創傷ケア(スキン テア、褥瘡、下肢潰瘍)を科学する⑫急性期褥瘡とは?
- 賢一 内田
- 6月18日
- 読了時間: 3分

~まずは「見極め」と「皮膚を守るケア」から~
褥瘡(じょくそう)は、皮膚やその下の組織が圧迫されて血流が悪くなり、壊死してしまう傷のことです。高齢の方や寝たきりの方に多く、**「できてしまってからの対応」**がとても重要です。
今回は、褥瘡ができて間もない「急性期」の段階でどう見極め、どのようにケアするべきかを、わかりやすく解説します。
🔍「急性期褥瘡」っていつのこと?
褥瘡が発生してから おおよそ1〜3週間以内の状態を「急性期褥瘡」と呼びます。
この時期の傷はとても不安定で、ちょっとした判断ミスやケアの遅れで、深部(皮膚の下の組織)まで壊死が進んでしまうことも。
❗こんな皮膚のサインに注意
赤み(境界があいまいなことも)
紫色っぽい斑点(紫斑)や腫れ(浮腫)
水ぶくれ、ただれ(びらん)
表面の皮膚が剥けやすい・出血しやすい
⚠ 深部損傷(DTI)って?
見た目は軽そうでも、中が深く傷んでいることがあります。これが「DTI(Deep Tissue Injury)」です。
💡DTIを疑うポイント
色ムラのある赤み
押すと痛がる or 硬く感じる
プヨプヨとした感触
触ると冷たすぎる、または熱い
➡️ これらがある場合は、早めに医療者へ相談を!
🩹ドレッシング材(傷に貼るもの)の選び方
急性期の褥瘡には、「守りながら、よく観察できる」ことが大切。貼って安心、ではなく**“貼る前に診る”**ことを忘れずに。
ケア目的 | 材料選びのポイント |
観察しやすさ | 透明で交換しやすいもの |
皮膚の保護 | 刺激が少なく、くっつきすぎないもの |
炎症を抑える | 白色ワセリン、酸化亜鉛軟膏などの油性軟膏 |
❌避けたいもの
粘着が強すぎるテープやシート
フィルムだけを長く貼りっぱなしにすること
➡️ 皮膚を余計に傷つけるリスクがあります。
⏩ 慢性期に入ったら「DESIGN-R」で評価
2~3週間経ち、炎症がおさまり、傷の輪郭がはっきりしてきたらDESIGN-Rスケールで状態を記録しながら治療方針を立てていきます。
💡傷の回復プロセス
褥瘡の治り方には順序があります。
壊死した部分の除去
新しい肉芽(にくげ)組織を育てる
傷が縮み、皮膚が再生する
感染や滲出液をコントロールしながら見守る
🧴創傷被覆材の種類と特徴
材料の種類 | 特徴・用途 |
ハイドロゲル | 壊死組織を柔らかくし、痛みを和らげる |
アルギン酸塩 | 滲出液を吸収・止血に有効(銀含有タイプも) |
ハイドロファイバー | 吸収力が高く、感染対策にも優れる |
ポリウレタンフォーム | 傷にフィットしやすく形状も豊富 |
フィルム材 | 浅い傷や皮膚の再生期に使いやすい |
キチン・キトサン系 | 皮膚の再生を促すバイオ素材 |
📝 まとめ:急性期褥瘡ケアは“観察が命”
褥瘡は「まずは見極め」、そして「皮膚を守る」ケアが最優先。無理に処置を増やすよりも、悪化のサインを見逃さない観察力が何よりも大切です。
貼る前に診る。その積み重ねが、傷を悪化させず、回復へ導く近道になります。
📚 参考文献
日本褥瘡学会『褥瘡予防・管理ガイドライン 第4版』
福井基成『急性期褥瘡とその治療』
真田弘美監修『新・褥瘡のすべて』永井書店
DESIGN-R 実践マニュアル(日本褥瘡学会)
🌸 在宅医療でも褥瘡ケアは重要です
さくら在宅クリニックでは、逗子・葉山・横須賀・鎌倉エリアを中心に、パーキンソン病や認知症、終末期医療など専門的な訪問診療を行っています。
傷の変化を見逃さず、必要最小限の処置で最大限のケアを。在宅でもできる、確かな褥瘡管理を一緒に考えていきましょう。
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