攻めの栄養療法を科学する36~栄養投与量の考え方
- 賢一 内田
- 3 日前
- 読了時間: 3分

― エネルギー消費量をどう見積もるか ―
栄養障害を有する患者さんに栄養サポートを行う際、最も重要となるのが総エネルギー消費量(Total Energy Expenditure:TEE) の算定です。
TEEを適切に見積もれなければ、
栄養不足による改善不良
過剰投与による代謝負荷・合併症
のいずれも招きかねません。
ここでは、臨床でよく用いられるTEE算定の基本的な考え方を整理します。
エネルギー消費量(TEE)の求め方
栄養投与量を決める際のTEE算定には、主に以下の2つの方法があります。
① REE / BEE を基に算出する方法
まず、
安静時エネルギー消費量(REE:Resting Energy Expenditure)または
基礎代謝量(BEE:Basal Energy Expenditure)
を推定し、そこに
ストレス係数(Stress Factor:SF)
活動係数(Activity Factor:AF)
を乗じて算出する方法です。
👉 より理論的で精度が高い方法ですが、係数設定には臨床判断が求められます。
② 簡便法(体重あたりエネルギー量)
もう一つは、理想体重1kgあたり30~40kcalを目安としてTEEを求める簡便な方法です。
急性期・短期間の目安
詳細な評価が難しい場面
では有用ですが、リハビリ介入量や病態差を反映しにくいという限界があります。
活動係数(AF)の考え方
活動係数(AF)は、TEE算定において極めて重要な要素です。
一般的には以下のように設定されることが多いとされています。
寝たきり:1.0
ベッド上安静:1.2
ベッド外活動あり:1.3~1.4
しかし、リハビリ介入がある患者さんでは、この設定では不足することが少なくありません。
リハビリ介入を踏まえた活動係数の目安
リハビリ内容やADL状況に応じて、AFは調整が必要です。
活動係数(AF)の目安例
車椅子・全介助→ 1.2 前後
日中車椅子使用・歩行練習開始→ 1.2~1.3
日中車椅子使用・病棟内歩行開始→ 1.3~1.4
日中(杖)歩行・ADL練習主体→ 1.4~1.5
日中(杖)歩行+階段昇降・筋力トレーニングなど高負荷練習主体→ 1.5 以上も検討
※ 回復期リハビリテーション病棟の知見をもとに整理
活動係数設定で注意すべきポイント
① セラピスト訓練以外の活動も考慮する
ADL訓練
自主訓練
病棟内移動
徘徊がある場合
これらも実際のエネルギー消費量を大きく左右します。
② 神経疾患・麻痺がある場合
活動係数の設定には、特に注意が必要です。
筋緊張亢進・不随意運動がある場合→ エネルギー消費量は増大→ AFは高めに設定
筋緊張低下・遷延性意識障害・弛緩性四肢麻痺→ エネルギー消費量は低下→ AFは低めに設定
「動いていないように見える」からといって、必ずしも消費エネルギーが低いとは限らない点が重要です。
栄養投与量は「仮説」で決め、検証し続ける
エネルギー投与量の設定に、絶対的な正解はありません。
だからこそ、
仮説を立てる
投与する
体重・筋肉量・ADL・疲労度などで評価する
必要に応じて修正する
という仮説構築 → 検証 → 判断 → 再構築のサイクルを回し続けることが重要です。
これは、前回お伝えしたSMARTなゴール設定と完全に連動する考え方でもあります。




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