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逗子、葉山、鎌倉、横須賀、横浜市金沢区の在宅医療

神奈川県逗子市桜山2-2-54
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看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する51~エコーで腹水量を推定する方法
〜体腔液の性状と臨床判断のポイント〜 ① 腹水量の目安をエコーで評価する 腹水がどの程度たまっているのかを知ることは、治療方針を立てるうえで非常に重要です。CTなどの精密検査ができない場面でも、 エコー(超音波)を用いた簡便な腹水量推定法 が考案されています。 この方法では、 腹水の分布と厚み を基準に概ねの貯留量を推定します。 腹水の分布 推定量(mL) モリソン窩や脾腎境界のみ 約150mL ダグラス窩または膀胱上窩のみ 約400mL 左横隔膜下にわずかに貯留 約600〜800mL 両側傍結腸溝(左右結腸腹側)にも貯留 約1,000〜1,500mL 右横隔膜下に厚み1.0cm 約2,000mL 右横隔膜下に厚み2.0cm 約3,000mL ※仰臥位・体重50kgの成人を標準とした推定値(文献8より引用) このように、**液体の「分布範囲」と「厚み」**を観察することで、体腔全体の腹水量をある程度把握できます。 ② 貯留液の性状を観察する 胸水や腹水は、通常は**漿液性(透明な液体) で、エコー上は 無エコー域(黒く抜けた領域)**として描出さ
10月28日読了時間: 3分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する50~胸水・腹水をエコーで観察する ― 横隔膜を中心にしたアプローチ法
1. 横隔膜を境に「胸水」と「腹水」を見分ける 胸水や腹水を観察する際、まず注目すべきは 横隔膜 です。横隔膜は、胸腔と腹腔を分ける“仕切り”のような構造であり、液体がどちら側にあるかで病態の判断が変わります。 エコーでは、肋間から両側を走査します。 右側 :肝臓(右葉)を目標に走査 左側 :脾臓を目標に走査 横隔膜の 頭側(上側)に液体が見えれば胸水 、 尾側(下側)であれば腹水 と判断します。右肋間走査では、少し尾側にずらして**モリソン窩(肝と右腎の間)**の観察も行います。 さらに、下腹部の 正中縦断走査でダグラス窩 を観察。上腹部正中では 肝左葉周囲と心嚢液の有無 も確認します。最後に、 左右の傍結腸溝 もチェックしておくと、腹水の分布をより正確に把握できます。 2. 短時間で液体貯留を確認する「FAST」法 エコーによる胸水・腹水の検索では、**FAST(Focused Assessment with Sonography for Trauma)**という考え方が参考になります。 もともとは外傷初療で 体幹部出血を迅速に評価するための
10月27日読了時間: 3分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する49~エコーでアプローチする胸腔・腹腔の基礎知識
〜胸水・腹水の「たまりやすい場所」を理解する〜 胸腔と腹腔の構造 胸腔は、 肺の表面を覆う臓側胸膜 と、 胸郭内側を覆う壁側胸膜 の間にある空間です。ここに液体がたまると「胸水」と呼ばれます。少量の胸水は 肺の底(横隔膜に近い背側)にたまり、次第に肺全体を取り囲むように広がります。量が増えると、肺を圧迫して呼吸苦や無気肺 を引き起こすこともあります。 一方、腹腔は 臓器の表面を覆う臓側腹膜 と 腹壁内側を覆う壁側腹膜 の間の空間で、ひとつながりの体腔です。臓器が入り組んでいるため、液体は特定の「たまりやすい場所(リセス)」に集まりやすく、以下のような部位が代表的です。 右横隔膜下腔(肝臓の上) モリソン窩(肝と右腎の間) 左右の傍結腸溝 ダグラス窩(骨盤底の最も低い部分) 仰臥位(あお向け)での液体貯留部位 患者さんが仰臥位になると、液体は 重力により最も低い位置 に集まります。胸腔では 横隔膜上部の肺底部背側 、腹腔では ダグラス窩 → 横隔膜下 → モリソン窩 の順に貯留しやすいとされています。そのため、これらの部位を意識して走査することで、
10月26日読了時間: 3分


