攻めの栄養療法を科学する29~悪液質(カヘキシア)
- 2025年12月30日
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― 栄養を「増やしても」改善しない病態 ―
悪液質(cachexia)とは、通常の栄養療法では改善が困難な、進行性の代謝異常症候群です。
単なる低栄養とは異なり、
著しい骨格筋量の減少
慢性炎症の持続
機能障害の進行
を特徴とする、複合的な栄養不良状態です。
■ 悪液質を来す主な疾患
悪液質は、以下のような慢性消耗性疾患で認められます。
がん
慢性心不全
慢性腎不全
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
自己免疫疾患
慢性感染症
敗血症後の慢性消耗状態 など
👉 「食べられないから痩せた」のではなく、「病態そのものが筋肉を削る」状態であることが本質です。
■ がん悪液質のステージ分類
がん悪液質は、3段階に分類されます。
① 前悪液質(pre-cachexia)
慢性炎症の存在
軽度の体重減少
食欲不振が出始める段階
👉 この時期が最も重要
早期の栄養介入により栄養不良の進行を遅らせることが可能
状態評価を行いながら、攻めの栄養療法が許容されるステージ
目安
エネルギー:25~30 kcal/kg/day
たんぱく質:1.0~1.5 g/kg/day
定期的な評価が必須
② 悪液質(cachexia)
明らかな体重減少
骨格筋量の減少
ADL・QOLの低下が進行
👉 栄養介入の効果は限定的になり始める段階
③ 不応性悪液質(refractory cachexia)
急速に進行するがん
抗がん治療抵抗性
代謝異常が強く、栄養不良の改善が困難
👉 ここが最も重要な判断ポイントです
■ 不応性悪液質で起こりやすい問題
● 経管栄養を行った場合
下痢
腹部膨満
嘔吐
👉 継続困難になるケースが多い
● 静脈栄養を行った場合
浮腫
腹水・胸水の増加
高血糖
👉 体液貯留や代謝異常により、かえってQOLを著しく低下させる可能性
■ 結論
不応性悪液質に「攻めの栄養療法」は適応しない
不応性悪液質では👉 栄養を増やしても、筋肉は増えない
むしろ👉 苦痛や合併症を増やすリスクが高い
この段階で重要なのは、
「栄養状態を改善する」ことではなく
苦痛を増やさず、生活の質(QOL)を守ること
👉 不応性悪液質において、栄養状態改善を目的とした攻めの栄養療法の適応はありません。
■ 悪液質で大切な視点
「食べさせる=良い医療」ではない
病態・ステージを見極める
栄養は目的ではなく手段
QOLと本人の価値観を最優先
在宅医療・緩和ケアでは、**“増やす栄養”より、“寄り添う栄養”**が求められます。
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