「菌が出た=治療」ではありません
- 賢一 内田
- 7月8日
- 読了時間: 2分

~90代の施設入居者さんの膀胱カテーテル管理から考える~
今回は、膀胱留置カテーテルを長期間使用されている患者さんの症例をご紹介します。
90代・施設入居中の方で、約3年前より尿閉のため膀胱カテーテルを留置されています。最近、当院の訪問診療を開始しました。
施設に確認すると、今まで2週間ごとのカテーテル交換時に必ず尿培養が行われており、菌が検出されるたびに抗生剤が処方されていたとのこと。実際には発熱や排尿痛といった症状がないにもかかわらず、**「菌が出たから抗生剤を出す」**という対応が慢性的に繰り返されていました。
結果としてどうなったか?
・薬剤耐性菌が検出されるようになった・施設では患者さんが触れた場所を過剰にアルコール消毒・患者さん自身も「自分は汚い存在」と感じてしまい、「死にたい」と訴えるように…
このような事態を招いた原因は――**最初の“ボタンの掛け違い”**にあります。
治療すべきは「無症候性細菌尿」ではない
実はこのケース、出発点は**無症候性細菌尿(症状のない菌の検出)**に対して抗生剤を使ってしまったことにあります。菌がいたとしても、発熱・頻尿・排尿時痛などの症状がない場合には、基本的に治療の対象にはなりません。
当院では「症状がある時だけ抗生剤を使う」という原則に切り替えました。施設にも以下のように伝えました。
薬剤耐性菌=危険な菌 ではありません
他の入居者と同じように接してよい
過剰なアルコール消毒は不要です
4ヶ月経過後の現在
抗生剤は一切使用せずに経過をみています。多少の血尿や尿臭、尿もれはありますが、発熱や全身状態の悪化はなく安定しています。
この考え方は、実は褥瘡や創傷治療でも同じです。創部から菌が出たからといって、必ずしも抗菌薬や外科的処置が必要なわけではありません。治療が必要なのは「感染の徴候(発赤・腫脹・熱感・疼痛)」が出たときです。
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