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脳外科医から在宅医へ──20年を経て見えてきた「本当に人の役に立つ医療」

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 7月20日
  • 読了時間: 2分

自己紹介に代えて:脳外科という世界に魅せられて

脳外科医を志してから、気づけば20年以上の月日が経ちました。これまで本当に多くの手術を担当させていただき、まさに「手術の世界」に魅了された日々でした(はい、過去形です)。

脳動脈瘤、脳腫瘍、血管障害…。特に未破裂脳動脈瘤に関しては、開頭クリッピング術を150例以上、血管内コイル塞栓術を200例以上、自らの手で行ってきました。術中破裂や後遺障害の経験は一度もなく、「手術の腕は確か」と言っていただくことも多かったです。

それでも──自問し続けた「この手術は、誰の幸せのためか」

どれだけ成功率が高くても、果たして自分の仕事は「本当に患者さんを幸せにしているのだろうか?」──そう問い続けた20年でした。

未破裂脳動脈瘤は、年間破裂率が約1%。生涯リスクをどう考えるかは、医師にも患者さんにも重い判断を迫ります。そして、自分自身が初めて合併症を経験したあの日、その問いは一層重く胸にのしかかりました。

もう一度、医師としての原点へ

この先の医師としての時間を、もっと「本当に人の役に立つ医療」に捧げたい。その想いが、私を在宅医療の世界へと導きました。

手術では救えない。病院にも通えない。けれども、医療の手を必要としている。人生の終わりを、病院ではなく住み慣れた自宅で迎えたい。

そんな患者さんに寄り添い、人生の最期まで「生きる」を支える医療を届けたいと考えています。

臨床という「言語」で、心にふれる仕事を

優れた音楽家がピアノやバイオリンを通じて人の心を震わせるように、私は「臨床」という言語を通して、少しでも患者さんやご家族の心にふれられたら──。そんな想いで、日々の診療に向き合っています。

命や健康を託していただく以上、自らも身を削る覚悟はできています。医師を志したあの頃の、青くて熱い想いは、今も変わっていません。

素晴らしい仲間とチームに恵まれている今、この身体を最大限に使って、誰かの役に立つこと。それこそが、自分に与えられたギフトなのだと感じています。

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