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高齢者の「隠れアルコール依存症」――孤独と生活の変化が招く飲酒リスク

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 7月30日
  • 読了時間: 3分

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「少しだけなら大丈夫」「晩酌が楽しみ」――そんな気持ちで始まった飲酒が、いつの間にか日常を蝕んでいるかもしれません。特に近年、高齢者のアルコール依存症が増加傾向にあることが報告されています。背景には、孤独や生活の変化が潜んでいます。

生活習慣病のリスクを高める「純アルコール量」

厚生労働省によると、1日あたりの純アルコール摂取量が、男性で40g以上、女性で20g以上になると、生活習慣病リスクが高まるとされています。

たとえば、純アルコール20gは以下に相当します:

  • ビール(5%)中瓶1本(500ml)

  • 日本酒(15%)1合(180ml)

  • 酎ハイ(7%)1缶(350ml)

  • ウイスキー(43%)ダブル1杯(60ml)

わずか中瓶1本のビールでも、女性にとっては「高リスク」のラインを超えるのです。

孤独と不安が「飲酒」に向かわせる

高齢者の飲酒問題は、しばしば定年退職や配偶者の死別など、環境の変化をきっかけに始まります。

千葉市の断酒会に参加したある女性は、夫の変化をこう語ります。

「退職後、夫は昼間から飲むようになり、ベッドで酒に溺れる日々に。食事も摂らず、がりがりに痩せていきました」

フリーランスの仕事のストレスや生活の孤独が、酒への依存を深めたと振り返ります。入院を経て断酒会に通い、最終的に夫は酒を断って穏やかな最期を迎えました。

高齢者の体は「酒に弱くなる」

久里浜医療センター(神奈川県)の横山医師は、こう警鐘を鳴らします。

「高齢者は体内の水分量が減り、筋肉量も少ない。若い頃よりアルコールの影響を強く受けやすいのです」

さらに、脳の萎縮が進む高齢期では、少量の飲酒でも転倒・せん妄・暴言などのリスクが増加します。アルコールは骨粗鬆症、認知症、がんの発症リスクも高めるとされています。

医療機関での受診、そして「断酒会」という支え

断酒には医療的な支援が必要です。「飲酒を減らせない」「酒をやめると不眠や不安が出る」という方は、専門医療機関への受診が勧められます。ハードルが高いと感じる場合は、まずは地域の保健所に相談することから始めましょう。

また、全国にある「断酒会」も重要なサポートの場です。仲間と経験を共有し、支え合いながら断酒を続けることができます。

「飲酒すれば依存症は再発する」――長年断酒を続ける女性も、今なお「自分との闘い」と表現します。

図解で見る:高齢者のアルコール依存の現状

▲1日あたりの「純アルコール20g」はこのくらい

▲65歳以上のアルコール問題での受診者割合の推移(国立病院機構 久里浜医療センター調べ)

まとめ

高齢者の飲酒は、単なる嗜好ではなく健康リスクに直結する問題です。もし家族や周囲に飲酒量が気になる方がいれば、優しく声をかけ、必要に応じて医療や地域の支援に繋げていきましょう。

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