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看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する15~食事中の誤嚥や咽頭残留を「見える化」する ― エコーでの嚥下観察の手技と対処法 ―

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 8月5日
  • 読了時間: 3分


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はじめに

嚥下障害のケアでは、「誤嚥」や「咽頭残留」を的確に捉えることが非常に重要です。近年、**エコー(超音波)**を用いた嚥下観察が注目されており、ベッドサイドでも簡便に実施できる非侵襲的な評価手段として普及しつつあります。この記事では、エコーによる嚥下観察の基本的な手技や、異常所見に対する具体的な対処法を解説します。

1. 観察の基本手順

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● 正常な状態を把握しておく

エコー観察では、あらかじめ食塊(しょっかい)が存在しない正常な画像を確認しておくことが大切です。正常像を知っておくことで、嚥下中に現れる「本来は観察されないエリアの高エコー域(=食塊の存在)」を識別しやすくなります。

● 動画観察のすすめ

嚥下動作は一連の動きです。動画で食塊の流れを見ることにより、異常の見落としを防ぐことができます。

2. 誤嚥と咽頭残留のエコー所見

● 誤嚥のサインとは

液体や食物に含まれる気泡は、エコーでは**高エコー(白く反射)**として観察されます。通常、**気管内は低エコー域(黒く抜けて見える)**ですが、嚥下中に気管内に高エコー域が流れる場合、誤嚥の疑いがあります。

● 咽頭残留の見分け方

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嚥下後、梨状窩(りじょうか)や喉頭蓋谷(こうとうがいこく)に高エコー域が残っている場合、咽頭残留が疑われます。これも、食塊内部の気泡が反射することで視認されます。

3. 所見に応じた対処法

◉ 誤嚥が見られた場合の対応

  • 食事や水分にとろみをつける

  • 姿勢調整(30〜60度のリクライニング)により嚥下反射の誘導を強化

  • 誤嚥が減らない場合は、VF(嚥下造影)やVE(嚥下内視鏡)などの専門検査の検討を

◉ 咽頭残留が見られた場合の対応

  • 交互嚥下(ゼリーなどを間に飲ませる)

  • 複数回嚥下で残留を排出

  • 一口量の調整

  • 吸引の併用→ いずれも再評価のために再度エコー観察を行うと有効です。

4. 喉頭蓋谷の残留にも注意

嚥下後の**喉頭蓋谷(こうとうがいこく)**も、残留がなければ低エコーで見えるはずです。嚥下後に高エコーが見える場合、食塊の一部が残留している可能性があります。誤嚥や窒息リスクを高めるため、対処が必要です。

5. 看護やリハビリの現場での活用へ

エコーによる嚥下観察は、日常の食事場面で、安全に・繰り返し・患者に負担なく実施できる評価方法です。今後、看護師やリハスタッフが積極的にベッドサイドで活用していくことで、**「また食べられる喜び」**を多くの方に取り戻す手助けとなるでしょう。

参考文献

 
 
 

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