一緒に働く仲間の在宅医療への想いを更新しました。
一緒に働く仲間の在宅医療への想い | さくら在宅クリニック ──さくら在宅クリニックに新しい仲間が加わりました── このたび、私たち「さくら在宅クリニック」に新たな仲間が加わりました。脳外科・救急科・総合診療・看護・事務・アシスタントなど、多様な専門性を持つスタッフが、「患者様第一」の想いを胸に、地域の在宅医療を支えています。今回は、その一人ひとりの“在宅医療への想い”をご紹介します。 ■ 永峯 医師 ― 人生の大切な時間に寄り添う責任 ― 「老い」と「病」、そして「死」。そのどれもが人生の一部。だからこそ、穏やかな時間を共に過ごしたい。 訪問診療の現場では、医療だけでなく、患者様やご家族の想いに深く触れる瞬間が多くあります。永峯先生は、医師として「謙虚な心を持ち、一人ひとりの思いに耳を傾けること」を大切にしています。 「在宅医療とは、患者様とご家族の歩みに寄り添いながら、一緒に時間を重ねていく医療です。」 ■ 岸野 医師 ― 救急から在宅へ。すべての命に向き合う“総合力”を ― 救急科専門医として長年、救命救急センターで重症患者を支えてきた岸野
10月25日読了時間: 4分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する48~胸水・腹水におけるエコー(超音波検査)の役割
胸水・腹水とは? 胸腔や腹腔の中には、臓器がスムーズに動くための ごく少量の水分 が存在しています。しかし、心不全や感染、腫瘍などの原因によって 過剰に水がたまる ことがあります。胸腔内にたまる場合を「 胸水 」、腹腔内にたまる場合を「 腹水 」と呼びます。 胸水では呼吸苦、腹水ではお腹の張り(膨満感)を訴えることが多く、在宅医療でもしばしば遭遇する病態です。 滲出性と漏出性 ― 原因による分類 胸水や腹水は、その成分によって大きく**滲出性(しんしゅつせい) と 漏出性(ろうしゅつせい)**に分けられます。 滲出性 :炎症やがんなどにより、血管からタンパク質を多く含んだ液体がしみ出すタイプ→ 例:肺炎やがん性胸膜炎、がん性腹膜炎など 漏出性 :血管内外の圧力バランスが崩れ、薄い液体が漏れ出すタイプ→ 例:うっ血性心不全、肝硬変など 腹水では、がんや肝硬変が主な原因で、胸水では心不全や感染が多くみられます。 検査方法 ― CTやX線だけではない 胸水や腹水の有無を調べる際、病院では一般的に 胸部X線やCT検査 が用いられます。胸水は 150mL以
10月25日読了時間: 3分


在宅医療における認知症について52~【認知症ケアの基本】―家庭で“失敗体験”をさせない、そして“役割”を持ってもらう―
認知症の人が家庭で安心して暮らし続けるためには、 本人の尊厳を守る環境づくり が何より大切です。そのために、家庭内で守るべき2つの原則があります。 ① 本人に「失敗体験」をさせない できないことを無理にさせたり、難しい課題を与え続けたりすると、本人の 自信と意欲を失わせる 結果になります。 料理の段取りがうまくできないのに手順を一人で任せる 複雑な計算ドリルを延々とやらせる 同じ質問に叱責で返す これらはすべて、本人の「できなかった」という体験を積み重ねることになり、不安・焦燥・抑うつを悪化させる BPSDの引き金 になりかねません。 家族にはこう伝えましょう。 「失敗すればするほど、不安が強くなります。」「難しい課題を無理にさせても、認知機能の改善にはつながりません。」 本人が“できる範囲で達成感を得られる活動”を選び、 小さな成功体験を積み重ねる ことが大切です。 ② 本人にできる家事をしてもらう 何もしない時間が長くなると、心身機能が低下していく「廃用症候群」を招きます。頼まれごとがなく、ただ一日中ぼんやり過ごすだけでも、BPSD(不安・焦
10月24日読了時間: 3分


在宅医療における認知症について51~【認知症ケアの基本】
―外出機会が乏しい人にはデイサービスを― 認知症の人にとって、外出や社会的交流の機会は「脳の活性化」と「生活リズムの維持」に直結します。仕事や地域活動がなく、家に閉じこもりがちな場合は、 デイサービスの利用 が最も効果的な非薬物療法です。 ■ デイサービスは“非薬物療法”の中心 英国の NICE(国立医療技術評価機構)認知症ガイドライン では、軽度〜中等度の認知症に対して、 「構造化された集団認知刺激療法(Cognitive Stimulation Therapy:CST)への参加機会を与えるべき」と明記されています。 日本の介護保険制度でいう デイサービス は、まさにこのCSTに相当する取り組みです。 ■ 科学的根拠が示す“デイサービスの効果” 日本で行われた認知症治療薬の臨床試験解析(GAL-JPNシリーズ・メマンチン国内第Ⅲ相試験)では、薬を使っていない プラセボ群の中でも、介護サービスを利用していた人のほうが 、 全般的臨床評価(CIBIC-plus) 認知機能スコア(SIB)でより良い結果を示しました。 つまり、 介護サービス(デイサー
10月23日読了時間: 3分


