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リウマチを科学する24 免疫抑制の副作用治療を始める前の備えで、結果が大きく変わります

11 分前
読了時間: 6分

免疫抑制の副作用治療を始める前の備えで、結果が大きく変わります

ステロイドに期待している薬理作用は、炎症反応や免疫反応を抑えることです。ということは、その裏返しとして正常な免疫も抑えられます。とくに細胞性免疫が低下し、液性免疫や好中球の機能も落ちるため、さまざまな感染症を発症しやすくなります。今回は、治療前に手を打っておくべき代表的な感染症を順に見ていきます。

#ステロイド#副作用#免疫抑制#ニューモシスチス肺炎#ST合剤#結核#潜在性結核感染症#インターフェロン遊離試験#B型肝炎再活性化#帯状疱疹#ワクチン#日和見感染

1|ニューモシスチス肺炎:予防できる、だから予防する

ニューモシスチス肺炎は、ニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jirovecii)という真菌によって起こる肺炎です。健康な人が発症することはまずない日和見感染症の代表格で、ステロイドや免疫抑制剤で免疫能が低下している人に起こりえます。

発症してからでは遅い

いったん発症すると、死亡率は30〜50%と報告されています。高い確率で命に関わる病気ですから、治療の主眼は発症してからの対応ではなく、予防に置かれます。

幸いなことに、ニューモシスチス肺炎はST合剤の内服でほぼ完全に予防できます。予防内服のレジメンはST合剤1錠/日が基本ですが、近年は0.5錠/日に減量したレジメンの報告があり、一定の予防効果と副作用の軽減が示されています。

どれくらいの量から予防するのか

目安は「PSL 15〜20mg/日を超える量を1か月以上」

この量を超えるステロイド治療が1か月以上続くと、ニューモシスチス肺炎を発症する可能性が高くなると言われています。該当する患者さんでは、ST合剤の予防内服を忘れないことが鉄則です。

ST合剤を使うときの注意

ST合剤はアレルギーが出やすい薬剤です。全身に皮疹が広がったり、発熱や肝機能障害を合併することがあります。全身の皮疹に加えて口や眼の粘膜にびらんを生じるスティーブンス・ジョンソン症候群という重症薬疹を起こすこともあり、注意を要します。

アレルギーのためにST合剤の予防内服を断念せざるを得ない場合は、代替手段としてアトバコン(サムチレール®)の内服を行います。

2|結核:眠っている菌が目を覚ます

結核は結核菌に感染することで発症します。結核を発症して症状があり、菌を体外に排出して感染性がある状態を活動性結核と言います。

実は、結核菌に初めて感染した人がすぐに活動性結核を発症することは稀です。多くは無症状のまま経過し、このような無症状で感染性もない状態を潜在性結核感染症(LTBI)と言います。

LTBIをどう見つけるか
LTBIをどう見つけるか

LTBIの診断には、過去に結核菌に感染したことがあるかを調べる必要があります。かつてはツベルクリン反応が使われていましたが、BCG接種を受けた人では偽陽性になってしまう問題がありました。

現在は、BCG接種の影響を受けない血液検査であるインターフェロン遊離試験が推奨されています。「T-SPOT」と「クォンティフェロン・テスト」の2種類があるため、自施設がどちらを採用しているか確認しておきましょう。活動性結核の症状がなく、インターフェロン遊離試験が陽性ならLTBIと診断されます。

LTBIと診断されたら

活動性結核の発症予防のため、抗結核薬で治療します。予防治療のレジメンはイソニアジド5mg/kg/日の内服を6〜9か月間が一般的です。近年はリファンピシンを含むレジメンも登場していますが、リファンピシンはステロイドの代謝酵素を誘導し、ステロイドの作用を減弱させる点に注意が必要です。

3|B型肝炎:治療前のスクリーニングが必須

B型肝炎はB型肝炎ウイルス(HBV)の感染で発症します。感染すると急性肝炎を起こしますが、一定期間が過ぎると肝炎は鎮静化して非活動性キャリアとなり、その後は血中からHBVが検出されなくなって既往感染という状態になります。

ところが、既往感染の状態でも体内にはごく微量のHBVが残っています。免疫抑制状態になると、残存していたHBVが再活性化・再増殖してde novo B型肝炎を発症することがあります。これは多くが劇症肝炎に至り、きわめて死亡率の高い病気です。

※ 20 IU/mLは1.3 LogIU/mLに相当します。実際の運用では、日本肝臓学会「B型肝炎治療ガイドライン」の免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドラインの原本をご確認ください。
※ 20 IU/mLは1.3 LogIU/mLに相当します。実際の運用では、日本肝臓学会「B型肝炎治療ガイドライン」の免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドラインの原本をご確認ください。

4|その他の感染症とワクチン

肺炎や尿路感染症などの一般的な細菌感染症を発症しやすくなります。また、健康な人では通常感染しないような弱毒菌、たとえばリステリア菌や緑膿菌にも感染しやすくなります。

細菌感染症の予防については、肺炎球菌感染症はワクチンである程度予防できますが、ほとんどの細菌に対して特別な予防策はありません。いったん発症すると重症化しやすいため、早期に発見して速やかに治療できるよう心がけることが現実的な対策になります。

帯状疱疹は「後遺症」が問題になる

ステロイド投与により帯状疱疹を発症するリスクが高くなります。帯状疱疹はしばしば帯状疱疹後神経痛を残し、患者さんの生活に重大な影響を及ぼします。全身に広がる播種性帯状疱疹で入院を要したり、眼部帯状疱疹から失明に至るなど、重症化する例もしばしば経験されます。

5|免疫抑制の副作用のまとめ
5|免疫抑制の副作用のまとめ

治療前・治療中にやっておくこと



治療前・治療中にやっておくこと

感染症

備えの要点

ニューモシスチス肺炎

中等量以上のステロイド治療のときは、必ずST合剤の予防内服を。アレルギーがあればアトバコンへ。

結核

インターフェロン遊離試験でスクリーニング。LTBIならイソニアジドの予防内服を。

B型肝炎

まずHBs抗原・HBs抗体・HBc抗体でスクリーニング。該当すればHBV DNA定量とモニタリングへ。

細菌・ウイルス感染症

できる限りワクチンで予防する。発症したときは早期発見・早期治療を心がける。

ご家族・介護スタッフの方へ

ステロイドを使っている方は、発熱や咳、息切れが出たときに「様子を見る」時間をできるだけ短くしてください。免疫が抑えられていると、典型的な症状が出にくいまま一気に重症化することがあります。いつもと違う、と感じた時点でご連絡いただくのがいちばんの安全策です。

本記事は一般の方および医療・介護スタッフの皆さまに向けて、薬の考え方をわかりやすく整理したものです。予防内服やスクリーニングの具体的な適応・用量は、疾患・病状・併存症により異なります。掲載したフローは要点の簡略化であり、実際の運用は各ガイドラインの原本と主治医の判断に従ってください。服用中のお薬は自己判断で中止・減量しないでください。

 
 
 

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