看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する43~エコーで見るリンパ浮腫③ ― 皮下組織の変化と「敷石様像
- 賢一 内田
- 10月13日
- 読了時間: 3分

リンパ浮腫では、皮下組織の構造変化が進行とともに現れます。エコー(超音波)を用いると、この**皮下層の「見えないむくみ」を視覚的にとらえることができます。特に特徴的なのが、浅筋膜の変化と「敷石様像(paving stone appearance)」**です。
🔍リンパ浮腫皮下組織の特徴的エコー像
リンパ浮腫の皮下組織では、以下の変化がみられます。
浅筋膜の消失または非連続化
敷石様像の出現
この「敷石様像」とは、脂肪組織(白く高エコー)を無エコーの組織間液(黒い部分)が囲むように分布し、まるで敷き詰められた石畳のように見える像です。これはリンパ液貯留と線維化進行を反映する重要な所見であり、病期分類の客観的指標として有効です。
🧭 病期別にみた皮下エコー所見の特徴(下肢リンパ浮腫の例)
病期(ISL分類) | エコー所見の特徴 | 主な画像特徴 |
ISL 0期・I期 | 浅筋膜が明瞭で連続。敷石様像なし。健常皮下組織との違いはわずか。 | 均一な皮下層、浅筋膜が白く連続。 |
ISL II期〜II期後期 | 浅筋膜の連続性が部分的に途切れ、非連続所見が出現。敷石様像はまだ見られない。 | 浅筋膜がうっすら描出、不均一化。 |
ISL II期後期〜III期 | 浅筋膜が消失し、脂肪沈着を示す敷石様像が明瞭に出現。線維化・脂肪変性を示唆。 | 白黒が入り混じる敷石模様。 |
💡 ポイント:エコー上の浅筋膜の「連続性」と「敷石様像の有無」で、病期を推定できます。また、浮腫がどこから始まり、どこまで進行しているかを評価することで、圧迫やドレナージの重点部位の調整も可能になります。
⚙️ エコー装置の分解能にも注意
リンパ浮腫観察には**高周波リニアプローブ(10〜18MHz)が基本ですが、エコー装置の分解能(解像度)**によって、観察できる情報量が大きく変わります。
高分解能機(例:0.8mm解像度)では、敷石様像や浅筋膜の断裂が鮮明に描出。
低分解能機(例:2.0mm解像度)では、同じ部位でも敷石像が消失して見えることがあります。
同じ患者の患肢でも、装置によっては病期を過小評価してしまう可能性があるため、機器の性能を理解し、観察条件を統一することが重要です。
📷 健常組織との比較イメージ(例)
状態 | 浅筋膜 | エコー像の特徴 |
健常皮下組織 | 明瞭・連続 | 均一な白線、浅筋膜の滑らかな連続性 |
リンパ浮腫初期 | やや不明瞭 | 軽度の非連続性、黒い帯状エコー出現 |
進行期 | 消失 | 敷石様像(白い脂肪を黒い液が囲む) |
🩶まとめ ― 「敷石様像」は浮腫の深さを映す鏡
エコーによる皮下観察は、リンパ浮腫の「深さ」を評価する有力な手段です。浅筋膜の変化や敷石様像の出現を確認することで、視診・触診だけでは分からない進行度や組織変化を客観的に把握できます。
また、経時的な観察によって治療効果の判定・セルフケア支援にも活用でき、エコーはリンパ浮腫管理の「第三の目」といえる存在です。




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