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在宅医療における認知症について35~徹底的に減薬 ― BPSD悪化を防ぐために

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 9月23日
  • 読了時間: 3分

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厚生労働省の「安心と希望の介護ビジョン」検討会で、有識者から BPSD(認知症の行動・心理症状)悪化の主な要因 として以下の3つが挙げられました。

  1. 薬剤(37.7%)

  2. 身体合併症(23.0%)

  3. 家族・介護環境(10.7%)

つまり、最も大きな悪化要因は 薬剤=処方薬 です。薬は医師の処方がなければ手に入りませんから、言い換えれば「医者が悪い」と言わざるを得ない現実があります。アルコールの影響を除外したあとは、まず 減薬を最優先 に検討すべきなのです。

BPSDを悪化させやすい薬

精神症状を悪化させる代表的な薬は、いわゆる「薬剤起因性老年症候群」を引き起こす薬です。

  • 第一世代抗ヒスタミン薬

  • 三環系抗うつ薬、パロキセチン

  • 抗コリン作用を持つパーキンソン病治療薬

  • 抗コリン作用を持つ過活動膀胱治療薬

  • H2遮断薬

  • ベンゾジアゼピン系睡眠薬

これらはいずれも 認知機能低下やせん妄を誘発 し、結果的にBPSDを悪化させる要因になります。真っ先に見直すべき薬です。

抗認知症薬の副作用にも注意

意外かもしれませんが、抗認知症薬そのものも精神症状を悪化させることがあります。

添付文書には、以下の副作用が明記されています。

  • 興奮、不穏、不眠、易怒性

  • 幻覚、攻撃性、せん妄、妄想

  • 激越、錯乱、抑うつ など

特にリバスチグミンでは「幻覚や錯乱が出たら中止すべき」と明記されており、メマンチンでも同様です。

厚労省やPMDA(医薬品医療機器総合機構)に報告されている症例の中には、抗認知症薬を被疑薬とする 身体的暴行や殺人事件 まで含まれています。もちろん薬単独の作用とは限りませんが、少なくとも「薬がきっかけで凶暴化した可能性」を否定できません。

処方を見直す勇気

抗認知症薬を中止すると「効果が失われるのでは」と心配されるかもしれません。しかし実際の薬効はわずかであり、安全を優先して減薬・中止することが妥当なケースも少なくありません。

「薬が症状を悪化させていないか?」この視点を常に持ち、勇気をもって処方を見直すことが、患者さんと家族の安心につながります。

まとめ

  • BPSD悪化の最大要因は「薬剤」

  • 抗ヒスタミン薬・抗うつ薬・抗コリン薬・H2遮断薬・ベンゾ系は要注意

  • 抗認知症薬も副作用で精神症状を悪化させることがある

  • 安全のためには「徹底的に減薬」を優先する姿勢が重要

認知症ケアにおいては「薬を増やすより減らす」が原則です。

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