誤嚥性肺炎を科学する65~鎮静作用や摂食嚥下運動が緩慢になる副作用をもつ薬剤がある。不眠症治療薬、筋弛緩作用をもつ薬(抗てんかん薬・抗精神病薬)、制酸薬などを内服している場合は注意しよう
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悪影響を及ぼす可能性のある薬(2)その他
不眠症治療薬・筋弛緩薬・制酸薬と摂食嚥下機能への影響
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鎮静作用や摂食嚥下運動が緩慢になる副作用をもつ薬剤がある。不眠症治療薬、筋弛緩作用をもつ薬(抗てんかん薬・抗精神病薬)、制酸薬などを内服している場合は注意しよう
唾液を減少させ口腔衛生を悪くする可能性がある薬剤については前項で述べました。それ以外で配慮が必要なものには、①不眠症治療薬、②筋弛緩作用をもつ薬、③制酸薬などがあります(図8-2、表8-2)。
⚠ 注意:必ずしも減薬や休薬が必要というわけではありませんが、ポリファーマシー(多剤併用による有害事象)につながることもありますので、担当医や薬剤師と常に相談することが大切です。
不眠症治療薬
不眠治療にはさまざまな種類・機序の薬剤が用いられます。すべての不眠症治療薬が問題になるというわけではありません。夜間臥床時に過度な鎮静をきたす可能性があるものには注意が必要です。代表的なものは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬です。
😴 過度な鎮静がもたらすリスク
過度な鎮静は、気管内に誤侵入した唾液や分泌物を略出するための感覚を鈍らせます。全身麻酔中の方に気管挿管しても咳嗽反射が惹起されないのと同じです。さらに悪いことに、不眠症治療薬は夜間就寝するために服用するものですので、数時間以上臥床したままの状態が続くことになります。臥床は胃食道逆流や嚥下回数減少の原因になり、ただでさえ誤嚥リスクが高い姿勢です。
このタイプの薬は後述する筋弛緩作用も出現することがありますし、前述した抗コリン作用(90〜91ページ)が出現することもあります。不必要な投薬を漫然と続けていないか吟味する必要があります。
筋弛緩作用をもつ薬(抗てんかん薬や抗精神病薬)
抗てんかん薬や抗精神病薬には筋弛緩作用を有するものが多く、摂食嚥下運動の緩慢につながります。症状の出現を抑制できる最小量を服用することが望ましいですが、時に過剰に服用していることもあります。
🔍 確認すべきポイント
動作緩慢、嚥下反射の惹起遅延を伴う患者さんでは、薬が過剰ではないか検討しましょう。
制酸薬(PPI や H₂RA)
胃酸分泌抑制を目的とした薬剤であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)やヒスタミンH₂受容体拮抗薬(H₂RA、H₂ブロッカー)は、いくつもの研究を集めて再検討した研究(メタ解析)で、誤嚥性肺炎発症のリスクになる可能性が示されています。
🦠 推測されるメカニズム
通常、口腔内の雑菌は唾液とともに嚥下され、食道を通り胃に入ります。胃内では胃酸によりほとんどの菌が死滅しますが、制酸薬服用者では菌が生き残っていて、逆流してきた胃液を誤嚥することで細菌性肺炎が引き起こされるという機序が推測されています。
胃・十二指腸潰瘍や逆流性食道炎の治療にPPIやH₂RAは非常に優れた効果を発揮するため、近年多用されています。しかし、治療終了後も漫然と内服を継続している例も少なくありません。特に寝たきりの方は逆流しやすく嚥下運動が少ないため、休薬やほかの薬剤への変更ができないかを考える必要があります。
💡 実践のポイント:現在の治療目的が終了しているにもかかわらずPPI・H₂RAを継続服用していないか、担当医・薬剤師と定期的に見直しを行いましょう。

図8-2 休薬・減薬・変更を検討すべき薬剤(概念図)
表 8-2誤嚥性肺炎の原因と考えられる副作用
薬剤 | 誤嚥性肺炎の原因となりうる副作用 |
利尿薬 | 唾液量減少(口腔内細菌増悪・嚥下潤滑性低下) |
抗コリン薬 | 唾液量減少(口腔内細菌増悪・嚥下潤滑性低下) |
不眠症治療薬 | 鎮静(咽頭・喉頭感度低下)抗コリン作用 |
筋弛緩作用をもつ薬 (抗てんかん薬・抗精神病薬) | 嚥下運動緩慢抗コリン作用鎮静作用 |
制酸薬 | 胃食道内細菌数増加 |
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