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創傷ケア(スキン テア、褥瘡、下肢潰瘍)を科学する⑫~【褥瘡ケア入門】急性期褥瘡の特徴とドレッシング材の選び方

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 6月20日
  • 読了時間: 4分


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まずは「見極め」と「保護」から~

■ 急性期褥瘡とは?

褥瘡が発生してから約1~3週間以内の状態は「急性期褥瘡」と呼ばれます。この時期の創部は非常に不安定で、局所炎症が強く、判断を誤ると悪化や深部損傷に進行するリスクがあります。

急性期の主な皮膚所見:

  • 発赤(境界不明瞭なことも)

  • 紫斑・浮腫・水疱・びらん

  • 浅い潰瘍

  • 皮膚の脆弱化(剥離・出血しやすい)

■ 要注意:深部損傷褥瘡(DTI)とは?

一見、浅い損傷に見えても、皮膚の下で筋肉や脂肪層が深く損傷している場合があります。これが**DTI(Deep Tissue Injury)**です。

DTIを疑うサイン:

  • 色調の異なる多重発赤

  • 触診時の痛みや硬結

  • 泥状の浮遊感

  • 冷感または熱感の異常

これらの所見があれば、早期にエコーや連日の観察を行い、進行性の深部損傷に備えます。

■ 急性期のドレッシング材選択:原則は「保護と観察のしやすさ

使用目的

選ぶ基準

観察しやすさ

毎日の観察ができる透明性や交換しやすさ

皮膚保護

低刺激・低粘着・非固着性のドレッシング材を選択

炎症の鎮静

白色ワセリン・酸化亜鉛軟膏など油脂性基剤を使用

 

◎ 避けたい素材

  • 高粘着性のシート:剥離時に表皮を傷つけやすい

  • フィルム固定のみの長期使用:炎症が悪化する可能性あり

■ 慢性期へ移行したら:DESIGN-R評価を開始

発症から2~3週が経過し、炎症反応が落ち着き、創の輪郭が明瞭化してきたら、DESIGN-Rスケールでの評価が可能となります。

■ 急性期→慢性期へ:治癒の基本ステップ

  1. 壊死組織の除去N → n

  2. 良性肉芽組織の育成G → g

  3. 創の収縮と上皮化S → s

  4. 滲出液や感染がある場合は同時に制御E/I/P → e/i/p

■ 主な創傷被覆材の特徴まとめ(参考)

分類

特徴・用途例

ハイドロゲル系

壊死組織の自己融解を促進。疼痛の緩和にも効果。

アルギン酸塩

滲出液をゲル化し止血効果あり。Ca含有。銀含有タイプもあり。

ハイドロファイバー系

吸収力高く、細菌も捕捉。銀含有あり。

ポリウレタンフォーム

吸収力が高く、創面にフィットしやすい。形状多様。

フィルム材

上皮化期や浅い褥瘡に適応。観察性高い。

キチン・キトサン系

高い生体適合性を持つ再生促進材。

 

■ おわりに:急性期ケアは“丁寧な観察”がすべて

急性期褥瘡は時間とともに状態が劇的に変化することがあります。最も大切なのは「過剰な処置を避けながら、悪化のサインを見逃さないこと」。

“貼る前に診る”という基本姿勢で、まずは炎症を抑え、皮膚を守るケアから始めましょう。

参考文献:

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