 | 12〜36 | 中間型 |
メチルプレドニゾロン | 2.4 | 5 | − | 3〜4 | 12〜36 | 中間型 |
トリアムシノロン | 4 | 5 | − | 5〜6 | 12〜36 | 中間型 |
デキサメタゾン | 0.5 | 30 | − | 5〜6 | 36〜54 | 長時間型 |
ベタメタゾン | 0.5 | 25〜30 | − | 5〜6 | 36〜54 | 長時間型 |
パラメタゾン | 2 | 10 | − | 5〜6 | 36〜54 | 長時間型 |
使用法(神経障害性疼痛への使用タイミング)
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神経障害性疼痛に対しての使用はタイミングが重要である。強い浮腫・皮膚の発赤など、疼痛出現早期の炎症反応が強く認められる時期の使用が好ましい(グレードB)。慢性期での投与については効果がほとんどないか、あっても一時的であることが多い。
経口:第一選択はプレドニゾロンまたはメチルプレドニゾロン。例としてプレドニゾロン1日20〜30mgを3〜4回に分けて服用し、1週間ごとに10mgずつ漸減していく方法がある。局所投与では関節内・硬膜外への注射剤が用いられる(デキサメタゾン硬膜外投与2〜4mg、関節内投与0.8〜2mgなど)。
副作用と使用上の留意点


炎症所見の強い症例にのみ使用する
2
できるだけ局所への使用にとどめ、全身投与は避ける
3
長期にわたる継続使用はしない
4
急激に減量しない(ステロイド離脱症候群をきたすことがある)
5
基礎疾患を有する場合(何らかの免疫低下、糖尿病、胃腸障害など)は慎重投与とし、感染徴候のある患者には使用しない
中枢性筋弛緩薬
Central Muscle Relaxants — 筋緊張・脊髄シナプス反射の抑制
1. バクロフェン
Baclofen — GABAᴮ受容体作動薬
抑制性受容体であるGABAᴮ受容体作動薬であり、神経障害性疼痛において抗てんかん薬の効果を高める可能性がある。神経筋接合部や筋紡錘に影響を及ぼさない用量で、脊髄シナプス反射を抑制し鎮痛作用をもたらすとされる。筋緊張を伴う疼痛に効果が期待できる。外傷後の後遺症として疼痛を認める場合などによい適応である。

骨格筋の筋緊張状態を改善するとされる。血管拡張作用・血流増加作用があり、脊髄での鎮痛作用、疼痛反射抑制作用をもつとされる。
3. チザニジン
中枢性のアドレナリンα₂受容体作動性をもち、筋緊張緩和作用、脊髄反射抑制作用をもつ。
4. クロルフェネシンカルバミン酸エステル
脊髄運動ニューロンの興奮性を低下させるとされ、骨格筋の有痛性けいれんに有効である。
クロニジン
Clonidine — α₂アドレナリン受容体作動薬
薬理作用
クロニジンはα₂アドレナリン受容体作動薬である。α₂アドレナリン受容体はノルアドレナリン作動性神経において、抑制性の自己受容体として働いているとされ、交感神経系の活動を抑制する働きをもつ。また中枢神経系にも作用し、ノルアドレナリン作動系神経の発火を抑制するため血管拡張作用を有する。
機序として、細胞膜上のK・Ca・NaなどのイオンチャネルへW作用による細胞膜の過分極や、アセチルコリン作動性受容体の活性化による一酸化窒素合成、アデニル酸シクラーゼの抑制によるcAMP合成抑制など、さまざまである。
臨床エビデンス
クロニジンの硬膜外投与やくも膜下投与による鎮痛効果や、ケタミンやガバペンチンとの併用による相乗効果などが報告されている。また術後鎮痛での検討であるが、クロニジン併用によりモルヒネなどのオピオイド消費量が軽減したという報告もある。
使用法・副作用・留意点

PGE₁・PGI₂製剤 — 血流改善+中枢神経系への直接作用の可能性
作用機序・薬理作用
プロスタグランジン(PG)はアラキドン酸代謝により生合成される生理活性物質。なかでも痛みに関連するとされるのはPGE₂であり、侵害受容器の閾値を低下させ痛覚過敏を起こす。
神経障害性疼痛下では交感神経系が活発化し血流が低下していることが多く、血流改善作用をもつPGE₁・PGI₂製剤が痛みの悪循環を断ち、疼痛を改善する働きを有する。帯状疱疹後神経痛患者に対するPGE₁製剤の有用性を示した臨床研究もある。
その他の薬理作用:血小板凝集抑制作用による血液粘度の低下・細胞保護作用。作用機序としては、カプサイシン受容体の一つであるTRPV1受容体の過敏化を抑制するというマウスでの報告があり、中枢神経系にも直接作用している可能性がある。
PGE₁製剤の使用法

PGE₁・PGI₂両製剤とも強力な血管拡張作用を有するため、血圧低下・めまい・動悸などの副作用がある。PGE₁製剤は血管痛を起こしやすく、注射剤の漏れによる血管炎には注意が必要である。PGI₂製剤は、血管拡張に伴う顔面紅潮や、抗血小板作用に伴う出血傾向の助長が起こりうるため、抗凝固療法中の患者では注意が必要である。PGI₂製剤は半減期が短く、内服薬での持続効果は期待できない可能性が高い。またPGE₁製剤はNSAIDsとの併用で効果が減弱するので避けるべきである。





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