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在宅医療における認知症について35~アルコール依存症 ― 説得してもやめられないのはなぜか?

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 9月22日
  • 読了時間: 2分

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「お酒は体に悪い」と聞いたことがある方は多いでしょう。脳が萎縮する、認知症のリスクになる ― このあたりまでは一般的な知識として知られています。

しかし実は、断酒によって脳萎縮や認知機能の低下が回復する可能性があることは、あまり知られていません。これは、断酒を促すうえで大きな「希望」になり得る事実です。

アルコール依存症の診断基準(WHO)

「どうしてもやめられない」「問題を認めない」場合、アルコール依存症の可能性があります。WHOのガイドラインでは、以下の6項目のうち3つ以上に当てはまると依存症と診断されます。

  1. 強い飲酒欲求がある

  2. 飲む量や時間をコントロールできない

  3. 急に減酒・断酒すると離脱症状が出る

  4. 徐々に飲酒量が増えていく

  5. 生活の中心がお酒になる

  6. 悪影響を理解しても飲んでしまう

また、簡易スクリーニングとして CAGEテスト(4つの質問)も広く用いられています。

「酒好き」と「依存症」の違い

アルコール依存症はゆっくり進行する精神疾患であり、「酒好き」との境界線は曖昧です。しかし、医師に何度も説得されてもやめられない場合は病気としての依存症と考えたほうが安全です。

その場合、精神科(特に依存症専門医)に相談するのが適切です。本人が拒否しても、家族だけで保健所や精神保健福祉センターに相談できます。

認知症との合併例

診察の場で「やめます」と言っても、家に帰ると再飲酒してしまう ―これは 認知症とアルコール依存症の合併 が疑われます。

合併例では、断酒の必要性を理解する力や、理解した内容を記憶する力が落ちているため、家族や支援者が治療計画を工夫する必要があります。

具体的には:

  • 家中の酒を撤去する

  • 本人から金銭を預かる

  • 施設入所で物理的に飲酒を遮断する

など、**「飲めない環境をつくる」**ことが有効です。

また、断酒を継続していくうちに認知機能が改善し、実は認知症ではなく アルコール性健忘症候群 だったと判明することもあります。

まとめ

  • 説得してもやめられない場合、アルコール依存症の可能性が高い

  • 依存症は「酒好き」とは異なり、進行する精神疾患

  • 認知症と合併するケースも多く、早めの対応が必要

  • 断酒によって脳や認知機能が回復する可能性がある

「単なる嗜好」ではなく「病気」として捉え、早めに専門医や支援機関へ相談しましょう。

📺 在宅医療・認知症ケア・呼吸器疾患の解説をYouTubeで配信中!▶ 内田賢一 - YouTubeチャンネル

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