top of page

創傷ケア(スキン テア、褥瘡、下肢潰瘍)を科学する①~スキン‐テアとは?STAR分類システムで正しく評価しよう

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 6月9日
  • 読了時間: 4分
ree

皮膚が裂けてしまった傷を見て、「これって褥瘡?それともスキン‐テア?」と悩んだことはありませんか?

スキン‐テア(Skin Tear)は、高齢者や皮膚が脆弱な方によく見られる「摩擦やずれの外力によって皮膚が裂ける損傷」のことです。特に上肢がベッド柵にこすれたり、テープをはがすとき、体位変換で腕を持ったときなどに発生しやすく、日常的な介助の中で起こります。

今回は、そんなスキン‐テアを正しく分類・評価するための「STAR分類システム」についてご紹介します。

STAR分類とは?

STARとは「Skin Tear Audit Research」の略で、オーストラリアで開発されたスキン‐テアの評価ツールです。日本創傷・オストミー・失禁管理学会では、STAR分類をスキン‐テアの実態を把握するための評価システムとして採用しています。

この分類の特徴は、皮弁の有無と色調の変化によって創傷を5つのカテゴリーに分けることです。

分類のポイント:皮弁と色の変化

分類は以下の2つのステップで行います。

ステップ①:皮弁の状態を確認する

まず、皮弁(皮膚が裂けてめくれた部分)があるかを確認します。

  • 皮弁で創面を覆える → カテゴリー1

  • 覆えない → カテゴリー2

  • 皮弁が完全に欠損している → カテゴリー3

ステップ②:皮弁や皮膚の色を観察する

皮弁がある場合のみ、色調を確認します。

  • 蒼白・黒ずみなどの変化なし → 「a」

  • 色調の変化あり(虚血や血腫の可能性)→ 「b」

たとえば、皮弁で覆えるが色が黒ずんでいる場合は「カテゴリー1b」となります。

STAR分類の5つのカテゴリー

カテゴリー

特徴

1a

皮弁で創面を覆える・色調変化なし

1b

皮弁で創面を覆える・色調変化あり

2a

皮弁で覆えない・色調変化なし

2b

皮弁で覆えない・色調変化あり

3

皮弁が完全に欠損している

 

ree

※詳細は画像をご参照ください。

スキン‐テアかどうかの見分け方

褥瘡との違いは**「外力の作用時間」**です。

  • スキン‐テア:一時的な摩擦やずれによって起こる

  • 褥瘡:持続的な圧迫によって起こる

さらに、以下の疾患との鑑別も重要です:

  • 医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)

  • 失禁関連皮膚炎(IAD)

  • 静脈性潰瘍、動脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍

これらの鑑別には、創部の圧迫歴や排泄物の付着、基礎疾患の有無などの情報が重要となります(図1-1参照)。

まとめ

スキン‐テアは見逃されやすく、誤分類されやすい傷のひとつです。しかし、STAR分類システムを使えば、客観的な評価が可能となります。適切な評価とケアによって、皮膚の保護と再発防止が可能です。

医療・介護の現場で「これはスキン‐テアかも」と感じたときは、まずはSTAR分類で状態を見極めてみましょう。

🌸 スキン‐テアの正しい理解とケアで患者さんのQOLを守ろう

スキン‐テアは高齢者に多く見られる創傷であり、正確な評価と分類がとても大切です。STAR分類を活用し、早期発見・適切な対応につなげましょう。

🎥 YouTubeで在宅医療をやさしく学べます!📺 内田賢一の在宅医療チャンネル – YouTube高齢者医療・神経難病・終末期医療の視点を、やさしく・深く・わかりやすくお届けしています。

🏠 さくら在宅クリニックの取り組み私たちは、逗子・葉山・横須賀・鎌倉を中心に、パーキンソン病や認知症などの神経難病がんや老衰などの終末期医療に特化した訪問診療を行っています。

YouTubeで在宅診療の知識を学びませんか?在宅医療の基本から実践的なコツまで、わかりやすく解説中です。

🏥 逗子・葉山・横須賀・鎌倉で在宅医療をお探しなら私たちさくら在宅クリニックは、神経難病や終末期ケア、心不全などの慢性疾患を抱える方に寄り添う医療を提供しています。


コメント


© 2021 湘南在宅研究所 All Rights Reserved.

情報通信機器を用いた診療の初診において向精神薬を処方しておりません

bottom of page