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誤嚥性肺炎を科学する45~ケア提供者の取り組み次第で患者さんの栄養状態が左右されるのですから、専門職として誇りをもったケアを提供しましょう。

  • 4 時間前
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  • 寝たきり高齢者は活動量がきわめて落ちているため、呼吸・嚥下にかかわる筋や腰背部・体幹筋への重力負荷が重要である

  • 日中は起床してもらい、嗜好に合わせて工夫した高タンパク質食の提供を検討してみよう

寝たきりですべてのADLに介助を要する場合、リハ栄養の考え方を使わなければ単に寝かせきりのケアになってしまいます。関節は拘縮し、日内リズムも悪くなり、摂食量が維持できなくなります。ケア提供者の取り組み次第で患者さんの栄養状態が左右されるのですから、専門職として誇りをもったケアを提供しましょう。

🛏 ケース①:誤嚥性肺炎予防のためのリハ栄養プログラム

📋 事例

72歳のTさん(男性)。10年前にくも膜下出血を患って以来、寝たきり状態です。摂食嚥下障害もあり、現在は総義歯を装着し、ミキサー食を摂取しています。70代になってから誤嚥性肺炎を2回発症。体重は直近1年で3kg減少しています。


プラン 1

プラン 2

運動

日中の離床(図5-16)

  • リクライニング車いすを活用して日中は居間で過ごす

  • リクライニング角度はできるだけ大きく上げて調整する

拘縮予防の可動域訓練

  • 股関節・膝関節・肩関節は無理のない範囲で介助により動かす

通所サービス利用

  • 外出することで活動量が増す

  • 他者と接することで精神運動も活発になる

食べるリハ

  • 咀嚼や舌・口唇の運動機能が低下しないよう嚥下体操や噛む訓練など安全に食べる口づくり

  • 口腔ケアに注力して衛生状態を保つ

栄養

嚥下調整食(図5-17)

  • 料理をミキサーにかけただけのものは離水(水分が分離)しやすく、離水した水分によって誤嚥が増える可能性あり

  • とろみ剤(増粘剤)やゲル化剤で離水を抑える

水分管理

  • 全介助の方は自分から水分摂取することがないため、脱水にならないようケア提供者が水分摂取量を把握する

  • 摂食嚥下障害があるときは、水分にはとろみをつけるか、ゼリー化する

リクライニング車いすの活用(図5-16)

日中は極力離床し、リクライニング角度を上げて過ごすことで呼吸筋・体幹筋に重力負荷がかかります。

日中は極力離床する

🥣

嚥下調整食(図5-17)

ミキサー食はそのままでは離水しやすく誤嚥リスクが上がります。とろみ剤・ゲル化剤で離水を防ぐ工夫が必須です。

ミキサー食は離水を抑える工夫が必要

誤嚥性肺炎 治療中のケース(認知症終末期)

🏥 ケース②:誤嚥性肺炎治療中のリハ栄養プログラム

📋 事例

88歳のAさん(女性)。認知症終末期で自ら発話・発声することはほとんどありません。3年前から寝たきりになり、介護施設に入所中です。今回は誤嚥性肺炎で緊急入院。もともとゼリー食を無歯顎・義歯なしで摂食していました。


プラン 1

プラン 2

運動

日中の起床・離床(図5-18)

  • 全介助であっても上体を起こして過ごすことは可能

  • 臥床していると唾液さえ飲み込みづらくなる

ペダル回転運動(図5-19)

  • 関節の拘縮予防・血行循環改善に下肢のペダル漕ぎは有用

  • 安全に配慮して受動的運動を取り入れる

座位保持訓練

  • 自力で端座位ができなくても介助下に座位をとることは起立筋・嚥下筋の耐久性向上につながる

食べるリハ

  • 口腔ケアを強化し、機能と衛生状態を保つ

栄養

嚥下調整食

  • ゼリー状またはジュレ状の形態に調整した食事を提供する

  • 栄養量確保のために高カロリー化を工夫する

禁食を避けるために

  • もともと食べられていた方なので、放置しなければ摂食できる

  • 体調によっては、ゼリー状・ジュレ状の栄養補助食品だけでも試してみる

🛏️

日中の起床・離床(図5-18)

