top of page

攻めの栄養療法を科学する27~「攻めの栄養療法」は誰にでも有効ではない

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 2025年12月28日
  • 読了時間: 3分


― 禁忌を理解しない“栄養強化”は、かえって危険 ―

攻めの栄養療法」とは、体重や筋肉量を増やすことを目的に、単なる消費エネルギーだけでなく「エネルギーの蓄積分」も考慮してエネルギー必要量を設定する栄養療法です。

しかし、この方法はすべての患者さんに安全・有効とは限りません。

■ 攻めの栄養療法で本当に大切な視点

栄養量を増やす際には、

  • 糖質・脂質・たんぱく質の割合

  • 基礎疾患や合併症

  • 臓器機能(心・腎・肝など)

  • リハビリや運動療法の併用可否

を総合的に判断する必要があります。

病態を十分に理解せずにエネルギーだけを増やすと、

  • 病態の悪化

  • 心不全・呼吸不全

  • 電解質異常

  • 合併症の誘発

につながる危険があります。

特にリハビリや運動療法を併用しない場合、増えるのは「筋肉」ではなく脂肪だけになることも少なくありません。

👉 攻めの栄養療法は「適応を選ぶ治療」であり、👉 禁忌を理解したうえで慎重に行う必要があります。

低栄養患者における最大の注意点

― 飢餓と再摂食症候群(RFS) ―

■ 飢餓とは

飢餓とは、社会的要因や疾患により栄養摂取が著しく不足し、慢性的な低栄養状態に陥っている病態です。

飢餓時の体内変化

  1. 肝グリコーゲンからの糖供給(約1日で枯渇)

  2. 筋たんぱく分解 → アミノ酸放出 → 糖新生

  3. 長期化すると 脂質分解 → ケトン体産生 → エネルギー源として利用

■ 最も注意すべき合併症:再摂食症候群(Refeeding Syndrome)

再摂食症候群(RFS)とは、慢性的な飢餓状態の患者に糖質を中心とした栄養を急速に投与することで起こる、重篤な代謝性合併症です。

起こる変化

  • 細胞内への急激な水分・電解質移動

  • リン・マグネシウム・カリウム低下

  • ビタミンB1欠乏

  • 体液・代謝の急変

臨床的に起こり得る症状

  • 意識障害・昏睡

  • 痙攣・脳症

  • 不整脈・心不全

  • 呼吸不全

👉 「食べさせれば元気になる」は、最も危険な誤解の一つです。

■ RFS(再摂食症候群)のリスク評価(NICEガイドライン)

◉ At Risk

  • 5日以上ほとんど食べていない

◉ High Risk(以下のうち1項目以上)

  • BMI < 16.0 kg/m²

  • 3~6か月で 15%以上の意図しない体重減少

  • 10日以上ほとんど食べていない

  • 低K血症・低P血症・低Mg血症

◉ High Risk(以下のうち2項目以上)

  • BMI < 18.5 kg/m²

  • 3~6か月で 10%以上の体重減少

  • 5日以上ほとんど食べていない

  • アルコール依存、インスリン・抗がん剤・制酸薬・利尿薬使用

◉ Extremely High Risk

  • BMI < 14.0 kg/m²

  • 15日以上ほとんど食べていない

■ 飢餓状態での栄養投与の原則

  • 栄養開始前に 電解質評価

  • ビタミンB1:200~300 mg/day を先行投与

  • マルチビタミン・ミネラル併用

  • 初期エネルギー量

    • 10 kcal/kg/day

    • 重症例(BMI <14)では 5 kcal/kg/day

  • 4~7日かけて慎重に増量

👉 RFSリスクが高い場合、急激な糖質投与は禁忌👉 RFSが回避できれば、段階的に「攻めの栄養療法」へ移行可能

まとめ

攻めの栄養療法は「万能」ではない

  • 攻めの栄養療法は 適応を選ぶ治療

  • 飢餓・RFSリスク評価が最優先

  • 栄養 × 病態理解 × リハビリのセットが重要

  • 「量を増やす」より「安全に増やす」視点を

在宅医療・高齢者医療では、“食べさせる医療”ではなく、“守る栄養医療” が求められます。

🔗 関連リンク

🏷 タグ

#攻めの栄養療法#再摂食症候群#低栄養#在宅医療#高齢者医療#リハ栄養#心不全#CKD#安全な栄養管理#医療者向け#さくら在宅クリニック

コメント


© 2021 湘南在宅研究所 All Rights Reserved.

情報通信機器を用いた診療の初診において向精神薬を処方しておりません

bottom of page