来年度より頭痛外来開始いたします:難治性頭痛への新たなアプローチ~蝶口蓋神経節(SPG)ブロックとは?
- 賢一 内田
- 2 日前
- 読了時間: 3分

頭痛診療は年々進歩していますが、急性期の強い痛みへの即効性のある治療となると、選択肢は意外と限られています。
特に、
群発頭痛
三叉自律神経性頭痛(TAC)
自律神経症状(流涙・鼻閉)を伴う片頭痛
では、薬物療法だけでは効果が不十分になりやすく、患者さんが「どうすればこの痛みから解放されるのか」と深刻な苦しみに直面します。
そこで注目されているのが、「蝶口蓋神経節ブロック(SPGブロック)」です。
■ SPGブロックとは?
蝶口蓋神経節(SPG:Sphenopalatine Ganglion)は、鼻腔深部の翼口蓋窩に位置し、
三叉神経(痛み)
副交感神経(血管拡張・涙腺・鼻腺)
交感神経
が交差する重要部位です。
つまり、**頭痛と自律神経症状の“中枢ハブ”**となる場所であり、ここを局所麻酔で遮断することで、
強い眼窩痛
鼻閉
流涙
動悸・顔面の血管拡張
などを同時に改善できます。
■ 適応疾患(医療従事者向け)
◎ 第一選択級
群発頭痛(急性期治療として強く推奨)
◎ 高い有効性が報告される疾患
片頭痛(急性期/難治例)
三叉自律神経性頭痛(SUNCT/SUNAなど)
◎ 補助的適応
術後頭痛・顔面痛
非定型顔面痛
自律神経症状を伴う緊張型頭痛
■ 手技:経鼻的 SPG ブロック
もっとも一般的な方法は 綿棒(cotton applicator)法です。
◆ 必要物品
ロング綿棒(12〜18cm)
4%リドカイン(または 2%リドカイン+メピバカイン)
手袋・ガーゼ
吸引器(鼻汁が多い場合)
◆ 手順
患者を仰臥位、頭部軽度伸展
麻酔薬を浸した綿棒を鼻腔深部へゆっくり挿入
成人で 9〜10cm が目安
SPG付近で約 5〜10分保持
必要に応じて両側施行
◆ 合併症
鼻血
咽頭麻痺による違和感・苦味
流涙
迷走神経反射(稀)
■ 大後頭神経ブロック(GONB)との比較
頭痛診療では SPGブロックと GONB の適応判断が非常に重要です。
SPGブロック | GONB(大後頭神経ブロック) | |
主なターゲット | 三叉神経+副交感神経 | C2 後枝 |
強み | 群発頭痛/自律神経症状に強い | 片頭痛予防・頚性頭痛に強い |
施行難易度 | 中等度(鼻腔深部) | 容易(経皮注射) |
在宅適応 | 原則困難 | 在宅でも施行可能 |
どちらか一方ではなく、頭痛の phenotype に応じ、両者を組み合わせる治療戦略が近年主流となりつつあります。
■ 当院(さくら在宅クリニック)の取り組み
当院では
難治性頭痛
頚性頭痛
在宅での疼痛管理
神経ブロックによる QOL 改善
などにも力を入れております。
また、医療情報・在宅医療のリアルを発信するYouTubeチャンネル:🎥 https://www.youtube.com/@fukuroi1971もぜひご覧ください。
■ まとめ
SPGブロックは「三叉自律神経反射」を直接抑える数少ない治療
群発頭痛や自律神経症状を伴う頭痛に非常に有効
薬物制限のある症例でも安全に使用可能
大後頭神経ブロックと組み合わせることで治療効果が向上
在宅医療では GONB が主戦力
今後、SPGブロックは“難治性頭痛患者のレスキュー治療”としてますます重要性が高まると考えられます。




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