top of page

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する53~在宅医療で活かす「心エコー」

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 2025年10月30日
  • 読了時間: 3分

〜プローブの当て方と観察の基本〜

① 患者の体位とアプローチ方法

心エコー検査では、左側臥位または左半側臥位が基本です。胸骨左縁の第3〜第4肋間から観察すると、心臓の構造を最も明瞭に描出できます。

しかし、在宅医療の現場では、

  • 体位変換が難しい

  • 高齢で心臓の位置が下がっている

  • 肺気腫などを合併している

といったケースも多く見られます。そのような場合には、仰臥位のまま心窩部(みぞおち)から観察することが有効です。

この「胸骨左縁」と「心窩部」からの2か所のアプローチで、短時間・低負担で基本的な心機能評価が可能になります。

② 使用する装置とプローブ

成人の心エコーでは、1〜5MHz程度のセクタ型プローブが標準的です。視野が広く、肋骨の間から心臓全体をとらえることができます。一方、心窩部からの観察では、コンベックス型プローブでも代用可能です。最近の携帯型エコーには、これらの機能が一体化されており、在宅でも実用的です。

③ 観察法①:胸骨左縁から心臓全体を描出(左室長軸像)

プローブの位置は胸骨左縁の第3〜4肋間。マーカーの向きは「時計の10時方向(患者の右肩側)」です。

この方向にあてると、心臓を縦に切った「左室長軸像」が描出されます。観察できる主な構造は次の通りです。

  • 左心室・右心室

  • 左心房

  • 大動脈弁・僧帽弁

  • 心室中隔・左室後壁

ここでは、以下のポイントをチェックします:

  • 壁運動異常の有無

  • 左室拡大・肥大の有無

  • 弁の動き(閉鎖不全や狭窄の兆候)

  • 心嚢液の貯留(心タンポナーデの可能性)

④ 観察法②:短軸像で壁の動きを確認

長軸像の位置からプローブを90°回転させると、「短軸像」が得られます。心臓を輪切りにした断面で、

  • 大動脈弁レベル

  • 僧帽弁レベル

  • 乳頭筋レベル

  • 心尖部レベル

と順にスライドさせながら観察します。特に乳頭筋レベルでは、左心室の収縮と拡張の動きが最もわかりやすく、心筋の同期性や壁運動異常を把握するのに適しています。

⑤ 観察法③:心窩部アプローチで心嚢液と下大静脈を評価

プローブを心窩部(みぞおち)から頭側へ向けると、心臓全体を下からのぞき込むような断面が得られます。この位置では、次のような評価が可能です。

  • 心嚢液の検出感度が高い(心タンポナーデの早期発見に有用)

  • 右室の拡張期虚脱の確認(圧迫所見)

  • 下大静脈(IVC)の太さと呼吸変動の観察による血行動態評価

IVCを観察する際は、プローブを強く押しつけないことがポイントです。見えにくい場合は、患者に腹式呼吸をしてもらうと描出しやすくなります。

⑥ LVEFと心不全タイプの目安

心エコーで得られる最も重要な指標のひとつが**左室駆出率(LVEF)**です。

LVEF値

意味・分類

備考

40%未満

収縮不全型(HFrEF)

心筋のポンプ機能低下

50%以上

拡張不全型(HFpEF)

心筋の硬化・拡張障害

40〜50%

中間型(HFmrEF)

境界領域、臨床判断が必要

BNP検査や下大静脈径などの情報と組み合わせることで、在宅でも心不全の増悪リスクを早期に察知できます。

まとめ

在宅での心エコーは、

  • 短時間で

  • 患者への負担が少なく

  • 心不全の早期発見に直結する

という大きな利点があります。胸骨左縁(長軸・短軸)と心窩部の2方向を押さえるだけでも、心機能の全体像を把握することが可能です。

今後、携帯型エコーの普及により、在宅医療でも心機能評価が日常診療の一部となっていくでしょう。

推奨タグ(ブログ用)

コメント


© 2021 湘南在宅研究所 All Rights Reserved.

情報通信機器を用いた診療の初診において向精神薬を処方しておりません

bottom of page