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パーキンソン病を科学する25⑥~【注目の抗体治療】凝集型αシヌクレインに対するモノクローナル抗体の効果は?

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 6月21日
  • 読了時間: 2分

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パーキンソン病やレビー小体型認知症といった神経変性疾患では、脳内に異常なタンパク質「αシヌクレイン」が蓄積することが知られています。特に、このαシヌクレインが凝集することで神経細胞が障害されると考えられており、その凝集体を標的とした治療開発が進められています。

今回は、**ヒト由来のモノクローナル抗体「シンパネマブ(Cinpanemab)」および「プラシネズマブ(Prasinezumab)」**を用いた臨床試験の結果についてご紹介します。

■ 抗体注入による病理変化の確認(マウスモデル)

図左側では、マウスの脳にαシヌクレインを注入した後の病理像が示されています。右半球(注入側)では、歯状回や扁桃体において強いαシヌクレインの蓄積が確認され、抗体治療によってその沈着が軽減されることが示唆されました。

また、脳断面の図(中央)では、αシヌクレインの広がりと注入部位(青枠)が明示されており、神経ネットワークを通じて病変が広がる様子が視覚的に捉えられます。

■ 臨床試験の結果(ヒト対象)

右側のグラフは、実際のヒトにおける第2相試験の結果を示したものです。

  • Cinpanemab(上図):プラセボ群と比較して、各用量群で明確な優位性は示されず、有効性に関する結論は限定的。

  • Prasinezumab(下図):高用量群(4500mg)では、やや改善傾向が認められましたが、統計学的に明確な有効性の確立には至りませんでした。

■ 今後の展望

両抗体はいずれも、αシヌクレインの凝集体に対して選択的に結合するよう設計されていますが、実臨床での明確な有効性は今後の更なる研究を待つ必要があります。ただし、安全性の確認とともに、病態修飾的アプローチとしての期待は依然高く、今後の大規模第3相試験の行方が注目されます。

引用文献:

  • Brain. 2013 Apr;136(Pt 4):1128-38.

  • N Engl J Med 2022; 387:408-420 [doi:10.1056/NEJMoa2203395]

  • N Engl J Med 2022; 387:421-432 [doi:10.1056/NEJMoa2202867]

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