攻めの栄養療法を科学する⑰~KTバランスチャートを使用する際の注意点
- 賢一 内田
- 1 日前
- 読了時間: 3分

KTバランスチャートの各段階には、到達目標・次のステップへ進むための評価基準・必要な達成目標が明確に示されています。そのため、評価を行う際にはKTバランスチャート エッセンスノート⁴)を活用し、評価者間で基準を共有したうえで、正確な評価と多職種によるディスカッションを繰り返すことが重要です。
また、KTバランスチャートは「点数を上げること」自体を目的とするツールではありません。
終末期にある方では、病状の進行に伴いスコアが低下していくこともあります。そのような場面では、
点数を維持することが最善なのか
本人のQOL(生活の質)を考えたときに、どのような支援が適切なのか
をあらためて考える必要があります。数値の変化を「評価」ではなく「意味づけ」する視点が求められます。
■ 予防から小児まで広がる活用可能性
KTバランスチャートは、終末期だけでなく フレイル高齢者への予防的アプローチ にも活用可能です。
フレイル予防の視点では、口腔機能・身体活動・栄養状態・社会参加の維持を早期に評価できる
健康寿命延伸を目的とした介入ポイントを可視化できる
また、障害のある小児に対しても、成長・発達段階に応じて「今できている機能」「今後伸ばせる機能」を確認するツールとして活用できます。
このようにKTバランスチャートは、「治療」だけでなく、「予防」「成長」「生活」を支える評価ツールでもあります。
■ KTバランスチャートによる評価と支援のサイクル
KTバランスチャートは、以下のような評価と支援の循環を作ることができます。
評価基準に沿って点数化
レーダーチャートを作成
強みと不足部分を可視化
アセスメント (なぜその点数になっているのか、原因・誘因を検討)
アプローチの具体策をプラン化
治療・ケア・リハビリテーションの実施
実践結果をフィードバックし、関係者で共有→ 再評価へ
このサイクルを繰り返すことで、評価が「行動につながる」仕組みが自然に形成されます。
おわりに
―「口からの摂取をあきらめない」取り組みを地域へ ―
現在、NPO法人口から食べる幸せを守る会(KTSM)では、「口からの摂取をあきらめない」取り組みを地域へ広げる活動として、食事サポーター養成を行っています。
超高齢社会を迎えた日本では、「口から食べる支援」を病院や施設だけに任せるのではなく、地域住民一人ひとりが正しい知識を持ち、関わっていくことが必要です。
今後、要介護高齢者の増加に伴い、摂食嚥下障害はさらに増加していくと予想されます。
「口から食べる」ことを支える取り組みは、
口腔機能の維持
身体活動の促進
栄養状態の改善
社会参加の継続
につながり、フレイル対策・介護予防・食育にも貢献します。
これらの取り組みを地域へ展開することは、健康寿命の延伸、介護予防、さらには医療費・介護費の抑制にもつながります。
そして何より、
「人生の最期まで、食べて幸せに暮らしたい」
という、誰もが願う人生のテーマの実現につながります。
小山氏が食事サポーター養成を構想した背景には、まさにこの想いがあります⁵)。
■ 食事サポーターの役割
食事サポーターは、
口から安全に食べるための正しい知識を持つ
食事を自力で摂取することが難しい人への理解を深める
基本的な食事介助方法を修得する
ことで、大切な家族の「食べる幸せ」を守り、安心した生活を支える存在です。
今後、食事サポーターのニーズはますます高まっていくでしょう。「幸せに食べ続けられる社会」を実現するために、管理栄養士をはじめとする専門職こそが、行動を起こす時代に来ています。
▼ ブログ用タグ
#KTバランスチャート#口から食べる#摂食嚥下#多職種連携#フレイル予防#食事サポーター#在宅医療#健康寿命#介護予防#管理栄養士の役割




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