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認知症について家族へ向けて14~次々に襲い来る「手続き」という名の壁

  • 4月19日
  • 読了時間: 9分


次々に襲い来る「手続き」という名の壁

お会計、ICカードのチャージ、料理の手順——当たり前に見えるこれらの行為には、じつは複数の「壁」が隠されている。計算・記憶・判断・環境適応の障害が日常にどう影響するかを読み解く。

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「手続き」とは、複数の工程を手順通り続けることです。工程で1つでもつまずくと、ゴールにたどり着けません。


お会計という単純に見える行為にも、じつは複数の手順が隠されています。本記事では、心身機能障害41〜44を通じて、日常生活に潜む数々の「壁」を解説します。

次々に襲い来る「手続き」という名の壁


患者さんの声

買い物に出かけるのがわたしの楽しみだったのですが、最近は最後の会計で悩むことが多くなってきました。 よく困ってしまうのは、「お会計は355円です」と言われて、財布を取り出そうと目線を落とした瞬間に、いくらだったのか忘れてしまうこと。最近ではほとんど毎回聞き直しています。

数字や記号は特に記憶に残りにくいようです。533円と勘違いしてしまうこともしばしば。でも実は、ただ忘れてしまうだけではなくて、計算することも難しくなっているのです。 355円と言われても、100円が3枚と10円が5枚というふうにパッと頭に浮かばない。

また、「ポイントカードをお持ちですか?」という店員さんの一言に気を取られ、金額が頭から飛んでいってしまいました。シルバーと白っぽいシルバーという微妙な色の違いがわからず、100円と1円が区別できないこともよくあります。

長い列ができているのに気づいたとき——「もう、急がなきゃ!」と思えば思うほど思考は空回りして、いったい今、何をすればいいのかわからなくなってしまいます。 最近、キャッシュレス決済をするようになってからは、お会計はだいぶ楽になりました。

会計にすごく時間がかかる理由

会計という行為を振り返ってみても、その中には複数の「手順」と「壁」が潜んでいます。

金額を聞く① → 金額を覚える② → 小銭と紙幣の組み合わせを計算する③ → 必要なお金を探す④ → お金をつかむ⑤ → 店員さんにお金を渡す⑥

壁①②

記憶の壁


聞いた金額を覚えておく

壁③

計算の壁


最適な組み合わせを計算

壁④

錯覚の壁


色・形で必要なお金を探す

壁中間

注意の落とし穴


別の声かけで意識が飛ぶ

壁⑤

空間の壁


財布の中の硬貨をつかむ

まとめ

ちょっとつまずくと


次に何をすればいいか不明に

こうした事態を避ける方法はシンプルです。ゆっくりと店員の話を聞き、金額を何度も確認し、財布からじっくりお金を出す。つまり、たっぷり時間をかけて会計をすればよいのです。イギリス発の「スローレジ」「スローショッピング」という活動をきっかけに、日本でも、ゆっくり買い物することを推奨する活動が行われるようになっています。

交通系ICカードをチャージできない理由


患者さんの声

毎日の出勤・退勤の際はパソコンで勤務時間を記録していたのですが、いったいどの画面を開けばいいのか、突然わからなくなってしまったのです。同僚に代わりにやってもらったのですが、画面を開いても、どのボタンを押せばいいのかさっぱり見当がつきませんでした。

別の日には、交通系ICカードの残金が切れてチャージ機に向かいました。すると、チャージ機がいつも使い慣れているものと少し違っていて、「定期券」「チャージ」「回数券」などいろいろなボタンがあって、どのボタンを押せばいいのかわからなかったのです。

とにかくいろんなボタンを押してみるものの何回もやり直し。それに気づいた隣人が、親切に教えてくれてやっとチャージができました。

手続きの順序が少しだけ変わったり、新しい手続きが加わったりすることで、途端にその行為が難しくなることがあります。 ある券売機では「カード挿入 → チャージボタン → お金挿入 → カード受け取り」。しかし別の駅では「チャージボタン → カード挿入 → お金挿入 → カード受け取り」と順番が入れ替わっていることがあります。

カップ麺をつくる際も、多くの場合はふたを半分開ける → お湯を入れる → 3分待つ → ふたを開けるという4つの手順で構成されますが、そこに「スープを取り出す」の手順が加わるだけで難しくなる、という経験をした方もいらっしゃるでしょう。

また、「ICカードにお金を補充したい」と思っても、そのための行為が「チャージ」という言葉と結びついていなければ、そのボタンを押すことができないのです。カタカナ言葉は、その原因となることが多いようです。

🔢

心身機能障害 41

簡単な数の


計算ができない

CHECKこの障害が原因と考えられる生活の困りごと

 

適切な分量を量れない

コーヒーに砂糖を入れるとき、1つ、2つと数えていたがいつの間にかいくつ入れたのか忘れていた。同様に、お米や調味料を量るときも間違えやすい。

 

支払う金額の計算ができない

金額に対して、お札と小銭のどれをいくつ出せばいいかわからない。間違えたり待たせたりすることが怖く、ついお札で払い、財布が小銭でいっぱいに。

 

薬の量を数え間違える

薬を慎重に数え、間違えていないと思っても、よく見ると多く出していたりする。いろいろな種類の薬を飲むときは、同じものを2個出したり、1個出し忘れたりすることが多い。

