在宅医療における認知症について30~メマンチンの検証 ― 本当に効くの?副作用は?
- 賢一 内田
- 2 日前
- 読了時間: 2分

1. メマンチンの効果(コクランレビューから)
プラセボ対照RCTを解析した大規模レビューでは、中等度~高度のアルツハイマー病で以下の改善が確認されました:
SIB(認知機能):+2.97点(100点満点)
ADCS-ADLsev(日常生活動作):+1.27点(54点満点)
NPI(精神症状・行動障害):+2.76点(144点満点)
CIBIC-plus(全般的臨床症状):+0.28点(7点満点)
👉 いずれも「統計的には有意」ですが、数字をみると改善幅はごく小さいことがわかります。
一方、軽度~中等度アルツハイマー病では:
認知機能(ADAS-cog):+0.99点(70点満点)
全般的症状(CIBIC-plus):+0.3点
日常生活動作・精神症状:有意差なし
👉 軽度例では臨床的に意味のある効果は検出できなかった、と結論づけられています。
2. 誤解しやすい点 ― 「精神症状への効果」は本当か?
レビューの中で、精神症状(例:焦燥)がやや少なかった(7.7% vs 9.5%)というデータがあります。しかしこれは**「副次的に観察された差」であり、精神症状改善を目的に設計された試験ではない**のです。
つまり、
「メマンチンは焦燥に効く」
「イライラがあるから第一選択はメマンチン」といった言い方は EBMの誤用 です。
👉 メマンチンに鎮静効果はなく、精神症状への有効性も科学的根拠はない ことを押さえておく必要があります。
3. 有害事象(副作用)
6本のRCTを統合した解析では、頻度の高い副作用は以下の通りでした。
焦燥:7.5%(プラセボ12.0%)
転倒:6.8%(プラセボ7.1%)
めまい:6.3%(プラセボ5.7%)
外傷:6.0%(プラセボ7.2%)
頭痛:5.2%(プラセボ3.7%)
👉 実薬群とプラセボ群で大きな差はなく、「副作用が病状悪化と見分けにくい」ことが臨床的な課題です。
4. 添付文書の警告
製薬会社自身が以下のように記載しています。
「精神症状(激越、幻覚、錯乱等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと」
👉 つまり、メマンチン服用中に精神症状が出たら「病気の進行だから仕方ない」ではなく、副作用を疑って一度中止すべきなのです。
まとめ
効果は「中等度~高度」で小さな改善にとどまる
軽度例では臨床的に意味のある効果なし
精神症状に効くという根拠はない(誤用に注意)
副作用(特に焦燥)は病状悪化と区別が難しいため注意
副作用が疑われたら中止→再開の判断が安全
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