パーキンソン病は、中脳黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性の疾患です。診断に関してはMIBG心筋シンチグラフィーと呼ばれる、心臓の交感神経の状態を診る検査を行う場合もあります。これは、MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)というノルエピネフリン(ノルアドレナリンとも呼ばれる)とよく似た物質を含む検査薬を服用したときに、この薬剤が心臓に集まる程度を画像で評価する検査です。パーキンソン病の患者さんでは、この薬剤が心臓に集まらないことが知られているのを利用して、診断の参考にすることがあります。またドーパミントランスポーター(DAT)イメージングと呼ばれる検査方法もあります。DATは、脳で信号のやりとりをしているドーパミンの再利用を促すたんぱく質ですが、このDATの働きを可視化することでパーキンソン病を診断します。パーキンソン病の4大症状としては、振戦、筋固縮、無動、姿勢反射障害があります。
具体的な症状を上げると、「動作が遅くなった」、「声が小さくなった」、「表情が少なくなった」、「歩き方がふらふらする」、「転倒しやすくなった」、「歩幅が狭くなった(小刻み歩行)」、「歩行開始時に足が出にくい」、「手が震える」、「止まれず走り出すことがある」、「手足が固い」などです。
このようなパーキンソン病でみられる症状が、薬の副作用でも起こってしまう(薬剤性パーキンソニズムと呼ばれます)ことがあります。
パーキンソニズムを起こす薬は様々ありますが、ドパミン拮抗作用を持つ薬がほとんどで、なかでも抗精神病薬が有名です。
気をつけなければならないのは、思わぬ薬にパーキンソニズムを起こす薬があることです。これを知らないと、漫然と処方され続けたり、薬剤性パーキンソニズムに対して抗パーキンソン病薬が処方されれば、薬の副作用を薬で抑えることになり、さらに別の副作用がでるということにもなりかねません。一般医がよく処方し、薬剤性パーキンソニズムの原因となりうる薬剤は、制吐薬のプリンペラン、ナウゼリン、カルシウム拮抗薬のワソラン、ヘルベッサー、抗ヒスタミン薬のアタラックスP、コリンエステラーゼ阻害薬のアリセプトなどです。抗精神病薬の中では、せん妄時によく処方されるセレネース、リスパダール、食欲がないときに処方されるドグマチール、悪心嘔吐時に処方されるノバミンが薬剤性パーキンソニズムを起こしやすいので注意が必要です。私自身、特に注意したいのはアリセプトです。認知症の治療薬であり、様々な症状が認知症に周辺症状と片付けられてしまう場合があります。少しでもこうした症状を疑った場合は、肘に筋固縮がでていないかをみることが重要です。薬剤性パーキンソニズムの症状の特徴としては、以下があります。
・進行が速い
・突進現象は少ない
・症状は左右差が少なく、対称性のことが多い
・姿勢時、動作時振戦が生じやすい(パーキンソン病は安静時振戦)
・アカシジア(じっとしていられない)やジスキネジア(体が勝手に動いてしまう)を伴うことが多い
・抗パーキンソン病薬は効きづらい
薬剤性パーキンソニズムが疑われる場合は、当然のことながら、原因と思われる薬剤の中止が必要です。
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