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在宅酸素療法を科学する11~増え続けるCOPD——疫学・医療費・患者負担のすべてを整理する

  • 1 日前
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増え続けるCOPD——疫学・医療費・患者負担のすべてを整理する


慢性閉塞性肺疾患(COPD)は世界的に患者数・死亡数が増加し続けており、日本でも深刻な社会課題となっています。本記事では、疫学データ・経済的負荷・患者・介護者への影響、そして最新の治療オプションまでを網羅的に解説します。

1 COPDとは何か

慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は、タバコ煙を主とする有害物質を長期にわたり吸入曝露することで生じる肺の炎症性疾患です。呼吸機能検査で正常に復することのない気流閉塞を示し、通常は進行性であることが特徴です。

 

2 COPDの疫学——世界と日本の現状

COPDの有病率は世界各国で10%前後と報告されています。WHOの報告では、1990年の世界の疾患別死亡順位で第6位だったCOPDは、2010年には第4位に上昇。今後も高齢化・高喫煙率により世界的な患者数・死亡者数の増加が見込まれており、2020年には死亡原因の第3位になると予測されています。

日本においても、NICE study(Nippon COPD epidemiology study)の結果から、日本人のCOPD罹患率は8.6%と推測されており、これは世界水準と同等です。厚生労働省の統計によると、COPDによる死亡者数は増加の一途をたどり、2013年(平成25年)の死亡者数は1万6,443人に達しています。死因順位は2009年まで第10位でしたが、2010年以降は第9位に上昇しています。

▼ わが国におけるCOPDによる死亡数・死亡率(一部抜粋)
▼ わが国におけるCOPDによる死亡数・死亡率(一部抜粋)

年度

総死亡数(人)

死亡順位

COPD死亡数(人)

死亡率*

平成10(1998)

936,484

11

11,974

9.6%

平成17(2005)

1,083,796

10

14,416

11.4%

平成22(2010)

1,197,012

9

16,293

12.9%

平成25(2013)

1,268,436

9

16,443

13.1%

*:人口10万対 

3 経済的負荷——医療費と生産性損失

国民医療費の統計によると、COPDの医療費は年間1,400億円を超え、その約5割が入院医療費です。COPDの急性増悪による1回の入院にかかる医療費は平均69万円。病期が進むにつれて高額になる傾向があり、stage Ⅰで約56万円、stage Ⅱで約67万円、stage Ⅲでは約70万円と試算されています。

NICE studyの結果を用いて日本のCOPD医療費を推計すると、直接経費6,451億円、間接経費1,604億円、総医療費は8,055億円と推測されています。

経済損失の試算(日本医療政策機構による)


COPD患者1人当たりの生産性損失:年間47万円/医療費支出:月間6万円(年72万円)/1人当たりのコスト合計:年間119万円。調査対象COPD患者233人のうち、就業者は112人(48.0%)にとどまった。

 

4 患者負担・介護者負担

わが国で実施された実態調査によると、COPD患者の70%が日常生活において何らかの制限を受けています。制限を受けている活動の内訳は以下の通りです。

スポーツ・レクリエーション

 

50.0%

普通の運動

 

48.6%

睡眠

 

41.0%

社会活動

 

35.1%

家事・家庭生活

 

約30%

また、30%以上の患者が咳嗽・喀痰・息切れの臨床症状を毎日有しており、過去1年間に約20%が入院・救急外来・予定外受診を経験しています。

在宅酸素療法(HOT)・非侵襲的陽圧換気(NPPV)療法を受ける患者の介護者の平均年齢は64.7±12.7歳で、65歳以上が58.7%を占め、71〜80歳代が最も多い状況です。HOT患者の平均介護期間は4.4±4.1年とされており、老々介護の実態が明らかになっています。

コ ラ ム

肺動脈性肺高血圧症を伴う重症COPDへの


一酸化窒素(NO)投与の有効性

酸素投与のみを対照として、一酸化窒素(NO)吸入を酸素に加えて実施した試験では、3カ月間で安静時の肺循環系の改善効果が得られました。肺動脈圧・肺血管抵抗の明確な改善が認められています。

現状では、新生児の肺高血圧を伴う低酸素性呼吸不全や心臓手術の周術期の重症肺高血圧症に対して、人工呼吸装置に接続するNO吸入管理システム(INOmax®:アイノフローDS®、アイノベント® など)が導入されています。

最近の研究では、パルス化したNO吸入をCOPD患者に短時間行うことで、肺血管容量が7%増加し、酸素飽和度の低下なく自覚症状が改善することが報告されており、酸素療法への短時間NO吸入の上乗せが臨床的に有効な可能性があります。

 

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