在宅医療における認知症について32~コリンエステラーゼ阻害薬のスイッチングと使い方の注意点
- 賢一 内田
- 1 日前
- 読了時間: 3分

スイッチングは有効か?
系統的レビューによると、最初に使ったコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンなど)が無効だった場合や副作用で中止した場合、別の薬剤にスイッチすると「効く」「副作用が少ない」可能性があります。ただし、数年経過して効果が切れてきたからスイッチするケースではエビデンスは乏しく、推奨されません。
スイッチングの実践的基準
副作用が原因 → 副作用が完全に消えるまで次の薬は開始しない
無効が原因 → 一夜で切り替えてよい
長期使用後の効果消失 → スイッチは推奨されない
よくある副作用と注意点
コリンエステラーゼ阻害薬は副交感神経を刺激するため、以下の副作用が出やすいです。
悪心・嘔吐
下痢
めまい
不眠
さらに、徐脈や失神にも注意が必要です。
RCTでは失神の発生率:実薬群3.4% vs プラセボ群1.9%(オッズ比1.9)
心筋梗塞・弁膜症・心筋症・不整脈(洞不全症候群や房室ブロック)を持つ人には投与しにくい
レビー小体型認知症では起立性低血圧が多く、徐脈性副作用が重なりやすい
メマンチンは安全?
「NMDA受容体拮抗薬であるメマンチンなら安心」とは言えません。フランスの薬剤監視データでは、ドネペジル・メマンチンともに徐脈やけいれんなどの重篤な副作用が報告されています。👉 徐脈性不整脈やてんかんの既往がある方には、どちらの薬も慎重投与が必要です。
効果判定はどうする?
「効いているかどうか」を本人や家族の印象だけで判断するのは危険です。多くのRCTでは全般的臨床症状評価(CIBIC-plusなど)でプラセボとの差がなかったためです。
現実的な方法は MMSE
ADAS-cogやSIBは本来の治験評価尺度ですが、実施に1時間かかり日常診療には不向き。
MMSEなら10分程度で済み、自然経過のデータも豊富。
アルツハイマー病・DLBともに、1年に3~4点低下が自然経過。
半年で4点以上の低下 → 薬効なし → 変更/中止検討
ほぼ変わらない → 継続可
改善 → 診断の再検討も必要だが、とりあえず継続で問題なし
実施のコツ
毎回同じ条件・同じ検査者で行う
主治医自身がやるのがベスト(家族が検査場面を見て納得しやすい)
半年に1回のMMSEで最小限の効果判定は可能
まとめ
スイッチング:副作用時や初期の無効例では選択肢になるが、長期経過後は非推奨
副作用:消化器症状+徐脈に注意。心疾患・自律神経障害例では要警戒
効果判定:印象ではなくMMSEを半年ごとに活用するのが現実的
漫然投与を避ける:効いていないのに続けることは本人の利益にならない📺 在宅医療・認知症ケア・呼吸器疾患の解説をYouTubeで配信中!▶ 内田賢一 - YouTubeチャンネル
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