創傷ケア(スキン テア、褥瘡、下肢潰瘍)を科学する⑦~【事例で学ぶ】スキンテア発生時の初期対応とケアのポイント
- 賢一 内田
- 6月15日
- 読了時間: 3分

~STAR分類とドレッシング材の選び方~
Cさん(70代・男性)は抗凝固薬を内服中。夜間に不穏となり、ベッド柵から身を乗り出そうとした際、**左大腿部にスキンテア(皮膚裂傷)**が発生しました。

翌朝、創部のケアを行おうとしたところ、皮弁が乾燥して丸まり始めている状態でした。こうしたスキンテアに対して、どのようなケアを始めるのが適切なのでしょうか?
■ スキンテアの初期対応 ~まず何をする?~
最初に行うべきケアは、乾燥した皮弁を可能な限りもとの位置に戻すことです。

皮弁が生着可能な状態かを確認しながら、洗浄・整復・適切なドレッシング材の選択を行います。
この際の評価に有用なのが、**STAR分類(Skin Tear Audit Research分類)**です。
■ STAR分類で創を評価
評価項目 | 判定 |
皮弁の有無 | あり |
皮弁の色 | 正常(血色あり) |
皮弁の戻しやすさ | 戻せる |
→ STAR分類:Type 1(皮弁が完全に戻せるスキンテア)と判断されます。
■ 適切なドレッシング材の機能とは?
スキンテアに使用するドレッシング材には、以下の3つの機能が求められます:
保護:外力や摩擦から創部を守る
保持:湿潤環境を維持し、皮弁の生着を促す
固定:創面を安定させ、皮弁のズレを防ぐ
そのため、ソフトシリコーン付きポリウレタンフォーム材などが推奨されます。
■ 治癒後の判断:ドレッシング材はいつ外す?
約1週間後、Cさんの創は皮弁が生着し、欠損部も表皮化して治癒したとの報告がありました。
このような場合、ドレッシング材の貼付は原則中止して問題ありません。

ただし、**再発リスクが高い部位や行動(せん妄など)**がある場合には、摩擦・剪断力から皮膚を守る目的で保護材を継続することも検討されます。
■ 再発予防に向けたケアの工夫
Cさんは時折せん妄を呈し、ベッド柵を叩いたり、身を乗り出す行動がみられます。再発を防ぐには以下の対策が有効です:
ベッド柵の緩衝材(クッション)使用
照明や声かけによる環境整備で不穏予防
手指・爪のケア(掻破による二次損傷予防)
皮膚保護クリームやプロテクティブドレッシングの使用
■ まとめ
スキンテアの初期対応では、皮弁の保護・生着を最優先に考えることが重要です。評価にはSTAR分類を活用し、適切なドレッシング材を選択します。
また、再発リスクの高い高齢者やせん妄のある方では、予防的な環境調整と多職種連携が不可欠です。
参考文献一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会 編『ベストプラクティス スキンテア(皮膚裂傷)の予防と管理』照林社, 2015年🌸 スキン‐テアの正しい理解とケアで患者さんのQOLを守ろう
スキン‐テアは高齢者に多く見られる創傷であり、正確な評価と分類がとても大切です。STAR分類を活用し、早期発見・適切な対応につなげましょう。
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