全介助であっても上体を起こすことで唾液の嚥下が容易になり、体幹・嚥下筋の耐久性向上にもつながります。

積極的に起床し、耐久性を向上させる

🚴

ペダル回転運動(図5-19)

ベッド上でも行える受動的な下肢運動。関節の拘縮予防・血行循環改善に有用です。

関節の拘縮予防・血行循環改善に有用

💡 在宅・施設ケアで押さえたいポイント

⬆️

「臥床」が誤嚥を増やす

ずっと横になっていると唾液さえ飲み込みにくくなり、不顕性誤嚥が増加します。日中は少なくとも上体を起こし、可能なら離床することが誤嚥性肺炎予防の第一歩です。

💧

ミキサー食の「離水」に要注意

単純にミキサーにかけた食事は水分が分離(離水)しやすく、さらさらした水分が気管に流れ込む誤嚥リスクを高めます。とろみ剤・ゲル化剤で必ず離水対策をしましょう。

🚰

全介助の方の水分管理はケア者の責任

自分で水を飲めない方は、周囲が意識して水分を提供しなければ脱水になります。嚥下障害がある場合はとろみ・ゼリー化を忘れず、摂取量の把握を習慣づけましょう。

🦷

口腔ケアは「食べるリハ」の基盤

禁食中でも口腔ケアは実施できます。口腔内の衛生を保つことで誤嚥性肺炎の重症化リスクが下がり、早期の経口摂取再開への道が開けます。

COLUMN

🧠 摂食嚥下運動のメカニズム

摂食嚥下運動(食べたり飲み込むために必要な運動)は、ほかの運動・動作と同様に中枢神経からの運動刺激によって筋肉が収縮・弛緩することで起こります。摂食嚥下にかかわる筋を支配・調節する神経のどこかが障害されると、摂食嚥下障害を引き起こします。

また、神経の障害だけでなく、筋肉自体のパフォーマンス力不足によっても摂食嚥下障害は起こりえます。筋肉を回復させたり筋力をつけたりするような栄養ケアが、摂食嚥下障害の予防や治療に効果的であることを忘れてはいけません。

COLUMN

⚠️ リフィーディング症候群に注意

入院前の数日間または数週間に極端な体重減少や摂食量低下がみられた場合は、リフィーディング症候群発症の懸念があります。

リフィーディング症候群とは、高度低栄養状態で急速栄養補給をすることで引き起こされる致命傷になりえる代謝反応です。

⚡ ハイリスクの条件

10%以上の体重減少、5日以上の極端な摂食量不足、痩せがある患者さんは特に注意が必要です。

📉 不足しやすい栄養素

リン・カリウム・マグネシウムなどの微量元素・電解質とビタミンB₁が特に欠乏しやすく、この疾病を引き起こす元となります。

🔼 段階的に増やす

1週間かけて目標カロリーへ段階的に増やしていく慎重さが求められます。

🩺 入院時からモニタリング

体重・摂食量でリスクを判断し、入院時からリン・カリウム・マグネシウムのモニタリングとビタミンB₁の十分な補充を行いましょう。

📝 まとめ

  • 寝たきり高齢者でも日中の離床・起床は必須。リクライニング車いすや介助座位を積極的に活用する

  • ミキサー食は離水対策(とろみ剤・ゲル化剤)を徹底し、水分にもとろみ・ゼリー化を行う

  • 全介助の方の水分摂取量はケア提供者が責任をもって把握・管理する

  • 口腔ケアと食べるリハを継続し、禁食期間を最小限にする

  • 摂食嚥下障害の根本には筋力低下があり、栄養ケアで筋力を回復させることが治療につながる

  • 高度低栄養患者への急速栄養補給はリフィーディング症候群のリスクがあるため、段階的な増量と電解質・ビタミンB₁のモニタリングが必須

※ 本記事は医療従事者・患者家族向けの情報提供を目的としています。個別のケア方針については担当医・管理栄養士・リハビリスタッフにご相談ください。

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