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大動脈解離を見逃すな!

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 2024年9月1日
  • 読了時間: 2分

症例1


症例2


先月は当クリニックにて立て続けに2例大動脈解離を経験しましたので、緊急往診にて自宅で撮影したレントゲンを共有いたします。幸い2症例とも破裂前に受診、搬送し事なきを得て一安心しております。症例1の病歴は①胸を掴まれる様な感じ、②冷や汗、③喉の痛み、④嗄声で、少し非特異的ですが①疼痛の表現型が少しことなる②交感神経興奮③縦隔拡大が上方に及ぶ④反回神経麻痺?で総合すると解離を強く疑い、レントゲンに縦郭拡大あり=解離にて搬送となりました。症例2は、肩甲骨の痛みで典型的症状でありレントゲンにて下行大動脈の仮性瘤が見えます。


症例2はスナップで診断ですが、症例1は病歴とそうした目を持ちながらでないと見逃す可能性もあります。


大動脈解離を疑う3つの項目

1.突然発症の裂けるような痛み

→やはり痛みは最重要な診断病歴と考えます。

2.胸部単純レントゲンで縦隔陰影の拡大(縦隔拡大>8cm)

(臥位では上縦隔は生理的に増大してしまうので判別困難。その場合は気管分岐部レベルでの椎体中央と大動脈陰影左縁の距離が5cm以上であれば縦隔拡大陽性とする。気管分岐部レベルでは臥位でも立位でも椎体中央と大動脈陰影左縁の距離は変わらないため)

→縦隔拡大は見逃されることもあり、やはり往診初診時にコントロールの画像としてレントゲン撮るべきとも考えております。

3.左右の腕での血圧差が20mmHg以上

→これも腕頭動脈、鎖骨下動脈狭窄などで起こりがちですが左右差あり、心部症状ある場合はレントゲン評価行おうと考えます。


このうち2項目あれば陽性尤度比5.3。3項目満たせば陽性尤度比66です。2項目以上満たせば単純・造影CTで精査必要。1項目も満たさなければかなり否定的。

You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より


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2 comentaris


dummydummy12343
26 d’abr.

医師です。在宅の限られた医療資源の中で解離を特定している実績に畏敬の念を抱くとともに、大変勉強になりました。ありがとうございます。

大動脈解離を疑う3つの項目とその陽性尤度比に関する資料を見つけることができず困っていたのですが、せっかくなので元になっている論文を読みたいと思っております。論文名等ご教授頂けたりしないでしょうか。

M'agrada
賢一 内田
賢一 内田
26 d’abr.
En resposta a

dummydummy12343様 大変嬉しいコメント頂き、励みになります。


「大動脈解離を疑う3つの項目」について、根拠となる論文を共有させていただきます。

突然発症の裂けるような痛みが大動脈解離を示唆する点について

  • 根拠論文:Hagan PG, Nienaber CA, Isselbacher EM, et al."The International Registry of Acute Aortic Dissection (IRAD): new insights into an old disease."JAMA. 2000 Feb 16;283(7):897-903.[PMID: 10685714]

本IRAD(国際大動脈解離レジストリ)研究によれば、突然発症・裂けるような痛みは急性大動脈解離の最も重要な診断の手がかりであり、感度が非常に高い症状とされています。特に、胸背部痛が「突然・激烈・裂けるような性質」を呈している場合は、大動脈解離を強く疑うべきと示されています。

胸部単純レントゲンにおける縦隔拡大(>8cm)・椎体中央から大動脈陰影左縁までの距離>5cmという所見について

  • 根拠論文:Klompas M."Does this patient have an acute thoracic aortic dissection?"JAMA. 2002 Sep 18;288(11):1382-1388.[PMID: 12234250]

この論文では、胸部X線写真において、

  • 縦隔の最大横幅が8cmを超える場合

  • 気管分岐部レベルで椎体中央から大動脈陰影左縁までの距離が5cmを超える場合

これらを「縦隔拡大あり」と判断する指標としています。特に臥位撮影では全体の縦隔幅が生理的に拡大するため、気管分岐部レベルでの距離評価が有効とされています。

まとめますと、

  • 突然発症・裂けるような痛み → IRAD研究(Hagan et al., 2000)

  • 胸部レントゲンでの縦隔拡大評価 → Klompas論文(JAMA 2002)

が、それぞれの根拠となっております。 引き続き一生勉強、一生青春で患者様の為に努力してまいります。

内田賢一 拝

M'agrada

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