 

注文する弁当の数を間違える

人数分の弁当を注文する際、いつも間違えてしまう。何度も声に出して数え、そのときは合っていたはずなのに、どうすればいいかわからない。

🔄

心身機能障害 42

小さな環境変化に


柔軟に対応できない

CHECKこの障害が原因と考えられる生活の困りごと

 

目印がなくなる・変わると、途端に道に迷ってしまう

いつも曲がる角に、カフェの立て看板が出ていないだけで、途端にいつもと違う道に感じられ、どこに向かえばいいのか、いったいここはどこなのかわからなくなってしまう。

 

家電や文具など、新しいものの使い方がわからない

家電を買い換えると、ボタンの位置や操作手順が変わるので、使い方がわからなくなる。ボールペンも、ノックする場所が変わったり、回してペン先を出すタイプだったりすると戸惑う。

 

いつも行かないスーパーに入ると知らないシステムで戸惑ってしまう

レジ・セルフレジ・有人レジなど、スーパーごとにシステムが異なり、初めて使う機械の前では何から始めればいいかわからなくなる。

心身機能障害 43

慣れ親しんだ手続き・習慣を


想起・実行できない

CHECKこの障害が原因と考えられる生活の困りごと

 

着替えの手順を間違える

インナーを着る前にコートを先に羽織ってしまったり、ボタンをところどころ留め忘れてちぐはぐになったりする。また、腕時計の付け方や靴紐の結び方もわからなくなる。

 

味噌汁を作る工程がわからなくなる

味噌を水の中に真っ先に入れてしまったり、出汁を入れ忘れたりする。いつも使っていた鍋がわからず、何から手をつければいいかわからなくなることも。

 

包丁の使い方・食材の切り方がわからない

肉じゃがを作ろうとしても、にんじん・玉ねぎ・じゃがいもをそれぞれどう切ればいいかわからない。レシピに食材の切り方が示されていても、包丁をどう動かせばいいかわからず、思うように切れない。

 

家電(洗濯機・テレビ・炊飯器・レンジ)の操作が難しい

洗濯するとき、どの順番でどのボタンを押せばいいかわからない。乾燥のみや特殊な素材の洗い方はもっと難しい。リモコンはどのボタンを押すと何が起こるかわからず、混乱する。

 

ブログやSNSの投稿手順がわからなくなる

SNSに投稿しようとしたが投稿手順を忘れてしまい、どの画面を開くのか、どのボタンを押すのかがわからなかった。教えてもらってもすぐに忘れて、何度も聞いてしまう。

 

冠婚葬祭の場で適切な行動ができない

母親の葬儀のとき、何をしたらいいかわからず、ぼーっとしてしまっていた。事前に喪主としてやるべき挨拶や準備を聞いていたのに、いざその場に立つとさっぱりわからなくなってしまった。

 

仕事・公的手続きの手順がわからなくなった

仕事の書類の提出方法や確認ルートなどの手順がわからず、毎回初めてのような感覚になる。

⚖️

心身機能障害 44

複数のモノ・コトから


正解や最適解を選択・判断できない

CHECKこの障害が原因と考えられる生活の困りごと

 

気候や場に応じた服や持ち物を選ぶのが難しい

気候や気温、カジュアルかフォーマルか、だれに会うのかなどを考えると、服選びにとても疲れる。また、旅行の際は先のことを想像して必要なものを揃えることが難しい。

 

靴を間違える

下駄箱や玄関に靴がたくさん並んでいると、他人の靴を履いてしまうことがある。なかなか足が入らず「おかしいな?」と思うことや、すんなり履けて指摘されるまで気づかないことも。

 

整理整頓・片付けができない

「重いものは下」「よく使うものは手前」など、いろいろなことを考えなければならないので、整理整頓ができない。元の場所に戻すことも難しく、片付けようとしたのに散らかってしまう。

 

ICカードのチャージ方法や切符の購入方法がわからない

チャージの際、カードを入れる、ボタンを押す、お金を入れる、などの順番がわからない。挿入口がさまざまだったり、途中でおつりが出てきたりして混乱する。また、後ろに人が並んでいると焦って手が止まる。

 

スーパーの陳列棚で買うものを取り間違える

よく確認して手に取ったはずなのに、醤油を買うつもりが似たボトルのソースを、小麦粉ではなく隣にあった片栗粉を買ってしまう。

 

会計をせずに帰ってしまう

スーパーに買い物に行くと、会計を飛ばして商品を持って帰ってしまう。「会計」が一連の買い物手順の中から抜け落ちてしまい、自分では何も気づくことなく店を出てしまう。


💡 暮らしのヒント

キャッシュレス決済を活用することで、会計の複数ステップを大幅に省略できます。金額がいくらか計算しなくとも、ICカードをピッとすれば会計完了。小銭がうまく取り出せずに焦ることもなくなります。また、スローショッピング(ゆっくり買い物できる時間や環境の整備)の取り組みも、日本で広がりを見せています。店内の動線やスタッフ教育を独自に開発したこの活動は、認知症のある方や高齢者が楽しくショッピングできる社会づくりを目指しています。

タグ

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