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在宅酸素療法を科学する8~低酸素を生じる病態と酸素療法の有用性

  • 3 日前
  • 読了時間: 4分


低酸素を生じる病態と酸素療法の有用性

COPDにおける肺機能の変化と労作時低酸素血症の予測

#COPD#低酸素血症#酸素療法#深吸気量(IC)#動的過膨張#FEV₁#6分間歩行試験#GOLD分類#呼吸器疾患#肺高血圧

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、安静時だけでなく労作時における肺機能の動的変化が重要な病態として注目されています。本稿では、深吸気量(IC)の減少と動的過膨張の概念、そして労作時低酸素血症の予測可能性について最新のエビデンスをもとに解説します。

1

慢性閉塞性肺疾患における深吸気量(IC)の減少

長期酸素療法が1秒量(FEV₁)の低下を遅らせる可能性を支持するデータは、現時点では認められていません。また、FEV₁の値が長期酸素療法の適応を選択する指標として有用であるというエビデンスも確立されていません。COPDにおいては、肺高血圧や肺性心、多血症や貧血、慢性心不全、脳卒中や心筋梗塞などの合併症が評価を複雑にしています。

🔑 重要概念:動的過膨張(Dynamic Hyperinflation)


COPDの閉塞性障害においては、運動時の肺機能変動が動的過膨張として問題になります。この概念は、労作時における息切れや運動耐容能の低下を理解する上で非常に重要です。

中等症COPD 72例(全員男性、%FEV₁ 45±13.3%)を対象に6分間歩行試験を実施し、前後で肺機能検査を行った研究では、運動終了時のICは減少傾向を示しました。その減少の度合い(ΔIC)はBorgスケールの悪化と有意な相関を示しました(r = −0.49, p = 0.00001)。


72

対象患者数


(全員男性・中等症COPD)

−0.49

ΔICとBorgスケール変化の


相関係数(r値)

36±9%

重症COPD 5例の


%FEV₁(平均±SD)

特に重症COPD 5例(%FEV₁ 36±9%)においては、ICは運動後に有意に減少していました。以下の表は、プレチスモグラフによる6分間歩行試験前後のTLCとICの変化を示しています。

表1 ● 重症COPD(%FEV₁ = 36±9%)5例のプレチスモグラフによる6分間歩行試験前後でのTLCとICの変化

No.

TLC・前(L)

TLC・後(L)

IC・前(L)

IC・後(L)

1

7.12

7.04

2.09

1.60

2

6.77

6.60

1.51

1.24

3

7.96

7.99

2.07

1.84

4

7.23

7.33

1.56

1.43

5

8.42

8.36

1.62

1.14

mean±SD

7.5±0.67

7.46±0.71

1.77±0.29

1.45±0.28*

* : p < 0.05  (文献1より引用)

より多くの対象での検討から、正常者と比べてCOPDでは分時換気量の増加に伴い、ICの減少が急速に生じることが確認されています。また、肺拡散能の障害の程度によって分けると、拡散能が低下しているほうが、労作時の息切れがより強く過膨張の度合いが高度で、早期に呼吸に制限が加わっていました。

2

労作時の低酸素血症の予測

COPDの肺機能と労作時低酸素血症の関係について、van Gastelらの研究では、GOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)の肺機能分類Ⅰ/ⅡとⅢ/Ⅳの間で、労作時の低酸素血症の低下に有意差が認められました。


図4 ● 6分間歩行試験での労作時低酸素血症の合併率(GOLD分類別)

〜5%

GOLD Ⅰ

〜10%

GOLD Ⅱ

〜25%

GOLD Ⅲ

〜28%

GOLD Ⅳ

(文献3より引用・概略)GOLD Ⅲ/Ⅳでは労作時低酸素血症の発生率が顕著に増加


診断的中率:


%FEV₁の閾値を50%未満とした時の労作時低酸素血症の陽性的中率は0.83であり、閾値を80%以上とした時には陰性的中率は1.0となりました。

また、運動能として引用されているように、運動時の短時間の酸素療法は、間接的に動的過膨張への改善効果が生じる可能性があります。ただし、その効果は期待できるほど明確なものではないようです。

これまでのその他の報告も含めて、閉塞性障害の重症度が長期酸素療法の効果に対する独立した予測因子であるとの可能性は現時点では指摘されていません。

本稿のまとめ

  • 長期酸素療法がFEV₁の低下を遅らせるというエビデンスは現時点では存在しない

  • COPDでは運動時に動的過膨張が生じ、ICが急速に低下する

  • ΔICとBorgスケール変化の間には有意な負の相関がある(r = −0.49)

  • 重症COPD(%FEV₁ 36±9%)ではICは運動後に有意に減少(p < 0.05)

  • 肺拡散能が低下したCOPD患者は早期から動的過膨張と呼吸制限が強い

  • GOLD Ⅰ/ⅡとⅢ/Ⅳ間で労作時低酸素血症の発生率に有意差あり

  • %FEV₁ < 50%の閾値での陽性的中率は0.83、≥80%での陰性的中率は1.0

  • 閉塞性障害の重症度は長期酸素療法効果の独立した予測因子とはいえない

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