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攻めの栄養療法を科学する⑳~サルコペニアの摂食嚥下障害(Sarcopenic dysphagia: SD)とは

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 9 時間前
  • 読了時間: 4分


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― 「医原性サルコペニア」を起こさないことが最大の予防 ―

■ ここがポイント

  • サルコペニアの摂食嚥下障害(SD)とは、全身と嚥下関連筋群のサルコペニアによって生じる摂食嚥下障害

  • 医原性サルコペニアは、医療行為によって新たに生じるサルコペニアで、SDの誘因になりうる

  • SDの治療法は確立されていないが、リハビリテーション栄養(高エネルギー・高たんぱく質を含む“攻めの栄養管理”+運動介入)が有用な可能性がある

■ はじめに

サルコペニアの摂食嚥下障害(Sarcopenic dysphagia: SD)とは、全身および嚥下に関わる筋群のサルコペニアが原因となって生じる嚥下障害です¹)。

SDの背景には、

  • 加齢に伴う 一次性サルコペニア

  • 活動低下、低栄養、疾患(侵襲・悪液質)などによる 二次性サルコペニア

が含まれます¹)。

そしてSDを語る上で特に重要なのが、治療の過程で生じる「医原性サルコペニア」を発症させないことです。医原性サルコペニアは、SDを誘発・増悪させる要因になり得るため、予防が極めて重要です。

SDの治療はまだ確立されていませんが、嚥下関連筋群へのレジスタンストレーニングと、体重増加を目指すリハビリテーション栄養の介入が有用である可能性が示唆されています。栄養管理としては、**高エネルギー・高たんぱく質の“攻めの栄養療法”**が鍵になります。

■ 医原性サルコペニアとは

医原性サルコペニアとは、もともとサルコペニアを有していない患者が、治療のための医療行為によって新たに発症するサルコペニアです。

発症要因として、主に以下の3つが挙げられます²)。

  1. 不適切な栄養管理

  2. 不必要なベッド上安静

  3. 医原性疾患(副作用・感染など)

1)不適切な栄養管理:禁食の長期化が「筋肉」を削る

臨床現場では、長期禁食や誤嚥性肺炎後に、摂食嚥下機能評価や経管栄養の検討が十分に行われないまま、水分・電解質輸液のみで長期間管理されてしまうケースが見られます。

その結果として、低栄養 → 体重減少 → 骨格筋量減少 が進行し、サルコペニアに至ります。つまり、不適切な栄養管理は避けるべきです。

現場で意識したいポイント

  • 禁食中でも、経口摂取開始の可否を随時検討する

  • 摂取可能なら、少量からでも経口摂取を早期に開始する

  • 経口だけで必要量が満たせない場合は、経管栄養や静脈栄養の併用を検討する

  • 禁食が長期化するなら、水電解質輸液だけでなく、アミノ酸製剤や脂肪乳剤の検討も必要になる

2)不必要なベッド上安静:入院=不活動のリスク

不必要なベッド上安静により活動量が低下すると、筋萎縮や廃用症候群を引き起こします。

不活動による筋萎縮は、筋たんぱく質合成能の低下筋たんぱく質分解の亢進によって生じ、サルコペニアを進行させる可能性があります。

現場で意識したいポイント

  • 不必要な安静は避け、早期からリハビリを開始する

  • 「この病態はリハが出にくい」ケースでも、不活動を避ける視点をチームで共有する

  • 入院そのものが“非日常”で、活動量が下がりやすいことを前提にする

3)医原性疾患:副作用・感染が筋肉を減らす

医原性疾患としては、例えば以下が挙げられます。

  • 薬剤副作用による食欲低下・活動量低下

  • カテーテル感染などによる菌血症・敗血症→ 異化亢進により骨格筋量が低下

この領域では、単独職種では対応が難しく、多職種連携が鍵になります。早期発見・早期介入のためには、現場での気づきと情報共有が重要です。

■ まとめ:SDを防ぐ最大の鍵は「医原性サルコペニアを起こさないこと」

医原性サルコペニアはSDを併発しやすく、一度進行すると食べる力・動く力・回復力を大きく損ないます。

だからこそ、

  • 発症要因(栄養・活動・医原性疾患)を把握し

  • サルコペニア評価を適宜行い

  • リスクのある患者を早期に拾い上げ

  • 多職種で迅速に介入する

この流れを、日常診療の中に組み込むことが重要です。

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