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誤嚥性肺炎を科学する57~摂食嚥下機能によい影響をもたらす薬剤もある。 ACE阻害薬やドパミン産生亢進薬は,嚥下反射惹起・喀出の感度にかかわる サブスタンスPの濃度を高める。

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嚥下ケアブログ|3つの工夫シリーズ

第8章③薬剤

第8章 ③ 薬剤

よい影響をもたらす可能性のある薬

ACE

阻害薬やドパミン産生亢進薬は,嚥下反射惹起・喀出の感度にかかわる サブスタンスPの濃度を高める可能性があります

📖 摂食嚥下機能💊 薬剤の副作用・有益効果🫁 誤嚥性肺炎予防

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摂食嚥下機能によい影響をもたらす薬剤もある。 ACE阻害薬やドパミン産生亢進薬は,嚥下反射惹起・喀出の感度にかかわる サブスタンスPの濃度を高める。

薬が開発される主目的は,対象となる疾病を治療したり,対象となる状態を改善することにあります。 しかしほとんどの薬剤は主目的以外の作用を示し,それを副作用と総称します。 前回は摂食嚥下機能に悪影響を及ぼす可能性のある薬剤について述べましたが, 薬剤の副作用には悪いものだけではなく,よい影響をもたらす可能性がある薬もあります。 この項では副作用が摂食嚥下機能にとってよい面をもつ薬剤を紹介します。

サブスタンスPの役割

誤嚥性肺炎の予防や発症に関連する神経伝達物質として, サブスタンスPというペプチド(アミノ酸が連結した物質)が注目されています。 サブスタンスPは中枢神経・末梢神経の終末に存在していて,感覚神経の感度調整に役立っています。

摂食嚥下に関連することとしては,咽頭や喉頭・気道粘膜におけるサブスタンスPが重要です。

咽頭のサブスタンスP

嚥下反射惹起の感度と深く関わっています

サブスタンスP

中枢神経・末梢神経の終末に存在感覚神経の感度調整に関与

喉頭・気道のサブスタンスP

誤嚥したものの喀出(むせ)の感度と関わっています

ACE阻害薬

高血圧治療薬の一種にACE阻害薬(アンギオテンシン変換酵素阻害薬)というものがあります。 これは血管収縮抑制効果が主目的の薬ですが, サブスタンスPを増加させるという副作用をもっています。

ACE阻害薬のポイント

ACE阻害薬の副作用の1つとして,空咳が増えることが知られています。これは喉頭・気道でのサブスタンスP濃度が高くなり,咳嗽反射感度が高くなった結果であると考えられます。

人を対象としたいくつかの研究で,ACE阻害薬を投与していると肺炎発症が予防できたというエビデンスが報告されています。

臨床上のヒント

誤嚥性肺炎を繰り返している方で何らかの降圧剤をすでに服用中であれば,ACE阻害薬へ変更するのは1つの選択肢かもしれません。

ドパミン産生亢進薬

ドパミン作動性神経の刺激でサブスタンスP濃度が高まりやすいことがわかっています。

パーキンソン病の治療薬として用いられることがあるアマンタジン(シンメトレル®)は 神経終末でドパミン放出を助長しますので,結果的に末梢(咽頭・喉頭・気管)での サブスタンスP濃度が高くなると考えられています。

葉酸補充も重要

葉酸欠乏はドパミン産生減少の原因になりますので,葉酸欠乏があれば補充を検討します。

その他の薬剤

誤嚥予防や摂食嚥下運動にとってよい影響がある薬剤は,前述のほかにいくつか報告されています。

表8-3|誤嚥予防や摂食嚥下運動によい影響があるかもしれない薬剤

ACE阻害薬

カプサイシン

アマンタジン(シンメトレル®)

メンソール

シロスタゾール(プレタール®)

黒コショウ

半夏厚朴湯

重要な考え方

薬剤変更や休薬だけで誤嚥性肺炎が必ずしも予防できるものではないという 考えをもつことが大切です。「ほかに何か工夫ができるとしたら薬剤調整だ」というくらいの 理解でよいと思います。多くの疾病は薬の選択が治療の主体ですが,誤嚥性肺炎の予防と治療においては, 薬の選択は1つのオプションにすぎないということです。

COLUMN

摂食嚥下機能評価

飲み込む機能を評価することは,食支援を展開するうえで,ならびに,誤嚥性肺炎の予防や治療を 行ううえでも,とても重要です。最も正確な機能評価法は放射線を用いて行う嚥下造影検査ですが, 必ずしも嚥下造影検査を行わないといけないわけではありません。 ベッドサイドで行う簡易評価法があります。

「水飲みテスト」は,大がかりな準備なくできる簡易評価法として有名です。3 mLの水を飲んでもらい, 嚥下運動が惹起されるか,むせがあるか,呼吸状態が変化するか,声の変化があるか,などを観察します。

世界的に最も精度が高いといわれている水飲みテストは,V–VST(volume-viscosity swallow test) というテストです。ネクター状→水→プリン状の3段階と,飲み込む量を3段階に調整して安全に飲み込めていない サインがあるか,効果的に飲み込めていないサインがあるかを評価します。

不顕性誤嚥の評価法

「摂食嚥下機能を評価すること」と「不顕性誤嚥(むせのない誤嚥)を評価すること」は,少し意味合いが異なります。 不顕性誤嚥の評価は誤嚥性肺炎発症リスクに直結するものであり,摂食嚥下障害の評価は 食支援の進め方に直結するものであると考えられます。

不顕性誤嚥の評価法は,現在のところ2つ有力な検査法があります。

① S-SPT(simple swallowing provocation test:簡易嚥下誘発試験)とても細いチューブを鼻から咽頭に挿入し,チューブから水をわずかに注入,嚥下運動が惹起されるかを見るものです。

② 水飲みテストとクエン酸咳テストを組み合わせる方法水飲みテストで異常を呈しかつ1%クエン酸生食水吸入で咳誘発が遅延している場合, 不顕性誤嚥が高度であると判定します。

参考文献:Clavé P, et al. Accuracy of the volume-viscosity swallow test for clinical screening of oropharyngeal dysphagia and aspiration. Clinical Nutrition 27(6): 806–815, 2008. / Teramoto S, et al. Chest 116(1): 17–21, 1999. / Wakasugi Y, et al. Dysphagia 23(4): 364–370, 2008.

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