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攻めの栄養療法を科学する22~回復期|「回復させるための栄養」が主役になる時期

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 6 時間前
  • 読了時間: 4分

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回復期は、脳卒中・大腿骨近位部骨折・廃用症候群などにおいて、病状が安定した段階を指します。回復期リハビリテーション病棟に入院する**65歳以上の高齢者では、中等度以上の栄養障害を有する患者が約44%**に及ぶと報告されています。

Nishioka らの研究では、大腿骨近位部骨折かつ低栄養の高齢者において、栄養状態の改善が ADL 改善と独立して関連していたことが示されています。

回復期における栄養管理のポイント

回復期病棟の入院期間は、疾患により最短60日、最長180日と定められています。急性期病院での安静や侵襲、あるいは必要量に満たない栄養管理により、

  • サルコペニア

  • 低栄養

をすでに発症している症例も少なくありません。

そのため回復期では、

  • 短期目標(入院前半):栄養状態の改善

  • 長期目標(退院時):ADL・身体機能の最大化

を明確に設定することが重要です。

回復期における「攻めの栄養療法」の考え方

回復期では、原則としてほぼすべての患者が「攻めの栄養療法」の適応となります。褥瘡や尿路感染症などの合併症がある場合でも、治療と並行して実践することが望まれます。

  • 筋肉量・脂肪量が少なくても、筋力トレーニングが可能な症例では→ 筋肉量・筋力の改善が期待できる

  • 一方で、寝たきりなど ADL 改善がほぼ見込めない症例では→ 栄養負荷が脂肪量のみを増加させ、介護負担を増やす可能性あり

回復期における栄養負荷は、👉 筋肉量と脂肪量の両者を適切に増加させることを目的に行うべきです。

リハビリ強度と体組成のズレに注意

回復期病棟では、1日6~9単位という積極的な機能訓練が行われます。一見、身体機能が向上しているように見えても、

  • 体重減少

  • 骨格筋量の低下

が進行しているケースもあります。

そのため、

  • リハビリ強度

  • 体重・体組成の推移

繰り返しアセスメント・モニタリングし、筋肉量低下を招かないよう管理することが重要です。

慢性期(生活期)|「守りながら攻める」栄養療法

慢性期に多い栄養障害

長期療養型病棟や施設、在宅を含む慢性期では、

  • 低栄養:12~54%

  • サルコペニア:14~33%

と、栄養障害の合併率が非常に高いことが知られています。

慢性期患者は、

  • 要介護度が高い

  • 経管栄養患者が多い

  • 身体機能低下、嚥下障害、食欲不振、低体重

といった背景を有することが多く、急性期・回復期とは異なる注意点が必要です。

Refeeding syndrome に注意する

慢性期において、経腸栄養や静脈栄養で「攻めの栄養療法」を行う場合、

👉 Refeeding syndrome のリスク

を常に念頭に置く必要があります。

介入初期から overfeeding を目指すのではなく、

  1. 栄養障害の是正

  2. 徐々に投与量を増やす

  3. 厳密なモニタリング

を行うことが望ましいとされます。

リハビリと栄養の関係(慢性期の現実)

Crocker らのシステマティックレビュー・メタ解析では、リハビリ介入が ADL 自立や身体機能改善に有効であることが示されています。

ただし、

  • 回復期に比べリハ介入時間が短い

  • 長期介護を要する高齢者を対象としたリハ栄養研究が少ない

といった課題もあり、慢性期ではエビデンスが限定的であるのが現状です。

在宅医療における「攻めの栄養療法」の実際

地域在住高齢者に対して栄養療法を行う際は、

  • 情報が限られている

  • 簡便なスクリーニングツールに頼らざるを得ない

という制約があります。

在宅ならではの重要な連携

  • 低栄養・嚥下障害がある場合→ 歯科医師との連携

  • 日常生活を支える→ ケアマネジャー・介護スタッフとの連携

は不可欠です。

また、病院の治療食のような高度な栄養管理を在宅で再現することは難しい場合も多くあります。

在宅における適応とゴール設定

慢性期・在宅では、

  • 栄養障害の是正を前提に

  • 嚥下機能や身体機能の改善が見込める場合

に「攻めの栄養療法」が適応となります。

ただし、アセスメント手段が限られる分、

👉 より緻密な多職種連携と栄養プランニング

が求められます。

在宅栄養療法で最も大切なこと

在宅医療では、

  • 患者・家族の同意

  • 契約

  • ケアマネジャーによるケアプランへの組み込み

を経て栄養介入が行われます。

そのため、医療者側だけでなく、患者・家族が前向きであるケースが多いという利点があります。

一方で、

  • 栄養介入への理解が得られない

  • 管理栄養士の介入が困難

  • 「作る・食べる」が家族任せになる

など、継続の難しさも現実的な課題です。

在宅では、👉 家族のニーズに寄り添いながら、経済面・社会面も含めた現実的なゴール設定を行うことが、何より重要だといえます。

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