創傷ケア(スキン テア、褥瘡、下肢潰瘍)を科学する④~スキン‐テアの管理5ステップ
- 賢一 内田
- 6月12日
- 読了時間: 4分

皮膚が裂けるように傷つく「スキン‐テア(skin tear)」は、高齢者や脆弱な皮膚をもつ人に多く見られます。適切な処置を行うことで、疼痛や感染リスクの軽減、早期治癒が期待できます。ここでは、スキン‐テアの管理手順を5つのステップでご紹介します。
① 必要時の止血
出血がある場合はまず圧迫止血を行います。出血が止まらない、あるいは出血量が多い場合は、損傷が脂肪層や筋層にまで及んでいる可能性があるため、必ず医師に報告しましょう。
② 創洗浄
創部に汚れや血腫がある場合は、微温湯(ぬるま湯)や生理食塩水で洗浄します。微温湯で痛みが出る場合は、生理食塩水の使用がおすすめです。
③ STAR分類によるアセスメントと皮弁の整復
スキン‐テアは、**STAR分類(Skin Tear Audit Research分類)**で創の状態を把握します。
皮膚の一部(皮弁)が残っている場合は、湿らせた綿棒や指、無鉤鑷子(むこうせっし)などを使い元の位置にやさしく戻します。

痛みを伴うため、事前に患者さんへ説明し、丁寧にゆっくりと行いましょう。
皮弁が乾燥している場合は、生理食塩水を含ませたガーゼを約15分あてて湿潤状態にしてから整復すると、上皮化促進や疼痛軽減が期待されます。
④ 創傷被覆とドレッシング材の選択
スキン‐テアの管理では湿潤環境の維持が原則です。特に皮弁を整復した後は、皮弁がずれないように固定し、剥がれにくいドレッシング材を選びます。
<STAR分類別・推奨されるドレッシング材>
カテゴリー | 推奨ドレッシング材 | 備考 |
カテゴリー1a・2a | シリコーングルメッシュ、シリコーンゲルシート、ポリウレタンフォーム/ソフトシリコーン | 1aは皮膚接合用テープ併用可(関節・紫斑部位は注意) |
カテゴリー1b | 非固着性ガーゼ+白色ワセリンなど | 皮膚接合用テープ使用しない |
カテゴリー2b | 非固着性ガーゼ+アズレン軟膏、トラフェルミンなど | 皮弁整復が困難な場合 |
カテゴリー3 | 非固着性ガーゼ、ワセリン系軟膏 | 完全な皮弁欠損 |
なお、ハイドロコロイドや粘着力の強い医療用テープの使用は避け、可能な限りシリコーン系テープや筒状包帯を選択しましょう。
⑤ 剥離方向の工夫
創傷被覆材の剥がす方向も重要です。皮弁の固定を妨げないよう、矢印などで「剥離方向」を明示しておくと安全です。透明でないドレッシング材では、剥離時の力加減にも注意が必要です。

まとめ
スキン‐テアの治療は、「創の保護」と「疼痛の軽減」の両立が大切です。以下の5ステップで、やさしく丁寧に対応しましょう:
圧迫止血
創洗浄
STAR分類と皮弁整復
適切なドレッシング材の選択と固定
剥離方向の配慮
在宅や施設ケアでスキン‐テアが起きた際にも、慌てず冷静に対応するための参考になれば幸いです。🌸 スキン‐テアの正しい理解とケアで患者さんのQOLを守ろう
スキン‐テアは高齢者に多く見られる創傷であり、正確な評価と分類がとても大切です。STAR分類を活用し、早期発見・適切な対応につなげましょう。
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