看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する11~療養生活に必要な排尿評価 〜エコーによる観察とアセスメント〜
- 賢一 内田
- 7月31日
- 読了時間: 3分
はじめに:なぜ排尿にエコーなのか?
排尿管理では、単に「出た・出ない」だけでなく、排尿機能の背景や排尿障害のタイプを理解し、必要なケアを提供することが求められます。
エコー(超音波)は、痛みや侵襲なく、残尿量・膀胱壁・前立腺の形状などを可視化できるため、排尿ケアの質を大きく高める武器となります。
1. エコーでできること・評価できること
● エコーでできる主なこと
下部尿路症状・機能の把握
症状の原因(病態)の確認
病態に応じたケア評価
● 評価できる具体的所見
残尿・尿失禁のタイプ
膀胱・前立腺の形態(肥大・結石など)
骨盤底筋の反応
カテーテル留置位置の確認
✅ エコーで“見える化”されることで、観察・記録・評価・ケア内容すべてが進化します!
2. 排尿障害の分類と評価軸
排尿トラブルは大きく分けて、以下の要因に分類されます。
● 排尿行動の自立に影響する要因(図1)

蓄尿障害(尿が貯められない)
排出障害(出しにくい)
膀胱収縮力低下、括約筋障害
神経因性膀胱、前立腺肥大など
● 下部尿路機能の分類(図2)

ICS分類による3分類:
蓄尿症状(頻尿・尿意切迫)
排尿症状(遷延排尿・腹圧排尿)
排尿後症状(残尿感など)
3. 観察ポイント:膀胱をエコーで観るコツ
● 膀胱の位置と解剖(図3)

男性:恥骨直上の後ろに前立腺
女性:子宮が介在しやすい位置関係
● 使用プローブと周波数
コンベックス型(3.5〜5MHz)
プローブは恥骨直上に垂直、または30°ほど傾けて当てる
● 観察時の注意点
腹部圧迫により見えにくくなる → タオル・カーテンで圧迫軽減
膀胱全体を捉えるには最大断面を中央に描出する必要あり
4. 撮像方法と描出テクニック(図4)
![]() 像の種類 | 操作ポイント |
短軸像(横断面) | プローブを横に構え、膀胱を輪切りに観察 |
長軸像(縦断面) | プローブを縦に構え、膀胱〜尿道方向を観察 |
扇動走査 | プローブを微調整して、最大断面を探す |
🔍 画像の中心に膀胱を持ってくることで、適切な残尿評価や前立腺・子宮の確認が可能になります。
5. 表でわかる!排尿管理におけるエコーの使い方(表1)

活用目的 | エコーでの観察項目 |
症状・機能の把握 | 膀胱の大きさ・残尿量・前立腺肥大 |
原因の確認 | 膀胱壁の肥厚、結石、筋層変化など |
ケアの検討 | 骨盤底筋訓練の効果、カテ位置確認 |
おわりに
排尿の問題は、生活の質(QOL)に直結する重要な課題です。
「排尿がうまくいかない」その背景にある構造や動きを、エコーで“見える化”することにより、本人や家族、ケアチームと共通理解を持ちながら支援することが可能になります。
排泄ケアを“感覚”から“根拠ある実践”へと進化させるために、エコーは今後ますます重要なツールとなっていくでしょう。





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