在宅医療における認知症について50~【認知症ケアの基本的対応】―最初に確認すべき5つの優先順位―
認知症が疑われたとき、すぐに薬や介護サービスを考える前に、まず行うべきことがあります。それは「 診断の確定と除外 」です。 まずは、内科的・脳外科的疾患による可逆的な認知機能低下(例:甲状腺機能低下、慢性硬膜下血腫、感染症など)を除外し、次に「薬剤による認知機能低下」がないか確認し、必要なら 減薬 を行います。 これらを終えたうえで「認知症性疾患である」と判断された場合、次の5つの対応方針を念頭におきましょう。 🧩 認知症対応の5つの優先順位 危険動作はやめてもらう 仕事や社会的活動はできるだけ続けてもらう 外出機会が少ない人にはデイサービスを利用してもらう 家庭では“失敗体験”をさせない 家庭内でできる家事は本人にやってもらう この順番を意識するだけで、日常対応の迷いがぐっと減ります。以下、それぞれのポイントを具体的に見ていきます。 ① 危険動作はやめてもらう ― 安全がすべての出発点 認知症ケアの第一歩は「 安全の確保 」です。本人や家族の希望よりもまず優先すべきは、“事故を防ぐこと”。このステップを乗り越えれば、早すぎる入所を防ぐことにも
10月22日読了時間: 4分


在宅医療における認知症について49~【抗精神病薬②】―使用の適応と、減薬・中止の考え方―
認知症のBPSD(行動・心理症状)に対して、 抗精神病薬 を使うかどうかは非常に難しい判断です。効果は確かにありますが、その一方で 死亡率上昇という重大なリスク が伴います。では、どんなときに使うべきなのでしょうか。 ■ 抗精神病薬が「やむを得ない」ケース 多くの国内外のガイドラインでは、 「 非薬物療法で対応しても自傷他害のおそれがある場合 に限って使用する」と明記されています。 つまり、 本当に命や安全を守るためにしか使わない薬 です。 たとえば── 幻視によって「畳に虫がいる」と思い込み、ろうそくで畳を焼こうとする人 「妻が浮気をしている」という妄想から、ゴルフクラブで攻撃しようとする人 このように、 介護者の安全が脅かされる状況 では、副作用リスクを理解した上で「薬を使わないことの危険性」と比較検討する必要があります。 抗精神病薬を使えば危険性は確かに高まりますが、使わなければ 火事や暴力などの重大事故 に発展しかねません。つまり、命を守るための“非常手段”として使用が検討されるのです。 ■ 家族と共有すべき「具体的な数字」...
10月21日読了時間: 4分


在宅医療における認知症について48~【抗精神病薬】―BPSDに「効く」が、「危険」も伴う薬―
認知症のBPSD(行動・心理症状)──とくに興奮・暴言・幻覚・妄想などが強い場合、医師が処方を検討する薬のひとつに 抗精神病薬 があります。 抑肝散やトラゾドンに比べると、抗精神病薬は 確実な効果 が期待できる一方で、 重大な副作用リスク を伴う薬であることを忘れてはなりません。 ■ 抗精神病薬の効果と危険性 BPSDに対する 非定型抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン、クエチアピンなど)の効果を検証した無作為化二重盲検試験のレビューでは、確かに興奮・攻撃性・幻覚などの症状が有意に改善 しました。 しかし同時に、以下の リスク上昇 が明らかになっています。 強い眠気・ふらつき 錐体外路症状(パーキンソン様症状) 脳血管障害(脳梗塞・脳出血など) 尿路感染症・浮腫・歩行障害 死亡率の上昇 つまり、「効くが危険」という薬なのです。 ■ FDAの警告:死亡リスクは1.6〜1.7倍 2005年、 アメリカ食品医薬品局(FDA)は、非定型抗精神病薬を認知症患者に使用すると死亡率がプラセボの1.6〜1.7倍 になると警告しました。2008年には定型抗精神病
10月20日読了時間: 3分
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