高齢者の歩行解析と下肢障害予防
- 賢一 内田
- 6月24日
- 読了時間: 2分

先日、「高齢者の歩行-下肢障害の要因としての歩行動態とその予防法への試み-」という講演を拝聴しました。講師は、慶應義塾大学スポーツ医学研究センターの橋本健史先生。高齢者の歩行を科学的に解析し、リハビリや予防医学に応用できる興味深い内容でしたので、以下に要点を簡単にご紹介いたします。
① 歩行は“軟骨のための運動”だった?
歩行によって関節軟骨に加わる機械的刺激(10~15%のひずみ、1Hzの頻度、多軸方向の圧力)は、まさに軟骨再生に理想的な刺激。つまり、「歩行そのものが関節軟骨にとって最適な運動である」というエビデンスが示されました。
② 歩行解析の基礎知識
1歩行周期には、「硬い足」「柔らかい足」の2回の役割交代がある。
理想的な歩行速度は1.33m/s(=時速4.8km)。この速度がエネルギー効率の最適点。
歩行中のエネルギーの80~85%は足関節底屈力によって生み出されており、歩行能力=足首の力とも言えます。
③ 高齢者と若年者の歩行の違い
● 足関節の特徴
底屈角・底屈力が低下
外返しが強くなりやすく、足関節捻挫やアキレス腱障害、足底腱膜炎などのリスクが増加
● 膝関節の特徴
膝が常にやや屈曲しており、直立歩行になっていない(鳥や恐竜に近いパターン)
内転モーメントが強く、膝関節症(OA)の進行要因に
● 股関節の特徴
股関節の最大伸展角が小さくなり、結果として歩幅と歩行速度が低下
④ 下肢障害の予防法と歩行能力向上のヒント
異常歩行は、転倒リスクや死亡率の上昇、関節障害の進行に直結します。以下のようなトレーニングが有効と紹介されました。
つま先立ち訓練:足関節底屈力の強化
タオルギャザー訓練:足趾屈曲力の向上(バランス能力に直結)
ランジストレッチ:股関節の伸展可動域を改善
週1時間以上の中強度運動(例:早歩き)で、歩行速度改善(目標:4 METs以上)
うつ・慢性疼痛・多剤併用の是正も、歩行機能に影響
⑤ ウェアラブル技術で歩行解析を
Apple WatchやiPhoneを使えば、個人の歩行特性をリアルタイムで可視化することも可能。例えばこちらの資料も参考になります👇Measuring Walking Quality Through iPhone Mobility Metrics(apple.com)
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