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在宅医療における認知症について28~レビー小体型認知症(DLB)に対する抗認知症薬の有効性まとめ

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 9月8日
  • 読了時間: 3分

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日本でDLBの効能・効果を持つ薬はドネペジルのみ(2018年時点)。ただし「どこまで効くのか」は疾患特性に合わせた評価が必要です。

要点(先に結論)

  • 効きやすい領域:DLBの認知機能(特に10mg/日でMMSEの改善)。

  • 効きにくい領域:**精神症状・行動障害(幻視・認知機能の変動など)**は、プラセボに対する明確な優越性を示せず。

  • 用量:有効性の裏づけは10mg/日。副作用が出る場合のみ5mg/日へ減量は可。3mg/日の継続投与は根拠なし

  • パーキンソン症状:悪化は原則みられず(ただしHoehn–Yahr IV以上の重症例はデータなし)。

  • 使い方の姿勢:「DLBだから自動的にドネペジル」ではなく、適切な診断・説明のうえで認知機能の進行抑制を狙う薬、と位置づける。

1) なぜ「アルツハイマー基準」の物差しがそのまま通用しないのか

DLBはコリン神経障害がある点でアルツハイマー病(AD)と共通しますが、初期から記憶障害が目立たないことが多く、AD用に作られたADAS-cog中心の評価だと効果が拾いにくい可能性があります。→ DLB評価ではMMSEや**NPI-2(幻覚・認知機能変動)**がより実態に近い指標になり得ます。

2) 試験の流れと結果(ざっくり)

海外:パーキンソン病認知症での結果(参考)

  • CIBIC-plusは10mgで優越性、ADAS-cogは有意差出ず(評価指標のミスマッチを示唆)。

国内探索試験(431試験:12週)

  • MMSE:3/5/10mgで改善傾向

  • CIBIC-plus:3/5/10mgで改善傾向

  • NPI-2(幻覚・変動):5/10mgで改善※ただし探索試験多重性調整なし=「仮説生成」にとどまる

国内検証試験(341試験:12週)

  • 主要評価=MMSE+NPI-2(多重性調整あり)

  • MMSE10mgで有意に改善、5mgは非有意

  • NPI-25/10mgとも有意差なし→ 主要2項目の同時優越性を満たせず、検証試験としては不成立

3) PMDAの判断(ポイント)

  • 「臨床的に十分な有効性が検証された」とまでは言えない

  • ただし、10mgでMMSE改善は国内外で一貫/海外では標準治療。

  • 日本での治療選択肢の乏しさも考慮し、条件付きで効能追加を承認(市販後に全般症状の検証を行うこと等)。

4) どの患者像に根拠がある?


  • DLB(Hoehn–Yahr Ⅲ以下相当)

    • 10mg/日:認知機能に有効

    • 5mg/日:科学的根拠は限定的(副作用時の減量は可)

    • 精神症状・行動障害:有効性の裏づけなし

  • Hoehn–Yahr Ⅳ以上のDLB科学的根拠なし

5) 実臨床の使い方(安全寄りの運転)

  • 開始~増量:3mg/日 →(1–2週)→ 5mg/日 →(4週以上)→ 10mg/日

  • 副作用(錐体外路悪化など)5mgへ減量、改善なければ中止

  • パーキンソン症状:原則悪化は少ないが、重症例のデータはない

  • 急がない姿勢:継続期データより、開始が多少遅れても大勢に影響は小さい十分な説明と同意を優先

6) 誤解しがちなポイント

  • 「幻視があるからドネペジル」ではない(NPI-2で優越性示せず)。

  • 「DLBだから必ずドネペジル」でもない(全身病として多職種で包括対応)。

  • 10mgでMMSEが改善しても、日常全般(CIBIC)や精神症状の劇的改善を期待しすぎない

7) まとめ(診療メモ)

  • 目標:DLBの認知機能の進行抑制

  • 用量10mg/日が基本、安全性に応じ5mgへ減量可3mg維持は根拠なし

  • 適応診断が明確で、服薬管理や安全性の担保がある症例で検討。

  • 説明:効果は限定的で、精神症状・行動障害には別途対応が必要。📺 在宅医療・認知症ケア・呼吸器疾患の解説をYouTubeで配信中!▶ 内田賢一 - YouTubeチャンネル

    🏷 ハッシュタグ#認知症 #アルツハイマー病 #抗認知症薬 #在宅医療 #薬の効果 #さくら在宅クリニック

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