攻めの栄養療法を科学する59~静脈栄養で投与される栄養素とその上限
- 賢一 内田
- 5 時間前
- 読了時間: 4分

― 「入る量」ではなく「入れてよい量」を知る ―
静脈栄養は、経口摂取や経管栄養が困難な状況において、生命維持・栄養改善のために不可欠な手段です。しかし一方で、静脈栄養は過剰投与による合併症を起こしやすいという特徴も持っています。
「どこまで入れられるか」ではなく、👉 「どこまで入れてよいか」を理解することが、攻めの栄養療法において極めて重要です。
以下に、静脈栄養で投与される主要な栄養素と、その上限の考え方を整理します。
糖質(グルコース)
静脈栄養で使用される糖質には、
単糖類:ブドウ糖、果糖
二糖類:マルトース
糖アルコール:ソルビトール、キシリトール
などがありますが、主成分はブドウ糖です。
ブドウ糖の過剰投与による問題
高血糖
肝機能障害
換気亢進(CO₂産生増加)
これらを防ぐため、ブドウ糖投与量には明確な上限があります。
推奨上限量
非侵襲時:7 g/kg/日 以下
侵襲時:5.5 g/kg/日 以下
例:体重50 kgの場合
非侵襲時:350 g/日 以下(7 × 50)
侵襲時:275 g/日 以下(5.5 × 50)
特に、
糖尿病
耐糖能異常
副腎皮質ステロイド投与中
敗血症、多臓器不全
といった状態では、耐糖能が著しく低下するため、👉 過剰投与に最大限の注意が必要です。
アミノ酸(たんぱく質)
静脈栄養では、たんぱく質はアミノ酸製剤として投与されます。
必要量の目安
侵襲のない状態:0.6~1.0 g/kg/日
外科手術・外傷・熱傷など侵襲下:1.3~2.0 g/kg/日
ただし、重症敗血症状態では 1.5 g/kg/日以上の投与が過剰となる可能性が報告されています。
一方、
低栄養
飢餓状態
では体内アミノ酸プールが枯渇しており、👉 積極的なアミノ酸補充が必要となる場合もあります。
NPC/N比(非たんぱくカロリー/窒素比)
アミノ酸投与では、NPC/N比の考慮が不可欠です。
侵襲なし:150~200
侵襲あり:80~100
腎不全(腎代替療法なし):300~500
例
体重50 kg、
必要エネルギー量:1600 kcal
たんぱく質必要量:50 g
→ NPC/N比:175
PPN製剤使用時の注意点
PPNで用いられるアミノ酸加糖電解質輸液(例:ビーフリード®)は、NPC/N比が約64と非常に低いという特徴があります。
腎機能障害を有する患者では、
腎前性高窒素血症
高アンモニア血症
をきたす恐れがあるため、👉 脂肪乳剤を併用し、NPC/N比を是正することが重要です。
たんぱく質投与量の上限
明確な数値基準はありませんが、BUNの推移をモニタリングしながら調整します。
私見ではありますが、👉 BUNが50 mg/dLを超えない範囲が一つの実践的な目安と考えています。
脂質(脂肪乳剤)
脂肪乳剤は、
必須脂肪酸欠乏症の予防
肝機能障害・脂肪肝の予防
糖質過剰投与の回避
のために、静脈栄養では必須です。
必須脂肪酸欠乏症
脂肪乳剤を投与しない場合、
小児:約2週間
成人:約4週間
で発症するとされています。低栄養高齢者では、開始早期からの投与が望ましいとされます。
投与量と速度
投与速度:0.1 g/kg/時 以下
1日投与量:1.0 g/kg/日 以上は避ける
例:体重50 kg、20%脂肪乳剤100 mL
→ 4時間以上かけて投与
血中TGモニタリング
350~450 mg/dL超:投与中止
190~260 mg/dL:減量・速度減速
ビタミン
水溶性ビタミン
体内で合成できず、半減期も短いため、静脈栄養時には必ず補充します。
特に重要なのがビタミンB1です。欠乏すると、
乳酸アシドーシス
ウェルニッケ脳症
などを引き起こす可能性があります。
👉 1日3 mg以上の投与が必須(厚労省適正使用情報)
脂溶性ビタミン
半減期が長いため、過剰症に注意が必要です。
ビタミンK
TPN用総合ビタミン剤:2 mg含有
ワルファリン効果を減弱させる可能性あり
👉 PT-INRを定期的に確認
ビタミンA
過剰投与により 脳圧亢進、視覚障害、肝障害のリスク
妊娠3か月以内、または妊娠希望女性では 5,000 IU/日以上は禁忌
攻めの栄養療法における静脈栄養の本質
静脈栄養は、「入れればよい栄養」ではありません。
上限を知り
モニタリングを行い
状況に応じて減らす勇気を持つ
これができて初めて、👉 攻めすぎない“本当の攻めの栄養療法”が成立します。
▶︎ 公式サイト
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