認知症について家族へ向けて2~「もの忘れ」と「記憶障害」はどう違う?
- 2 時間前
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「もの忘れ」と「記憶障害」はどう違う?―― ミステリートレインの旅から学ぶ認知症の世界
今まで、どちらかと言えば医療向けでブログ書いてきましたが、少しご家族からの要望もあり物語風にして
御家族向けに認知症についてできる限り分かり易く解説してまいります。
「最近、もの忘れがひどくなった」――それは誰にでも起こること。しかし、認知症による「記憶障害」は、そのひとことでは語れない深さがあります。
今回は、ストーリーをもとに、「もの忘れ」と「記憶障害」の違いと、在宅ケアで大切にしたい視点をお伝えします。
「もの忘れ」と「記憶障害」、何が違うのか?
人の記憶はもともと曖昧なものです。予定をうっかり忘れる、使い慣れた単語が出てこない……これらは日常的な「もの忘れ」です。
では、認知症でみられる「記憶障害」はどう違うのでしょうか? 本書はわかりやすい例で説明しています。

手帳に予定が書き込まれていても、「書き込んだこと」を覚えていないため、その予定が本当なのかどうか確証が持てない。これが記憶障害の日常です。
「ミステリートレイン」とは、乗るとだんだん記憶をなくしていくトレインの比喩です。ある方の体験談を紹介します。

旅人の声(本人の体験)
いつもの通勤電車に乗り、少しぼーっとしたとき、ふと気づくと「自分は今どこにいるのか、どこに向かっているのか、どこから来たのか」がまったくわからなくなっていた。窓の外を見ても何も思い出せず、電車は終点まで行ってしまった。定期券を見て、ようやく目的地がわかった。
これは、「降りる場所を忘れた」のではなく、「会社に向かっていたこと自体」を忘れたのです。過去も現在も未来も、すべての記憶が突然すっぽりとなくなってしまう状態です。
記憶とは「記銘 → 保持 → 想起」のプロセス
記憶障害は、「記憶のプロセス」のどこかに問題があることで起きます。

実行する
このどこかが機能しないと、「電車から降りられなくなる」「メニューが思い出せなくなる」といった困りごとが生まれます。たとえば――
1
記銘のトラブル「しんじゅく=新宿」という意味への変換ができず、情報が頭に入らない
2
保持のトラブル一度覚えても、すぐに忘れてしまう(路線番号や出口の数字など)
3
想起のトラブルアナウンスを聞いても「次は浅草か」とは思えるが、「自分が降りる停留所」と結びつかない
4
行動のトラブル降りる場所はわかっているのに、なぜか自分の手がボタンに向かって伸びていかない
在宅生活で起きる「困りごと」一覧
こうした記憶のプロセスの障害は、日常生活のあちこちに影響します。以下に、まとめられている具体例を整理します。
心身機能障害 01体験や行為を記憶(記銘・保持・想起)できない
✓火をつけたことを忘れ、コンロで吹きこぼしてしまう
✓洗濯・料理していることを忘れる
✓お金を引き出したことを忘れ、「誰かが使った」と疑ってしまう
✓自分が注文したことを覚えていない
✓何度も同じ話を繰り返す
✓完了した仕事がどれかわからなくなる
心身機能障害 02知識・情報を記憶(記銘・保持・想起)できない
✓食事のメニューが思い浮かばない(ひき肉を見ても料理が出てこない)
✓薬を飲み忘れる(薬を飲まなければならないと思えない)
✓降車駅や目的地を忘れる・間違える
✓仕事で必要な商品情報が何度見ても覚えられない
心身機能障害 03自分の思い(考え・意図)とは異なる行動をしてしまう
✓意図せず他人の皿の料理を食べてしまう
✓電車ドアに立てない(意識しすぎて逆に動かないことも)
「工夫」が、その人らしい生活を守る
ミステリートレインの乗客は、その後こんな工夫をするようになりました。乗る駅と降りる駅を書いたメモをパスケースに入れ、首からかけて通勤する。「認知症のため、困っているときは手助けをお願いしたい」という一文も添えて。
メモを見せながら話すと声をかけやすいし、誰も変な目で見ることはなく、親切に教えてくれます。
さくら在宅クリニックでは、こうした「ちょっとした工夫」を、ご本人・ご家族・多職種チームで一緒に考えることを大切にしています。その人の「できること」を最大限に活かし、尊厳ある生活を続けるための在宅医療を目指しています。
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