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攻めの栄養療法を科学する⑨~【EBMに基づく臨床意思決定】

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 24 時間前
  • 読了時間: 3分


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目の前の患者に「診療ガイドライン」をどう適用するか

リハ栄養診療ガイドラインを理解するためには、EBM(Evidence-Based Medicine)=科学的根拠に基づいた医療 の考え方が不可欠です。EBMは「研究エビデンスだけ」で決めるものではなく、次の3つが重なった領域こそが、もっとも望ましい臨床判断とされています。

● EBMを構成する3つの柱

  • 研究エビデンス(scientific evidence)

  • 患者の価値観・行動(patient values)

  • 医療者のスキル・経験・専門性(clinical expertise)

さらに、臨床状況・社会環境 も必ず判断に影響します。

▼ ガイドラインは「そのまま当てはめればよい」ものではない

診療ガイドラインは、あくまで“より良い意思決定を支援するための道標” です。

実際の臨床では、以下の点を丁寧に確認する必要があります。

【1】患者固有の状況を把握する

  • 多疾患併存

  • 栄養状態・身体機能

  • 家族背景・介護力

  • 経済的・社会的状況

  • 在宅 or 病院などの医療環境

ガイドラインに記載された「典型的患者像」が、今目の前にいる患者と一致しているとは限らない からです。

【2】ガイドラインの内容を批判的に吟味する

  • 本当に信頼できるエビデンスか?

  • 研究対象は日本の患者と近いか?

  • 介入方法は現実的か?

  • 効果はどれくらい期待できるか?

“ガイドラインをうのみにしない姿勢” がEBMの基礎となります。

【3】医療者としての判断を説明し、患者と合意形成する

推奨に沿う場合も、沿わない場合でも、

  • 「なぜその判断なのか」

  • 「どのような選択肢があるか」を丁寧に説明することが重要です。

最終的には 患者と医療者が話し合い、合意形成を目指す ことがエビデンスを活かす最善の方法となります。

▼ 効果が得られないときは「EBMのStep1〜4」を振り返る

ガイドライン通りに進めたはずなのに、期待する結果が出ないことは当然あります。

その場合は、以下の手順で振り返ります:

  1. Step1:疑問設定が適切だったか?

  2. Step2:情報収集に漏れはなかったか?

  3. Step3:情報の吟味は適切だったか?

  4. Step4:患者への適用は妥当だったか?

重要なのは、「自己流アレンジ」ではなく、どこを変更したのかを明確にすること。この振り返りこそが、次の患者の診療に活かされます。

▼ ガイドラインは“進化し続けるもの”

リハ栄養診療ガイドラインは GRADE system に基づき作成され、現時点での最善の推奨が示されています。

しかし――

  • エビデンスの量が不十分

  • 成人がん領域などでは確実性が低い

  • 新しい治療やケアモデルが次々登場する

そのため、ガイドラインは完成ではなく“常に更新されるべきもの”です。

臨床現場でEBMを実践し、その経験を積み上げた先に次の改訂版ガイドラインが作られ、未来の患者の利益につながるという循環が成立します。

▼ さいごに

EBMは「根拠に従う医療」ではなく、“根拠をふまえて最適な選択肢を患者と一緒に決める医療” です。

リハ栄養診療ガイドラインは、そのための強力なツールであり、多職種が同じ方向を向くための共通言語にもなります。

現場の経験とエビデンスが統合され、一人ひとりの患者に最適なリハ栄養ケアが届けられることを願っています。

▼ 関連リンク

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