神経障害性疼痛疼痛を科学する1~定義と臨床的特徴
- 12 時間前
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痛みは生体防御に欠かせない重要な役割を果たしている。「生体組織に損傷が加えられた場合、痛みを認知し、その部位を安静に保ち、修復を容易ならしめる。同時に生じる炎症機転は免疫系を介した生体防御のさまざまなプロセスを惹起させる」、これが本来の痛みの役割である。
ところがこの本来の役割を逸脱し、神経障害性疼痛(neuropathic pain)という生体に不利益を与えるきわめて不快な耐え難い痛みとそれに伴うしびれや浮腫・冷感・熱感・皮膚/骨変化などを生じさせてくることがある。この神経障害性疼痛は、「末梢神経や中枢神経系を含む生体組織の損傷が修復された後に持続する難治性の激しい痛みのこと」と臨床的には説明・理解されている。神経障害性疼痛に罹患した患者のQOLは低下し、痛みやしびれのために患肢を動かすことも困難となるためADLも低下し、日常生活に多大な支障をきたすことになる。
痛みの定義と分類
1. 痛みの定義(IASP, 1986)



神経障害性疼痛の定義
IASPは1990年に、神経障害性疼痛を「Pain initiated or caused by a primary lesion or dysfunction in the nervous system(神経系の一次的な損傷、あるいはその機能異常が原因となって生じた疼痛)」と定義している。しかしこの定義は、神経障害性疼痛と侵害受容性疼痛の特徴を見分けるには有用性が高いが、診断の特異性や解剖学的正確性に欠けているなど、あいまいな点が多い。
IASPには神経障害性疼痛を専門とする委員会(neuropathic pain special interest group:NeuP-SIG)が組織されており、このグループには分類や分類法を扱う小委員会がある。そのメンバーであるTreedeらは、上述の定義の欠点を補うための改定案として、「Pain arising as a direct consequence of a lesion or disease affecting the somatosensory system(体性感覚系に影響を与える損傷や疾患の直接的結果として生じている疼痛)」という新定義を提案している。
(グレード分類システム)

「神経障害性疼痛」としばしば混同される「神経原性疼痛(neurogenic pain)」の定義は、「末梢神経であれ、中枢神経であれ、痛みの伝導に関与する神経が何らかの刺激を受けたことにより生じる痛み」である。このため、神経障害性疼痛はこの神経原性疼痛の一部として包含される。つまり、「神経障害性疼痛」は神経障害などの神経刺激の後に出現した難治性の「神経原性疼痛」の一つと考えると理解しやすい。
I神経障害性疼痛の臨床的特徴
典型的な臨床経過としては、慢性疼痛の定義と同様、「痛みを引き起こす原因となった疾患が治癒した後も長期にわたって疼痛の持続を認める」という経過で生じた痛みである。時には痛みを引き起こす明確な原因がなく発症する場合もある。臨床的特徴は、①知覚異常、②痛みの質、③痛みの強弱、④痛みの発現する時間的パターンに分けて考えると理解しやすい。



自発痛と刺激で誘発される痛みの両者もしくはそのどちらかを特徴とする。自発痛と侵害刺激に対する閾値が低下して起こる、つまり軽微な痛み刺激でも激しい痛みを感じる痛覚過敏(hyperalgesia)、通常痛みを引き起こさない軽い触刺激や温覚などの刺激で惹起される痛みであるアロディニア(allodynia)、痛みではないが尋常でない自発性もしくは刺激で生じる感覚異常(paresthesia)や異常感覚(dysesthesia)が共通の特徴である。また逆に無知覚(loss of sensation)や知覚低下(imperception)の場合もある。これらは、感覚鈍麻・痛覚鈍麻・温覚鈍麻・振動覚鈍麻などを特徴とする。
4. 痛みの発現する時間的パターン
持続性自発痛(自発性の持続痛)または発作痛(発作性もしくは電撃性の痛み(電撃痛))。これらを単独もしくは併せもつ。その他、発汗・皮膚冷感など交感神経緊張に特徴的な臨床症状を示すこともある。



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