攻めの栄養療法を科学する44~消化管の状態と選択できる経腸栄養剤の種類
- 賢一 内田
- 19 時間前
- 読了時間: 3分

―「どこまで消化・吸収できるか」で考える―
経腸栄養剤を選択する際に最も有用なのが、消化・吸収機能に応じた「窒素源(たんぱく質の形)」による分類です。これは「消化管がどこまで働いているか」を評価し、最小の負担で最大の栄養効果を得るための考え方です。
① 成分栄養剤|消化・吸収機能が高度に低下している場合
成分栄養剤は、窒素源が結晶アミノ酸のみで構成され、化学的に明確な成分からなることが特徴です。
特徴
すべての成分が上部消化管で吸収され、残渣がほとんど生じない
消化機能低下・吸収障害のある病態で有用
注意点
浸透圧が高く、浸透圧性下痢を起こしやすい
投与速度の調整が必須
改善しない場合は溶解水量を増やして浸透圧を下げる
脂質含有量が極めて少なく、長期単独使用では必須脂肪酸欠乏に注意
必要に応じて脂肪乳剤の経静脈投与を検討
アミノ酸特有のにおい・苦味があり、フレーバーによるマスキングが必要なことが多い
主な適応
クローン病急性期・再燃期
重症膵炎(早期経腸栄養)
短腸症候群
吸収不良症候群(膵外分泌不全など)
👉 現在市販されているのはエレンタール/エレンタールP/ヘパンED(すべて医薬品)
② 消化態栄養剤|吸収効率を高めたい場合
消化態栄養剤は、窒素源として**アミノ酸に加え、ジペプチド・トリペプチド(低分子ペプチド)**を含むことが特徴です。
特徴
ペプチドは独自の吸収経路を持ち、アミノ酸より吸収効率が良いとされる
成分栄養剤より浸透圧が低く、下痢を起こしにくい
主な製品
ツインラインNF(※医薬品)
ペプチーノ
ペプタメンAF
ペプタメンスタンダード
ハイネイーゲル(計10品目・5種類)
※ ペプチーノは脂質を含まない点が特徴
主な適応
成分栄養と同様の病態
消化管術後障害
放射線性腸炎
炎症性腸疾患
たんぱくアレルギー など
③ 半消化態栄養剤|「消化管がある程度使える」場合の第一選択
現在、市販されている経腸栄養剤の大多数が半消化態栄養剤です。
特徴
窒素源は主にたんぱく質
ほぼすべての栄養素を含有
選択肢が非常に多く、調整しやすい
医薬品として使用できるもの
イノラス
エネーボ
エンシュアH
エンシュア・リキッド
ラコールNF
ラコールNF半固形
(19品目・6種類)
食品扱いの半消化態栄養剤
エネルギー密度:0.46~4.0 kcal/mL
たんぱく質量:0.4~9.2 g/100 kcal
食物繊維量:0~2.4 g/100 kcal
👉 症例ごとにきめ細かな調整が可能
微量栄養素の設計
多くの製品は1200 kcal/日で日本人の食事摂取基準を充足
近年は👉 800~1000 kcal/日でもビタミン・ミネラルが不足しにくい製品も増えている
消化管の状態と経腸栄養剤の選び方(まとめ)
消化管の状態 | 推奨される栄養剤 |
消化・吸収が著しく低下 | 成分栄養剤 |
吸収効率を高めたい | 消化態栄養剤 |
ある程度の消化管機能あり | 半消化態栄養剤(第一選択) |
※ これは窒素源の違いによる分類であり、糖質(主にデキストリン)・脂質はいずれも未消化の形で含まれ、吸収のしやすさの差は主にたんぱく質形態によるものです。
まとめ|「腸を使えるなら、使う」が基本
経腸栄養剤は消化管機能に応じて選ぶ
「重症=すぐ成分栄養」ではなく、段階的評価が重要
適切な選択が、下痢・合併症を防ぎ、栄養治療効果を最大化する
攻めの栄養療法とは、消化管を最大限に活かす栄養戦略です。
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