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在宅医療における認知症について25~ドネペジルの国内治験データからわかること

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 8月27日
  • 読了時間: 2分

更新日:8月29日


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抗認知症薬ドネペジルは、日本で行われた複数の臨床試験を経て承認されました。その過程をたどると、なぜ現在の用量設定になっているのかが見えてきます。

軽度~中等度アルツハイマー病での試験(表5)

  • 2mg/日(131-A・132試験) → 有効性なし(プラセボと変わらず)

  • 3mg/日(134試験) → 有効性なし(プラセボと変わらず) ※現在は副作用回避のための「導入用量」としてのみ使われます。

  • 5mg/日(134試験) → この試験では有効性なし。ただし「認知機能が比較的保たれた患者が多かった」ため、再解析が行われました。

  • 5mg/日(161試験) → ADAS-cogが15点以上(=ある程度認知機能低下がある人)に絞って再検証した結果、プラセボに対して有効性あり。 → これにより5mg/日が有効用量として承認されました。

高度アルツハイマー病での試験(表6)

  • 5mg/日(231試験) → 認知機能改善はあったが、全般的臨床症状では有意差なし。

  • 10mg/日(231試験) → 認知機能・全般的臨床症状の両方でプラセボに対して有意差あり。 → その結果、高度アルツハイマー病では10mg/日投与が承認されました。

なお、10mgに増量する際は副作用予防のため、必ず5mg/日を4週間以上投与してから行うよう添付文書に記載されています。

教訓:用量設定の意味

  1. 3mg/日以下は無効 科学的根拠として「効かないことが証明された量」であり、漫然と続けるべきではない。

  2. 5mg/日は“有効”と証明された最小量 ただし「効かない患者も多い」ため、効果判定は定期的に行う必要があります。

  3. 10mg/日は高度アルツハイマー病でのみ有効 進行度を見極めて使う必要があります。

実臨床での注意点

  • 抗認知症薬の効果は小さく、本人や家族が実感できる改善はわずかです。

  • 「効いているのかどうか」は主観ではなく、定期的な認知機能検査と全般的症状評価で確認する必要があります。

  • 効き目が乏しいのに無効用量を漫然と続けるのは、患者さんに副作用と無駄な医療費の負担をかけることになります。

まとめ

  • ドネペジルは、国内治験データに基づき 軽度~中等度では5mg/日、高度では10mg/日 が承認された。

  • 3mg/日は「副作用回避のための導入量」であり、効果はない。

  • 投与の際は「どの病期か」「副作用に耐えられるか」を考慮し、定期的に効果判定を行うことが不可欠。

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