誤嚥性肺炎を科学する46~摂食嚥下機能に合った食形態での食事提供は、誤嚥リスクを最小限にして誤嚥性肺炎発症の予防につながります。
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一律に決められた調整食を提供するのではなく、個々の口腔機能と嚥下機能に合わせて食形態を調整しよう
水分の誤嚥リスクも高いため、状況に合わせて「水分とろみ付け」で形態調整しよう
食物の形状・硬さ・物性を食形態といいます。摂食嚥下機能に合った食形態での食事提供は、誤嚥リスクを最小限にして誤嚥性肺炎発症の予防につながります。
誤嚥性肺炎治療中の方にも食形態の配慮は必要です。特に発症から数日間は発熱や咳嗽に伴い体力が消耗し、体調がすぐれない状態にあるため、その状態に見合った食形態を提供することが重要です。
🦷 食形態選びの基本 — まず口腔機能を診る
一律に決められた調整食を提供することはナンセンスです。着目すべきポイントは口腔機能です。以下の2点を確認することから始めます(図6-1)。
🦷
噛み合わせをみる
咀嚼がうまくできるか、咀嚼するための奥歯(臼歯)に脱落はないか(噛み合わせはよいか)を確認します。
👅
舌と口唇の動きをみる
舌や口唇の動きはよいか、しっかりと閉鎖できているかを確認します。高度な嚥下障害の場合は嚥下(飲み込み)機能にも着目します。
📊 口腔機能から食形態を決める(図6-2)
図6-2:食形態選びの基本 / 嚥下障害の程度や体調により個別に検討する
噛み合わせ ◎ / 舌・口唇 ◎
奥歯がそろっており、舌・口唇の動きも良好
→
形のあるもの
噛み合わせ × / 舌・口唇 ◎
奥歯はそろっていないが、舌の力は保たれている
→
舌でつぶせるもの
噛み合わせ × / 舌・口唇 ×
舌・口唇の力が極端に落ちている
→
そのまま飲み込めるもの
リクライニング必要 or 早期咽頭流入あり or 食事中のむせあり
→
水分とろみ付き
※ 嚥下障害の程度や体調により個別に検討する必要があります
各食形態の詳細
噛み合わせ◎ 舌◎
🍱
形のあるもの(軟菜食)
奥歯がそろい、舌・口唇が十分に動く場合は形のある食事が可能。噛む力が落ちている場合は漬物や肉の塊を避け、比較的やわらかく調理した軟菜食を選びます。
噛み合わせ× 舌◎
🥮
舌でつぶせるもの
奥歯がそろっていなくても舌の力がある程度保たれている場合。噛まないと飲み込めないような硬さ・大きさのものを排除した食形態。舌で押しつぶせるものが基準。
噛み合わせ× 舌×
🥣
そのまま飲み込めるもの
舌・口唇の力が極端に落ちている場合。噛まず、押しつぶさずに飲み込んでよい食形態。一般的にはミキサー食やゼリー食と呼ばれます。
むせ・リクライニングあり
💧
水分とろみ付き
食形態と別に水分への対応が必要。リクライニングで食べる方、食事中にむせる方、早期咽頭流入がある方には水分にとろみをつけます。
💧 水分の形態調整 — なぜとろみが必要?
水は流動性が高く、口腔内では低いところにすぐに広がり、咽頭に流れ込みやすいため、そのままでは誤嚥リスクが高いです。健常者は口腔機能がしっかりと保たれているため口腔内で保持でき、咽頭に勝手に流れ込むのを阻止していますが、誤嚥性肺炎を起こしやすい高齢者ではこの能力が低下していることが予想されます。
💡 水分とろみ付けが必要な方
摂食嚥下障害と診断された方
食事中にむせが多い方
上体を背もたれにあずけて食べる姿勢の方(リクライニングが必要な方)
とろみをどの程度つけるかも重要なポイントです。リクライニングして食べる方や飲み込む前にむせることがある方は、水分が早期咽頭流入(喉に予定より早く水が流れ込んでいる)しているため、とろみを強めにつけて水分が咽頭に到達するスピードを遅くするとよいでしょう(図6-2)。
💡 現場で押さえたいポイント
🚫
「全員同じ刻み食・ミキサー食」はNG
食形態は一律に決めるものではありません。口腔機能(噛み合わせ・舌・口唇の動き)と嚥下機能を個別に評価し、その方に最適な形態を選ぶことが誤嚥リスクの最小化につながります。
🔍
まず「噛み合わせ」と「舌・口唇の動き」を確認する
食形態選びのスタートは口腔機能の観察です(図6-1)。高度な嚥下障害がある場合は、口腔機能だけでなく飲み込む機能(嚥下機能)にも合わせて判断します。
💧
水分の誤嚥リスクを忘れずに
食事の形態に気を配っていても、水分のとろみ付けを忘れていると水が誤嚥経路になります。むせがある方・リクライニングが必要な方には必ず水分にもとろみを。とろみの強さは早期咽頭流入の有無で調整しましょう。
🤒
誤嚥性肺炎治療中は「いつも通り」でなくてよい
発症直後は発熱・咳嗽により体力が消耗し、普段より口腔機能・嚥下機能が落ちている可能性があります。治療中は食形態を一段下げて提供することも重要な配慮です。
📝 まとめ
食形態は口腔機能(噛み合わせ・舌・口唇)と嚥下機能を個別に評価して決める
噛み合わせ◎・舌◎ → 形のあるもの(軟菜食)→ 舌でつぶせるもの → そのまま飲み込めるもの(ミキサー・ゼリー食)の順に機能に応じて選択する
水分は流れ込みやすく誤嚥リスクが高い。むせ・リクライニングが必要な方には必ずとろみ付けを行う
早期咽頭流入がある方はとろみを強めにして咽頭到達スピードを遅くする
誤嚥性肺炎治療中は体調に合わせて食形態を一段落として柔軟に対応する
※ 本記事は医療従事者・患者家族向けの情報提供を目的としています。食形態の決定は担当医・管理栄養士・言語聴覚士等の専門職と相談のうえ行ってください。




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