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在宅医療における認知症について24~抗認知症薬の効果をどう説明するか ― 治験データから学ぶポイント

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 8月26日
  • 読了時間: 3分

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抗認知症薬を始めるとき、患者さんやご家族から必ず聞かれるのが「どのくらい効くのですか?」という質問です。

その答えに使えるのが 国内治験データ です。海外データよりも日本の実臨床に近い形で行われており、より参考にしやすいと考えられます。

抗認知症薬の効果を評価する2つの基準

薬が「抗認知症薬」として承認されるためには、2つの効果が同時に証明される必要があります。

  1. 臨床的に意味のある効果 患者さんや介護者が実感できるような、生活や症状全体の改善。 → 評価方法:CIBIC-plus(全般的臨床症状評価)

  2. 認知症の中核症状への効果 記憶や見当識など、認知機能そのものの改善。 → 評価方法:MMSE、ADAS-cog、SIBなどの認知機能検査

👉 この両方が満たされて初めて「効果がある薬」と認められます。

ドネペジルの臨床データ(CIBIC-plusより)

下の表は、国内治験でのドネペジルの結果です。10mg群はプラセボ群と比べて有意に優れていました。

投与群

改善(著明改善+改善+軽度改善)

不変

悪化(軽度~著明悪化)

10mg

約47%

約22%

約31%

5mg

約42%

約28%

約30%

プラセボ

約29%

約30%

約40%

📊 ポイント

  • 改善した人の割合は、プラセボよりドネペジル群で多い

  • 特に10mg群の方が、改善の割合が高い

  • ただし「全員が改善するわけではない」

効果をどう伝えるか?

ご家族に説明するときには、こう表現すると分かりやすいです。

  • 「薬で劇的に良くなるわけではありません」

  • 「ただし、同じように見えても薬を使わない場合より進行がゆるやかになる方がいます」

  • 「10人中3~4人は、少なくとも一時的に改善が見られるというデータがあります」

👉 つまり、効き方には個人差があり、“少しでも症状の進行を遅らせる”ことが主な目的 なのです。

なぜ2つの基準が必要か?

  • 認知機能検査(点数)だけで差が出ても、本人や家族が実感できなければ「意味のある改善」とは言えません。

  • 一方、全般的な症状評価だけで改善が出ても、実は「眠くなる薬のおかげで落ち着いただけ」というケースもあります。

この両方を確認することで、初めて「本当に認知症に効いた」と言えるのです。

まとめ

  • 抗認知症薬は「症状を治す薬」ではなく「進行を遅らせる薬」。

  • 効果が出る人と出ない人がいる。

  • データ的には「10人に3~4人は一時的に改善」が期待できる。

  • 効果を説明するときは「期待しすぎず、進行を少しでも遅らせるため」と伝えることが大切。

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