在宅酸素療法を科学する42~禁煙できない患者への働きかけ
- 2 日前
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成人の喫煙率とその実態
日本の平成26年度成人喫煙率は男性32.2%,女性8.5%(厚生労働省国民健康栄養調査)。健康日本21(第2次)では成人喫煙率12%以下を目標としているが,喫煙は疾患の予防・治療において最優先課題である。
喫煙習慣の本質は「ニコチン依存症」と言われる積極的治療を必要とする精神疾患である。やめにくさは麻薬に匹敵し,再発しやすい。カウンセリングを用いることでより効果的な支援が可能となる。
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タバコをやめにくいのはニコチン依存症が理由
ニコチンは中脳腹側被蓋野から大脳辺縁系側坐核に至る脳内報酬系に作用する。喫煙後わずか7秒でα₄β₂ニコチン作動性アセチルコリン受容体に結合し,ドパミンを過剰分泌する。これにより快楽・落ち着き・集中力向上感が生じるが,30分ほどでニコチン切れとなり離脱症状が出現する。

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禁煙治療:保険算定と対象患者
禁煙治療は「禁煙治療のための標準手順書」に沿って行った場合のみニコチン依存症管理料が算定される。スケジュールは初回から12週間で5回受診。
対象患者の要件 | 内容 |
① | 直ちに禁煙しようと考えている |
② | TDS(tobacco dependence screener)で5点以上のニコチン依存症 |
③ | 35歳以上:ブリンクマン指数(1日喫煙本数×喫煙年数)200以上 |
④ | 禁煙治療を受けることを文書で同意 |
⑤ | 前回の禁煙治療から1年以上経過 |
禁煙補助薬
禁煙補助薬は3種類。保険診療で使用できるのはニコチンパッチとバレニクリンの2種類である。


因果関係は不明だが,抑うつ・不安・焦燥・自殺念慮等が報告されている。既往歴・内服薬を把握しCES-Dで経過観察。
2011年7月改訂の添付文書より,めまい・傾眠・意識障害等のため自動車の運転はできないことを患者に明確に伝え,診察記録に必ず記載する。
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カウンセリング
AHRQ(米国医療研究品質局)の2008年禁煙ガイドラインメタアナリシスでは,3分間の禁煙アドバイスで禁煙成功オッズ比1.3倍,薬物療法にカウンセリングを組み合わせると1.4倍(1.2〜1.6倍)に向上する。


② 認知行動療法(CBT)
患者自身の喫煙行動パターン(状況・思考・行動・感情)を振り返り,無意識の喫煙行動に気づき行動変容につなげる。再喫煙した患者にも有効。依存症に特化したリラプス・プリベンション・モデルも開発されている。
③ 動機づけ面接法(MI)
William R. MillerとStephen Rollnickが開発した対人援助論。患者の「やめたいけどやめられない」という両価性を受容し,一方的な禁煙の押しつけによる心理的抵抗を避ける。スピリットとしてPACE(協働・受容・コンパッション・喚起),基本技法にOARS(開かれた質問・是認・聞き返し・要約)を用いる。RCT(コクランレビュー2015)では,通常指導に対して1.26倍,プライマリケア医師のサブ解析では3.49倍の効果。
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やめ方のアドバイス
①
「減らす」方法は必ず失敗する,きっぱりとやめる
1本でも吸い続ける限りタバコへの渇望は続く。本数を減らす方法は必ず失敗するため,きっぱりとやめることが重要。
②
3日の山を乗り越える!
離脱症状のピークは3日,持続時間は3分。1カ月ほどで感じる程度に軽減する。「きっぱりタバコをやめ,3日の山を乗り越える」イメージを患者と共有する。
③
吸いたくなったときの対処法を考えておく
冷たい水を飲む,歯を磨く,ストレッチをする,ミントタブレット・昆布・飴を口に入れる,3分我慢するなど,複数の対処法をシミュレーションしておく。
④
環境改善
タバコ・灰皿・ライター・タスポを処分。飲み会・パチンコ・コンビニを避ける。禁煙宣言をする。
⑤
行動パターンを変える
朝一番の行動・食後の過ごし方を変える。コーヒーやアルコールは一時的に別の飲み物に切り替える。
⑥
「今日だけ吸わない!」と短期目標で頑張る
「明日,吸うかもしれないけど,今日だけ吸わないでおこう」と考え,吸わない日を1日1日積み重ねる。
⑦
禁煙を応援してくれる人を見つける
家族・友人・職場の人に誓い,応援してもらうことが禁煙の自信につながる。80歳を過ぎてからでも禁煙に成功する患者は多い。多職種・コメディカルでの支援が効果的。
⑧
よいことができたことを言葉で伝え返す:是認
「タバコをやめようと自分で決められたんですね」など,よい行動を見つけ,認め,言葉で伝え返す。自己効力感が高まり禁煙への自信につながる。
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禁煙治療のフォロー
禁煙が継続できると自信がつき,治療を自己中断する者もいる。禁煙治療は5回受診完了することで禁煙成功率が高まる。診察予定日に来院しなかった場合は当日連絡し治療の中断を防ぐ。






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