攻めの栄養療法を科学する⑮~口からの摂取をあきらめないための
- 賢一 内田
- 13 分前
- 読了時間: 4分

多職種による「攻める」アプローチ
■ KTバランスチャートが示す多職種連携の視点
口から食べることをあきらめないためには、一職種だけではなく、多職種がそれぞれの専門性を持ち寄り、重なり合いながら関わることが不可欠です。
KTバランスチャートの13項目は、以下のように各職種の専門性に沿って構成されています。
食べる意欲
全身状態
呼吸状態
口腔状態
認知機能(食事中)
咀嚼・送り込み
嚥下
姿勢・耐久性
食事動作
活動
摂食状況レベル
食物形態
栄養
これらは一見、**「担当職種が決まっている項目」**のように見えますが、実際には 専門分野を越えて互いが関与することで、チームとしての力が最大化されます。
KTバランスチャートは、「誰が悪い」「どこができない」ではなく、チームでどう支えるかを考える共通言語として機能します。
■ 口からの摂取をあきらめないための
摂食嚥下調整食と栄養補給の考え方
● 食物形態(KT⑫)の考え方
KTバランスチャートの⑫「食物形態」では、摂取状況に応じた段階的な分類が行われます。その目的は、安全・安楽・自律性を高めることです。
食物形態を選択する際に重要なポイントは以下の4点です。
摂食嚥下機能・嗜好・食欲に応じて選択できること
栄養状態を良好に保てること
誤嚥性肺炎などのリスクを低減できること
食欲低下や食事拒否を招かないよう、形態にこだわりすぎないこと
「安全」だけを優先しすぎると、結果的に食べる意欲や摂取量を奪ってしまうこともあります。
■ 摂食状況レベル・食物形態・栄養状態の評価例
● 摂食状況レベル
人工栄養のみ、または間接嚥下訓練のみ
少量の経口摂取は可能だが、主に人工栄養に依存
半分以上は経口摂取、補助的に人工栄養を使用
形態調整食を経口摂取(人工栄養なし)
普通食を経口摂取(人工栄養なし)
● 食物形態
口からは何も食べていない
ゼリー・ムース食
ペースト食
咀嚼食
普通食
● 栄養状態
とても悪い
悪い
悪くない
良い
とても良い
(※「口から食べる幸せをサポートする包括的スキル 第2版/医学書院」より)
■ 評価点に応じた「攻めの栄養補給戦略」
● 1点
経腸栄養量の確保が最優先
消化器症状・合併症の予防と対応が必要
● 2~3点
何らかの形で積極的な栄養補給が必要
全量摂取困難、エネルギー不足、体調変動による摂取不足が起こりやすい
通常食品のみで必要量を満たすことは困難なケースが多い
● 4点
食事内容が普通食に近づき、栄養補給の選択肢が広がる
嗜好を取り入れることで、食意欲が向上し摂取量が増えることも多い
● 5点
リハビリがより積極的に行われる段階
体重測定を含めた必要エネルギー評価が重要
■ 全段階に共通する重要ポイント:水分バランス
すべての段階で共通して重要なのが、水分の In / Out バランスの確認です。
経口摂取に注意が向きすぎて水分不足になる
経腸栄養からの離脱後に
食べたくない
ぼーっとする
リハに行く元気が出ない
といった症状が徐々に出現することがあります。
こうしたケースでは、短期間の静脈栄養で改善する場面を経験することも少なくありません。
一方で、心不全などで水分制限が必要な患者に対し、通常通り「1食コップ1杯+食間1回(計約1000mL以上)」を提供してしまい、後から水分制限指示に気づくケースもあり、注意が必要です。
■ 再栄養アセスメントの重要性
特に 2~4点の段階で、
経腸栄養を1日1~2回補助的に実施する場合
摂食嚥下調整食へ移行している場合
には、再栄養アセスメントが必須です。
摂取栄養量
体重減少率
リハビリの時間・内容
嚥下訓練の進行状況
これらを総合的に評価し、**「食形態だけを見る」のではなく、「全身状態を見る」**ことが、口からの摂取を継続・発展させる鍵となります。
■ まとめ
口から食べることをあきらめないためには、評価 → 共有 → 調整 → 再評価 を繰り返す、**多職種による“攻め続ける姿勢”**が不可欠です。
KTバランスチャートは、その挑戦を支える 共通言語であり、行動を後押しするツールです。
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