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在宅医療における認知症について④~アルコール、せん妄、うつ病——認知症との見極めポイント

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 1 日前
  • 読了時間: 3分


アルコール性健忘症候群とは?

長年の過度な飲酒は、脳にさまざまな悪影響を及ぼすことが知られています。特に慢性的なアルコール摂取による脳萎縮は、認知機能の低下=アルコール性健忘症候群を引き起こす可能性があります。

実際、アルコール依存症患者を対象にした研究では、断酒から6~7週間で脳体積が回復することが報告されています(Brain, 2007)。つまり、「飲み続けると脳は縮むが、やめればある程度回復する」可能性があるのです。

認知症が疑われる場合には、まず飲酒歴の確認が重要です。現在も飲酒があるようなら、しばらく断酒してもらい、その後の経過で「本当に認知症かどうか」を見極めましょう。

せん妄とは? 認知症との違い

せん妄(Delirium)は、感染症・脱水・環境の急変・薬剤などをきっかけに突然起こる意識障害です。特徴としては:

  • 発症が急激(数時間〜数日)

  • 日内変動が大きい

  • 幻覚・妄想・興奮を伴うことも

  • 回復可能性がある

高齢者ではせん妄を合併しやすく、入院時や入院後に発症する割合はそれぞれ10〜30%、手術後では15〜53%、ICUでは70〜87%と非常に高率です。

認知症(アルツハイマー病)とは異なり、せん妄は適切な原因対応と治療により改善が期待できます。

表3:せん妄とアルツハイマー病の違い

特徴

せん妄

アルツハイマー病

発症

急激(数時間〜数日)

徐々に進行(数か月〜数年)

経過

日ごと・時間ごとに変動が大きい

時間単位での変化は少なく徐々に悪化

覚醒度

軽度~中等度に低下

初期は保たれる

幻覚

多い

少ない

回復可能性

ある

ない

うつ病とアルツハイマー病の見分け方

高齢者の「物忘れ」症状の裏には、うつ病が隠れていることも少なくありません。うつ病と認知症を見分けるポイントは以下の通りです。

表4:うつ病とアルツハイマー病の違い

特徴

うつ病

アルツハイマー病

物忘れの自覚

はっきりある

少ない

物忘れへの姿勢

積極的に訴える

うまく取り繕うことが多い

典型的な妄想

心気妄想(「自分はボケた」など)

物盗られ妄想(「誰かに財布を盗られた」など)

見当識(日時・場所)

保たれる

障害される

経過

自然に改善することも多い

徐々に悪化

見極めと安心のために

高齢者の物忘れ=すぐに「認知症」とは限りません。アルコールやうつ病、せん妄などの別の要因が背景にあることも多く、正確な見極めが安心にもつながります。

とくにアルコールやせん妄の場合は回復可能性があるため、早めに気づき、必要に応じて専門医と連携することが大切です。📺 もっと知りたい方はこちら在宅医療・認知症ケア・呼吸器疾患の解説をYouTubeで配信中!▶ 内田賢一 - YouTubeチャンネル

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