認知症は治せるか~認知症治療の羅針盤15~後部皮質萎縮症(PCA)とは?「もの忘れより、物が見えにくい」が特徴の若年発症認知症
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後部皮質萎縮症(PCA)とは?「もの忘れより、物が見えにくい」が特徴の若年発症認知症
「漢字が書けなくなった」「車が対向車線に寄ってしまう」「鍵を鍵穴に入れられない」——記憶は比較的保たれているのに、見え方や空間認識に問題が出る「後部皮質萎縮症(PCA)」について解説します。
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「最近、字が書きにくくなった」「車の運転で車線がわからなくなった」「目の前にある物に手が届かない」——こうした症状でいくつもの病院を受診したが、眼科では異常なし、と言われてしまうケースがあります。これは後部皮質萎縮症(PCA:Posterior Cortical Atrophy)という、脳の後ろ側(視覚・空間認知を担う領域)が萎縮することで起こる、非典型的な変性疾患かもしれません。さくら在宅クリニックでは、PCAを含む非典型認知症の在宅支援にも対応しています。
後部皮質萎縮症(PCA)とはどんな病気か
PCAは、大脳後方領域(後頭葉・頭頂葉・側頭葉後方)の萎縮と進行性の機能低下を示す変性疾患です。最大の特徴は、初期には記憶と言語機能が比較的保たれる一方で、視覚処理などの認知機能低下が前景に立つことです。
発症年齢
発症のピークは50歳代半ばと若く、典型的なアルツハイマー病より早い。若年性ADの少なくとも12%を占めるとされる。
背景病理
剖検ではAD(アルツハイマー病)が約70%と最多。そのほかCBD・DLB(レビー小体型認知症)・プリオン病なども原因となりうる。
進行速度
平均生存期間は10.3年。萎縮はADに比べて速く進行する。経過とともに失語・失算・相貌失認なども加わってくる。
合併症
約40%にうつを伴う。若年発症であることから、就労継続困難・社会的孤立になりやすい。
PCAが見過ごされやすい理由
若年発症であり「健忘以外の症状」に対する認識が一般的に低いため、PCAは過小認識されている可能性があります。見え方に関する症状が強いため、患者さんは眼科受診・眼鏡作成を繰り返します。「視覚の歪み」「相貌失認」を含む視知覚障害から、身体表現性障害や心因性視力障害と誤診され、診断が遅れることもあります。
PCAの特徴的な症状——「見えにくさ」から始まる認知症
大脳後方領域では視覚情報処理が行われています。腹側路(What系:対象認知)と背側路(Where系:空間認知・視覚-運動連携)の両方が障害されることで、さまざまな「見え方の障害」が生じます。
PCAで起こる「見え方・空間認知」の具体的な症状(約70%に出現)




PCA患者の多くはこの2つの症候群の要素を合わせ持っています。
Gerstmann症候群
視空間認知障害・失算(計算できない)・失書(書けない)・左右失認(左右がわからない)・手指失認(自分の指がわからない)の組み合わせ。初期から計算障害が目立つ。
Balint症候群
精神性注視麻痺(見たいものに視線を向けられない)・視覚性運動失調(見て手を動かすことができない)・同時失認(一度に複数の物を認識できない)の組み合わせ。
典型的なアルツハイマー病(AD)との違い
PCAの背景病理の約70%はADですが、臨床像はいわゆる「もの忘れ型」ADとは大きく異なります。

2017年のCrutchらの診断基準では、3段階の分類枠組みが提唱されています。


PCAでは視覚処理過程の障害が前景に立つため、目印のコーンが置いてあってもコーンや穴が見えない、電車とホームの端とのすき間や階段を見誤り転落するなど、在宅・外出での安全リスクが高くなります。


ADの治療薬であるコリンエステラーゼ阻害薬の効果は限定的で、非薬物療法の効果も確定的なことはいわれていません。視覚処理の適応訓練・環境調整・心理的サポートを中心とした支援が主となります。うつの合併(約40%)には抗うつ薬が検討されます。

PCAでは初期に記憶がある程度保たれているため、「本人がわかってやっていない」「努力が足りない」と誤解されることがあります。


逗子市・葉山町・鎌倉市を中心に、後部皮質萎縮症を含む非典型認知症の在宅医療・環境整備支援を行っています。若年発症で職場・家庭に影響が出ている方もお気軽にご相談ください。
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